獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200503-43

ウサギの蟯虫
投稿日 2005年3月16日(水)12時19分 投稿者 プロキオン

ウサギ蟯虫ですか、いやあ〜久しぶりの話題ですね!

ずいぶんと前になりますが、この獣医師広報板の「意見交換」の方に「
ウサギ蟯虫はウサギに障害を引き起こさないので駆虫する必要がない。
また、駆虫薬であるイベルメクチン製剤では、この寄生虫は駆虫できな
いと本に記載されていたが、イベルメクチン製剤で駆虫できてしまった
。これは本の記述がおかしいのだろうか?」という主旨の質問がありま
した。

そこで、その本の執筆者であるS先生に私がそのことを尋ねてみたこと
がありました。
S先生からは、折り返し、丁寧な返事がありましたが、かいつまみます
と、
 執筆にあたっては、自らの知見と症例だけでなく、相当数の海外文献
 を参考とした。
 その結果に基づいての執筆であり、おおよそ妥当な見解であろと考え
 る。
 が、しかし、多くの実体験に基づく症例の中には、これを覆す事実も
 存在するであろうし、また、そのような事実の積み重ねによって、成
 書の記述が改められなくてはならなくなることもあるであろう。
 また、そうあらねばならない。
と、結んでおられました。
今回はうろ覚えの記憶からの抜粋になりましたが、当時は、S先生の文
面のまま披露しましたので、このウサギBBSの常連さんの「にゃおみ
媛」さんが、感激してくださって、S先生宛に感謝メールをされたとい
うようなこともありました。

今回の投稿は、駆虫薬として、何を投薬したかもありますが、S先生の
執筆された本のとおりの経過ですので、大多数のケースの中に入ってし
まうことのように思われます。
したがいまして、異例とも思いませんし、普通と言えば普通のこととも
言えます。
けれども、蟯虫があまり害を為さないと言われても、飼い主さんとすれ
ば、あまり気持ちの良いものでもないでしょうし、やはり、そこは寄生
虫です。大量の寄生がまったく影響しないとも考えられません。
定期的にその寄生している数を減らすことは、してもよいように考えま
すよ。

では、何故、駆虫薬があまり効果がないのか、どのような駆虫薬が良い
ということになりますが、今までの駆虫薬で良いと思います。
なぜ、駆虫薬が効いたり、効かなかったりするのでしょうか?

ここからは、私の想像なのですが、ウサギ蟯虫の生態に答えがあるよう
に考えています。
この寄生虫、ウサギの消化管に遊離して生活している時間が長いのでは
ないかと想像するのです。消化管の粘膜に鈎で食い付いて栄養を摂取す
る時間が短いのではないかということなのです。
ですから、宿主であるウサギが栄養を横取りされる率が低くなって、障
害が現れにくいのではないかということです。当然、ウサギの体を介し
ての注射薬による駆虫剤であれば、それだけ蟯虫には作用しにくくなり
ます。
経口薬であれば、効くかと言えば、ウサギの消化管、とくに巨大な盲腸
がありますから、大量の食事残渣が蟯虫の体に薬剤が接触することを阻
んでしまっているのではないかと想像します。

それと、あと一つ、非常に重要なことなのですが、ウサギには「食糞」
があります。
駆虫薬は、寄生虫の卵には効果がありません。親の寄生虫を駆虫できた
としても、卵は残ります。その排泄された卵を、そのまま口で摂取して
いれば、蟯虫の感染は世代こそ替わりますが、感染そのものは継続した
ままなのです。
# 大抵の駆虫薬の効果は短期間しか持続しませんので、効果が切れた
  後で孵化した卵からであれば、寄生は継続します。

ということなので、ウサギから蟯虫を落とそうとするのなら、投薬方法
と投薬の間隔を検討しなくてはなりません。
たまたま、1回の投薬でうまくいってしまうこともあれば、何回投薬を
繰り返しても、思うに任せないということもあるのです。

その当時のウサギBBSのお世話係りさんは、「かおりんご」さんと「
くまこ」さんでした。
現在のお世話係りさんであるチーママさんも、S先生の執筆された本を
所蔵されていたと思いますので、逆にチーママさんが、今回のなかなか
駆虫し切れないという内容をお聞きになれば、「普通にあることであっ
て、異例なことではない」というように受け取られるかもしれませんね

とどのつまりは、ウサギとウサギ蟯虫の組み合わせの妙とでも言えるの
でしょうか…。

S先生が願ったのは、もっと簡単に、もっと確実にウサギ蟯虫の駆虫が
できるようになって、先生が本の記述を訂正しなくてはならなくなる日
がくることです。執筆者、自らが「そうあらねばならない」と願ってい
るです。
多くの学ぶべき点をもった尊敬できる先生です。にゃおみ媛さんだけで
なく、私自身も感激したことを憶えています。




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