獣医師広報板ニュース

爬虫類・両棲類・カメ掲示板過去発言No.2000-200009-30

補足 長文失敬
投稿日 2000年9月18日(月)23時53分 はたの

ムクムク先生の舵取りを拳拳服膺しつつ、若干の補足をいたします。

私は、飼育者は、自然環境や飼育されている動物から見れば強者だと認識しています。本人が自覚しているか否かに関わらず。自然環境や飼育動物に対しては相対的に強者である、と。自然環境は弱者であるうえに公共のものなので優先順位1、飼育している動物がそれに次ぎ、最強である飼育者は3番であると。そのため、以下のように考えています。

1 爬虫類とくにカメとくにミドリガメは帰化しやすいことが実際に確かめられているので、その飼育者には、他の動物の飼育者以上に、自然環境に対して厳しい配慮が必要である。自然環境や飼育動物に戴する相対的強者たる飼育者には、どんなに落ち込んでいようとも、自然環境や飼育動物に対応する責任がある。
2 どの動物でも、管理下で死を看取るのが飼育者の責任である。逸出を許したか故意に放棄したかは結果において等しい。相対的強者は結果責任を負うであろう。
3 獣医師広報版には専用のメモリアルルームがあり、また他にもペットロス専用の掲示板はある。一時的に責任がとれない、情報交換に耐えられない非常の状態にあるならば、爬虫類BBSではなくそちらが適していたのではないか。
4 爬虫類BBSであるからには、落ち込んでいても、あるいは、落ち込んでいるからこそ気持ちを整理するために、単なる慰めではなく、冷厳なものも含めた情報交換を望んでおられると拝察した(私だったら、柵の不備を点検して反省したり、獣医師の剖検に立ち会うのは、きっちり反省し責任を痛感できるミス直後がよく、時間がたってからは嫌ですね。落ち込んでいる自分は後回しにします。逆に言うと、「あの時にああいうミスをしなければ」といった具体的な後悔のネタが見つかれば、無限ループのような虚しい落ち込みから這い上がって、次の機会に生かすための前向きの気持ちになれますから)。
5 飼育者同士は、持っている情報の範囲に違いはあれど、自然環境や飼育動物に戴する相対的強者として対等であると考える。ことに個人情報を知り得ないネツト上では。
6 対等の相手に対して、過度に踏み込んだ気遣いをするのは侮辱であり、無礼であろう(小学生に赤ちゃん言葉で話し掛けるように)。「メモリアルルームではなく爬虫類BBSに書き込んだ」という対等の相手が行った選択や判断を軽視し、目下扱いするすることになるから、言葉尻だからとて書き込みの一部を無視したり、時を選んだりするのも、かえって無礼であろう。
7 実際的にも、数週間後また数ケ月後に延ばしたら、レスが伝わるか定かではない。
8 そうした時点で、発言者本人が受け取ることが確かでない状況下で批判するのは(新規投稿としてでさえ)、無礼であろう。面と向かって言えないことをその人の背中で言うようなものだから。
9 仮に昔の私が、「外国産や他所から取ってきたカメを放すのは、やさしい気持ちによるものではあってもいけないことである」という情報に接していれば、ミスを減ずることができた。その時にはヘコむとしても、長い目でみれば、現在も感じている後悔の総量を減らすこともできた。上から見下ろすのではなく対等に、だが、相手が持っていないらしい情報を自分が持っていると感じたら、その情報を提供しないのは不親切だろう。

蒸し返すのは気が進みませんが、ご家族からの疑問もあるので、一番最初のCHIAKI様の書き込み中私が問題視したところを引用します。
>せめてどこかの親切な方に拾われて、水や餌のある所に連れていってもらっているといいな・・・
「川や池に連れていって放して欲しい」と「引き取って水槽やタライで飼ってほしい」の両方に読めます。「水や餌のある所」「(「連れ帰る」でなく)連れていく」の部分が紛らわしいのです。「誰か親切な人に拾ってもらえるといいね」という、ポピュラーな言い回しもあるのにあえて使用されなかったのですから、なおさらでしょう。
「せめてどこかの親切な方に拾われて、連れ帰って飼ってもらえるといいな」等としておけば、紛れようはありませんでした。御自身で発見されるにせよご近所のかたが発見してくださるにせよ、お手元に戻るのが最善であること、また、誰かの家で飼育が継続されるのが次善であること、異論ありません。問題は、帰化と死亡のどちらがまだマシか、という点にあります。
 
CHIAKI様が発熱されたこと、お見舞いは申し上げますが、謝罪はいたしません。私は動物好きですし、動物好きな人も好きです。イジワルなどいたしません。ですが、どちらかといえば動物好きの人よりも動物を優先いたします。
動物好きの人間なら動物に対する愛や「やさしい気持ち」を持っていて、ミスしたらひどく落ち込むのも当たり前です。夢にも見るし幻視幻聴は起こるし、抗うつ剤を処方してもらうこともあるでしょう。が、落ち込みは本人が直面して解決するしかないので、へんに慰めあいっこしてもしかたないでしょう。
誤解なきよう私自身も含めてと付記しますが、動物好きは相対的に強者であるにも関わらずやさしい方向へ流れがちだからこそ、厳しさを自覚していたいと思います。
「死」という言葉にショックを受けておられる由。無礼は避けたいので率直に申し上げますが、やはり厳しさなり想像力なり覚悟なりが足りなかったと感じます。生別にせよ死別にせよ動物と付き合えば別れは不可避だということ、飼いはじめる前からわかっていたはずです。それを覚悟して飼いはじめたはずです。帰化の問題は情報不足によることがあるので指摘申し上げたわけですが、いずれ別れがくるのは情報の多寡によらず自明なのですから。学生さんでいらっしゃるとのことですが、仮にお若くて未熟なかただとしても、自然環境や動物にとっては強者であるのだから、命を扱うときに要求される覚悟はオマケしてもらえない、のではないでしょうか。
逆説的に言うなら、別れがあるから一緒の日々がいとおしいのでしょう。何をやっても永遠に逃げない、死なない動物がいたとして、共にすごす一日一日の虚しさを想像すれば、別れのありがたさは明確でしょう。花は散るから造花より美しく、夏休みは秋には終わるから輝かしいのですから。
動物好きの人も好きですから、CHIAKI様には悪意を持つどころか、応援したいと思います。発熱、欠席、お見舞いは申し上げますが、別の見方をすれば大いに結構、歓迎してもいいぐらいです。CHIAKI様の動物に向けられた情熱の大きいことが確かめられたわけですから。だからこそ、その感情のエネルギーをうまく制御して前向きに使いましょうよ、相対的強者としての責任や厳しさや別れの悲しみも一切合切ひっくるめて動物と付き合いましょうよ、責任や厳しさや別れの悲しみを上回る喜びを得られるのだから、と申し上げたく思います。

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