獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-200503-62

2題
投稿日 2005年3月2日(水)01時36分 投稿者 はたの

>リエさん 「3週間で10コ」ならば、元が健康体ならさほど心配は要りません。まあ2腹ぶんで、1回目の繁殖に失敗して産みなおす、という範囲内ですから。そのペースがずっと続くとなれば別ですが。
 ほんの少しだけ誤解があるようですが、セキセイの人工孵化、0日齢からの人工育雛も、その気になれば不可能ではないと思いますよ。キンカチョウやジュウシマツで出来ているので、より大きいインコで不可能ってこともないでしょう。コンパニオンバードに対して行うのは割が合わない、というだけで。無菌マウスを作るのに帝王切開胎児からの人工哺乳育成は技術的には可能だし、むろん生まれた後ならマウスでもハムでも赤子を育てるのも可能だけれど、普通はペットに対しては行わない、というのと同じで。

換羽。
中には特殊な事情のある鳥もいますが、大原則は、発情が収まることが引き金になって換羽、です。雌ですと産み終わり、抱き始めると。だから、2腹、3腹取りたいときには、換羽が始まらないよう祈るわけです。ペア型の種では雄はそれにやや遅れるぐらい。幾分、発情との関係がルーズです。
 ニワトリなんかだと、暗条件+断餌+断水で、産卵中止と強制換羽ができたりとか。
 また、何年かに一回しか発情しない大きな鳥では、1セットが入れ替わるのに2年ぐらいかかったりします。
 
 羽軸付け根に加わる応力も影響しているようです。途中で羽を切ると本来より早く換羽することもあります。適応的ですね。
 若い鳥でややイレギュラーに抜けやすく、そのかわりまたすぐ生えてきやすいなんてこともあります。

 直接的には、甲状腺ホルモンが引き金になります。甲状腺ホルモン製剤やウシ乾燥甲状腺粉末を与えると換羽が生じます。ただ、哺乳類で普通の量より2ケタ多かったりして使うのに度胸が要りますし、丸裸に抜けて、今度は生えてくる羽を作るのが間に合わずしょぼくなってしまう、なんてこともあります。
 調べた限りでは、鳥のいろんな種について換羽ホルモン動態の詳細が書かれたまとまった日本語の文献はない(欧文含めて個別に論文探せばあるんでしょうけど)ようです。一冊ぐらい概説書があってもいいのになあ・・・
 発情関係は、ある種のホルモン値が下がることが甲状腺ホルモン濃度上昇のきっかけとなる、というお話しです。

 また、これも種によりますが、小さい綿羽は、少し大目に生えて換羽終了時に余分が抜けたり、逆に、体羽の換羽開始前にぽつぽつ抜けたりもします。細かくみていくと結構面白そうですよ。

 で、換羽が正常であれば、背中の毛も抜け替わります。これまた種類によりけりですが、日に焼けて色が褪せやすい場合だと、古い羽と新しい羽とが入り乱れているのが判ることもあります。インコでも全く抜けないということはないはずです。
 むろん、加齢その他でズレてくることもあります。

 抜ける順番があるのはそのとおりです。少し詳しい図鑑などですと、風切と尾羽については記載されていることもあります。分類の根拠のひとつとして使われることもあります。一枚見てもどの羽だかなかなか判りませんが、1セットぶんを取っておいて、できれば死体と照合しながら厚紙などに順番通りに貼った見本を作っておけば、ある一枚がどこの羽だか判るでしょう。
 ちなみに、絶対ではありませんが、同じ部位に相当する羽同士の場合、左から先に抜ける個体が多いかもしれません。

 羽は基本的にたんぱく質なので、植物食の種ではその時期に不足しがちになります。寒そうに見えるのは、本当に寒いというより、ある種のだるさのようなものでしょう。抱卵と関連して、体調より以上に不活発になる傾向があることもあります。健康な親鳥で運動充分、エサのカロリーも充分、風避けがあれば、真冬日続きでもセキセイインコは元気ですから。
 かといって消化できるようになっていないので、むやみに動物性たんぱくを与えてもいかんのですが。
 動物食でも小さいと(原則的に、鳥は小型であるほど、体重に占める羽毛の割合が高いので。体温を保つために)、無理がかかります。伝統的な和鳥飼育に際して、トヤの時は深浴びさせない、はこうした理由によります。和鳥飼育の是非は議論があるところですが、いわゆる飼い鳥の飼育に際しても参考になるノウハウも多いので、古書店や図書館などで飼育書を見かけたらご一読を。

 セキセイなどの小型インコの場合、換羽は本来、年1回のはずです。1シーズンに複数回繁殖する場合でも。
 ズレて来るのは、一年中長日条件であること、温度変化に乏しいこと(セキセイの生息地はそれなりに厳しい気候なのです)、適切なストレスが不足していること、などの複合的な要因が大きいケースが多いように思われます。屋外禽舎だとそうはズレてきませんし。
 とはいうものの、是正には、触れ合う時間の短縮などのコストもかかるわけで、どの程度おかしくなったら対処するかは、おかしくなり加減と飼い主の考え方次第でしょうね。
 なお、鳥の外分泌系はあまり活発とも思えませんので、直接的なドミトリー効果というより、同環境であるがゆえに揃ってきた、というほうが可能性が高いように思います。
 
 ペットの鳥だといろいろと心理的に抵抗がおありでしょうが、もし機会があれば、食用のニワトリの羽むしりや、落ちている野鳥の死体を観察するなどなさると、興味深い発見がありましょう。飛んでいるカラスなど観察するのも面白いものです。

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