獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-200205-38

京子さんへ
投稿日 2002年5月17日(金)12時28分 プロキオン

>京子さん
私の書き込みに対して興味をもっていただいたことにまず感謝いたします。

給餌において鶏の頭も危ないのかという御質問ですが、原因ウイルスが神経親
和性を有していますので、やはり望ましいことでないと考えます。
ただし、「鶏頭の水煮」の缶詰めのように熱処理がかかっていれば、これは心
配する必要はないと思います。

獣肉からの他の疾病の感染の危険性については、これもないとは言えません。
しかし、あきらかになっている範囲であれば、マレック氏病の感染の可能性よ
りは危険度は低いと考えてい良いと思います。牛豚においては、鳥類への感染
疾病は比較的少ないので、食肉検査を経た肉であれば、とりあえず危険視しな
くてもと考えています。

塵埃やパウダーからの感染についてですが、屋外であれば感染が成立する機会
は鶏肉程は高くないはずなのです。
多数の鳥が同じところにいるとか、かなり濃密な接触が必要だと考えます。例
えていえば、集団の塒を有する鳥とか親鳥とひな鳥の間とかです。自然界の食
物連鎖を考えると、鶏舎周辺にやってきたスズメや鳩が猛禽に捕食されて、さ
らに猛禽の親から子へという具合です。
ですから、ブロイラーの無窓鶏舎の内部のような環境でない限り、汚染が一気
に広がるとは私も考えていませんでした。
ただ、今回の報告のように鳥の種類が「マガン」であったと言われると、感染
が私が考えているよりも容易に成立するのか、あるいはウイルスの汚染がある
程度の進行しているかだと思うのです。
浅川先生は、私が読んだ記述のなかで、97年にも石川県で同様の病変をもっ
たマガンがいたことに触れておられます。感染した鳥の摘発を意図した調査で
発見されたわけではないので、汚染の広がりについて詳細は分かりません。
また、其れ故、不安がつのるのです。
植物食の鳥といえども、このウイルスに対しては、感受性があります。元来鶏
の疾病ですし、猛禽の方こそ「とばっちり」という感覚ではないでしょうか?

「野生鳥獣救護ハンドブック」という本があります。
この本を読んでから、私はできるだけ自分では手をださないようにしています。
助けられる、られないに関わらず、今現在野生の鳥獣に何が起きているかを把握
するためには、中核となる機関に情報とデータを集積するべきだと考えるように
なったからです。通常は各県の鳥獣センターがこれに相当しますが、死亡個体
といえどもここに集めて、データをとり、次のステップとして各県のデータを
全国的に持ち寄る必要があるのです。
個人の篤志家がバラバラにやっていたのでは、全体的なことが判明するまでに
時間がかかりすぎると思うのです。また、野鳥を密猟して飼育する人達に「野
鳥救護による飼育」という言い訳を許さないためにも必要な措置だと考えます。
野生鳥獣の救護に携わってきた方や関心をもつ方は、公的な機関や組織に集い
お互いに連絡をとりあっていくことが必要な時期に来ていると私は考えます。

この点については、以前よりこちらでくり返し述べて来た事のなので、京子さ
んがずっと目を通されてきたのであれば、今さらながらの繰り言になりますが。
なお、こちらのBBSにおける私の意見の御紹介はまことに光栄ではあります
が、その反面、個人的には多くの専門家の目に触れるというのは「恐い」もの
があります。
「何をいまさら」とか「御指摘の点はすでに対応しております」とか言われそ
うにも思いますし、なによりもそれ以前に気恥ずかしい面があります。

私は本や他人から教わったことで成り立っている人間であり、オリジナルなも
のは何一つ持ち合わせていません。風が吹けばどこかへ飛んで行ってしまうよ
うな存在です。ときどき、えらそうな事言っていないで貝になってしまおうか
と考えることがあります。

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