獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-199907-40

アライグマとタヌキについて
投稿日 1999年6月4日(金)19時10分 アサカワ

さて、「チーちゃんのママ」のご質問、野生化ではタヌキとアライグマはどちらが優位なのかについて。なお、私は寄生虫学を研究領域としていますので、この掲示板をご覧の哺乳類生態学ご専門の方、フォロー願えましたら幸いです。
 アライグマとタヌキは、ともに雑食性(小哺乳類、鳥、昆虫、果実など)で、餌資源が重複します。その点で、在来種であるタヌキが生息していく上での利用可能な餌資源が横取りされていることが予想されます。また、アライグマは木登りがとても得意なので、樹上の野鳥の巣から、卵を取ることができるなど、タヌキではあまり見られない性質があり、これはアライグマの生育上有利です。
 一方、アライグマの存在は直接関係しませんが、特にタヌキでは重度の疥癬が認められものが多く、またイヌから感染するジステンパーウイルスでもやられやすいなどの不利な点があります。これらの疾病はタヌキの生育上、不利、ライバルのアライグマにとっては有利となりましょう。
 双方とも年1回春先に3−5 6頭子供を産むようですので、増え方自体にはそれほどの差異はないような気がしますが、このような要員が絡み合えば、アライグマが優位な気がしますが、実際に両者の関係を調査研究されるのはこれからで、北海道大学文学部行動学の先生が調査されるとのことです。
 なお、われわれはアライグマの寄生虫を調べた結果、札幌市羊カ丘のアライグマからタヌキカイチュウが見つかりました。この蛔虫は、卵が経口的に取り込まれ感染する生活史が単純なタイプの寄生虫です。おそらく、アライグマがタヌキのため糞場でこの寄生虫に感染したのでしょう。いずれにせよ、この寄生虫の存在は、羊が丘のアライグマは蛔虫の感染が起きる程度に、タヌキとの行動範囲が重複していたことが示唆されました。もちろん、このようなニアミスは札幌だけに留まるとは考えられません。
 ご質問に的確に答えられたとは、到底思えませんが、ここらで失礼します。会議がありますので。

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