獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-200403-90

reM&I さん、少しく誤解しておられます
投稿日 2004年2月20日(金)21時14分 投稿者 はたの


 エンリッチメントはQOL向上のための1手段であり、高いQOLは(それこそ繁殖のように)寿命とのトレードオフとなる「こと」もありますから、その意味では、エンリッチメントも寿命を短くする効果があります。

 が、ここで、飼育者の考え方によって幅があるのは、どんなエンリッチメントをどの程度使うか? であり、仮にエンリッチメントという言葉を知らない飼育者の場合でも、この模索をしているのには違いはありません。
 種、個体の状態による安全温度範囲の中でさらに「どの程度の安全マージンを見るか」が異なってくるわけで、そのマージンを極限まで大きくとると、エネルギー収支が最も有利な温度帯で、ということになります。
 しかしそうすると、ストレスがないことがストレス、などといった別のリスク要因が発生して、寿命にも悪影響が及びます。
 単純に原産地に近づけるというわけではないのですよ。
 QOLであっても寿命であっても、「エネルギー収支最善がトータル最善ではない」ということなんです。
 乾布摩擦とか裸足保育とか、得られる利得の割にリスクが高いと思う向きもありましょうし、妥当と思う向きもありましょう。その意味では、何が正しいとはいえません。
 が、子供を一生、定温定湿環境下で育てようとはしませんね。
 どの幅か? は考え次第ですが、幅がないのはうまくないのです。
 −5〜32、3、というのは、安全圏込みの参考値です(致死的実見はしていませんが、限界、ということなら、−15〜40度ぐらいと推測しています)。その中から、好きな幅を選べばいいのです。
 長生きを優先するのでも、時には熱的平衡を逸脱する温度に晒すほうが、おそらくは得だろう、ということです。ときどきつついてやらないとホメオスタシスがボケますから、いってみればどんどん虚弱になります。
 言い換えると、最適飼育温度がある、という考え方が問題である、といっています。「ある温度」ではなくて、一日を、年間を、そして一生を通して、どの幅の中でどう変化させていこうか? なわけですよ。
 その結果としてある狭い幅に落ち着くこともありますが(たとえば実験に使うとかなら)、最初っから決めてかかるのはかえってマイナスである、ということなのです。

 ペットと動物園とでは大目的は異なりますが、飼育プランは必ずしも違うとは限りません。一概に別物とは考えられません。
 また、室外/内のデータのお取り扱いにもご注意を。温度以外のバイアスを排除しないと無意味です。

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