獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-200410-58

re:文鳥の傾頭症
投稿日 2004年10月20日(水)18時16分 投稿者 プロキオン

>きくいちさん

どうも どなたからもレスがなく掲示板が停まってしまったようなので、
私から。

まず、第一に診察の必要があると私は考えます。それも小鳥の診療に長け
ている病院でということになります。
したがいまして、当然ながら長距離の移動が必要になると思います。きく
いちさんの御考えとは異なりますが、原因の究明とそこから先の治療の検
討には必要なことと考えます。

「傾頭症」とありますが、これは首が傾いてしまう、あるいは頭部を正し
い本来の位置に保つ事ができない状態を言っておられますよね。つまり、
「斜頚」と用語で理解してよろしいのですよね。

斜頚というのは、鳥類・哺乳類を通して神経症状の1つとして認識されて
おり、感染症、中毒、栄養障害、腫瘍等が原因であることが多いようです。
で、感染症については、鳥類では、比較的多くウイルス性疾患に附随して
見られることがありまし、また、原因ウイルスは複数存在し、広く分布し
ています。

中毒や栄養障害ということであれば、これはまずほとんどが餌に由来して
生じますので、特別に変わったことがない限り、可能性は低いように思い
ます。

腫瘍については、私は鳥類の脳腫瘍に遭遇したことはありません。
脳梗塞についても同様です。
これらのものについては、症状が進行性であって、かつ麻痺という形であ
らわれるように考えています。

鳥類に関しては、症状が斜頚であって、その他の一般状態が比較的良好に
維持されているのであれば、私は「耳」を疑います。
鳥類は、「飛翔」のために翼だけでなく、特殊な呼吸器を有しており、そ
のために省略されたり簡素化された器官をもっています。簡単に言ってし
まえば、呼吸器系の感染症に罹患しやくすく、鼓膜より奥の内耳に炎症を
波及させやすく、体の平衡感覚に異常をきたすことがあります。
耳や副鼻腔内に卵焼き状あるいはチーズ状の炎症滲出物を貯留させている
個体は見る事があります。
これと同じ原因で眼瞼に炎症滲出物が溜まって腫れていたり、涙が風船状
に貯留してしまったりというケースもあります。

鳥は、呼吸器系において病原体の侵入を許しやすく、また、それによって
引き起こされる炎症を近接器官に波及させてしまいやすい傾向があるよう
に思えます。
疾病においては、まず一般的に流行しているもの、比較的多く見られる疾
病から考えていくのが良いのではないでしょうか?

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