獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-201102-9

Re3:おしっこが出ません…
投稿日 2011年1月20日(木)10時49分 投稿者 プロキオン

普通に考えれば、3日も排尿が見られないという現象は異常と言えますので、心配なさるのは無理からぬことです。

通常排尿障害というと、結石、腫瘍、前立腺肥大、脊髄神経の異常、抹消神経の異常による尿道の過度の緊張、あるいは、膀胱の弛緩等が原因として考えられます。
そして、この時に嘔吐、高窒素血症、脱水、体温低下、アシドーシス、頻脈、呼吸速拍等の臨床症状を伴うこととなり、やがて、時間の経過とともに高カリウム血症や代謝性アシドーシスによって斃死に至ります。
まあ、このような一連の症状の記載がなく、血液検査でも異常が認められていないとのことでしたので、おそらく、生成されている尿の量が、尿毒症をひきおこすまでに至っていないのではなかろうかと想像していました。
( ただし、通常であれば、3日排尿がないというのは、相当に危険な時間と言えます。)

排尿にまつわる神経支配というのは、交感神経と副交感神経のバランスによって支配されています。
蓄尿ということになると、交感神経がアドレナリンを介して、膀胱頚部から尿道のα受容体に働きかけて、尿道活約筋を収縮させます。これと同時に膀胱体部のβ受容体にも排尿筋を弛緩させなさいと命令します。この出口を閉めて、貯水池を広げるという両方の作用によって、尿は膀胱に溜められることになります。
一方、排尿ということになると、副交感神経がアセチルコリンを介して、排尿筋に作用し、これを収縮させて膀胱を収縮して排尿を促します。
この一連の流れを理解しますと、排尿困難ということであれば、「支配している神経の麻痺か興奮」「尿道の抵抗性の増大」「膀胱の内圧の低下」等の要因を検討していくことになります。

けれども、臨床症状や血液検査で異常が確認されていないとことになりますと、ただちに「排尿困難」という受け取り方をしてよいのだろうかという疑問がわきます。昨日、私が何をするでもなく入院させたいと申しましたのは、この点であって、当該猫の尿の生成量を確認したかったということになります。端的に申せば膀胱がどの程度緊張しているかであり、量として尿がどのくらいつくられているかです。これによって、原因が身体的なもの(腎臓や心臓を含めて)か、あるいは心の問題かになってくるからです。
人間の医療では、尿失禁や排尿困難というのは、結構相談されるケースが多いので、さまざまに薬が処方されますが、同じ薬剤を使用しても、動物の場合は、人間ほどには効果が感じられないようです。これは、排尿に関わる脊髄の中枢が動物によって多少異なることがある事。そして、言葉をしゃべる事ができない動物の心因性の問題が、かなりの頻度で関わってくるからです。


◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

サポーター:日本ベェツ・グループ 三鷹獣医科グループ&新座獣医科グループ 小宮山典寛様のリンクバナー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。