獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-200002-39

私がタヌキにバカされたのは
投稿日 2000年2月25日(金)15時17分 プロキオン

リアルタイム掲示板より引っ越しです。

そう、あれは私が大学生の時です。場所は都下の高尾山。
当時ムササビに興味を持っていた私は高尾山の薬王院周囲
で見ることができるのを知っていたので、日没を待って山
頂を目指しました。
ケーブルカーはすでに運行終了していたので、人気のない
谷川の散策路を登って行きました。こちらの方が近道だと
考えていたからです。

途中、ふと気が付くと誰かが私の後をついてくる気配がす
るのです。私が立ち止まると、相手も立ち止まります。
これが2〜3回繰り返されました。1度は相手の足音まで
聞こえました。足音が聞こえるくらいですから、見通しの
悪い夜の山道でも、すぐそばのはずです。
でも、振り返ってみても 誰もいません。それなのにすぐ
近くで相手の息づかいが感じられるのです。
本当にいや〜な気分でした。また、前を向いて歩き始める
と相手もついてきます。
私も若かったというか、相手がその気なら、こっちもこの
つもりと考えて、少し足早に歩いて、曲がり角を利用して
潅木の間に音をたてないようにすっと身を隠しました。
息を殺して気配を窺っていると、相手は気づかず近づいて
きます。チャンスとばかり相手の前に身を踊らせて飛び出
すと、やっぱり誰もいません。
ここで一瞬固まってしまったのですが、恐怖心から元来た
道を走り出しました(何でこんなことしたのかよく分から
ないのですが)。
ところが、本当に驚いたのはここからで、2メーターくら
い先の道沿いの陰から、誰かがいきなり走り出したのです。
私は夢中になって彼の後を追いかけたのですが、どうして
も追いつけませんでした。気が付いたら、獣道に迷い込ん
でいました。

幸い星の出ている夜だったのと、一切明かりを使用せずに
歩いていたので、目が暗さについていけていました。よう
やく本来の道にもどれるというところで、遠く後ろの方で
コーンコーンという斧で木をたたく音が聞こえました。
いわゆるタヌキの腹鼓です。私はようやくタヌキにバカさ
れたんだと悟りました。

人間の目線の高さでは夜道で地面近くにいるタヌキを視認
できなかったのですね。
タヌキもただ私の後を付いて来ただけなのに、途中から逆
襲されて驚いたでしょうね。私が恐怖心を感じたのは相手
が人間であり、悪意があると判断してしまったためです。
本当に怖いのは動物より人間ということですね。

山頂の薬王院に着いて社務所の人と出会いましたが、この
方も1人で明かりもつけずに歩いていたので、会話は交わ
しましたが、決して背中を見せないように注意しましたよ。
その後、何回か夜の高尾山に通いましたが、それ以降タヌ
キには会えませんでした。
「タヌキも避ける男」というのは、キャッチコピーにはな
らないですよね?

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