獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-200205-41

こちらこそ、
投稿日 2002年5月18日(土)12時34分 プロキオン

こちらこそ、丁寧な返信感謝しております。

>プロキオン様には申し訳ない言い方になってしまいますが、大々的な
 調査が行なわれたわけではない以上、実際のところどの程度の影響が
 出ているのかは分からないわけですよね? だからあまり危機感を
 持たれないのかもしれませんね。

おっしゃられているとうりだと思います。ただ、先日も申しましたが、以前か
らこの問題を指摘されていた方のおられたわけであり、マレック病の特性と鶏
における汚染状況を知っている人間でありながら、野鳥への感染問題をまった
く考えていなかった自分自身を反省したわけなのです。
その後、獣医師広報版においても注意をうながす機会がなかったわけではない
のですが、ちょっとした行き違いからそのチャンスを失っておりました。今回
酪農学園大学の浅川先生が、日本獣医師会雑誌にマガンにおける感染報告を記
載して下さったので、改めてこの問題に注視している人々の存在に気付き、遅
ればせながら、危険を認識している人間の責任として声にしてみたということ
なのです。

>シロウト考えですが、鶏肉を与え続けた猛禽を使って、感染率など調べられ
 ないのでしょうか?
 また、今回も前回もマガンということですが、そこには何か意味がないので
 しょうか? ガンカモ類が特に罹患しやすいとか?

実験は、敢えて実施する必要はないと考えます。といいますのは、私達が鶏で
実施した感染状況調査では、採血して抗体の有無を調べたのですが、正直な話
で嘘偽りのないところで、全例感染抗体を保有していたのです。
調査する意味が見出せないといったのは、実はそういうことだったのです。そ
して汚染されていない種鶏場を捜すことの方が困難であるというのも うなづ
ける話なのです。

で、ここで重要なのは、「感染している」ということと、「発病している」と
いうことが別のことであるということです。
感染して、ウイルスとその抗体を体内に保有しているだけでは、「健康鶏」と
してなんら問題なく食肉として市場へ流れていきます。
発病して、腫瘍病巣を形成したものは、病巣を廃棄して流通にのるか、複数病
巣で全廃棄されるかです。
この両者は、同一の生産者の同一の出荷ロットに混在して見い出されるのです。
感染していながら、発病する個体と発病しない個体を分ける理由がわからない
のです。コマーシャル雛が相手ですので、遺伝的にはほぼ均一な集団でありな
がら、何がそれを決めているのかがわからないのです。一番知りたい決定的な
原因理由がわからないのです。

感染が一旦成立してしまえば、その個体が発病するしないにかかわらず、次の
感染源になりえます。むしろ、発病した個体はいずれ斃死することになるので、
感染源としての危険は比較的少ないといえます。自らは発病しないで、感染を
広げて行く個体の存在こそが問題を大きくすると考えられるのです。
したがって、私は発病するかしないかよりも、感染を広げないという視点から
この問題を捉えて欲しいと考えております。

野鳥における感染のサイクルの中で、マガンがどのような位置にあるのかは、
私にも想像できません。感染が成立しやすい鳥なのかもわかりません。報告さ
れたばかりであり、まだ症例としても数が少なすぎます。
昨日、申し上げたように発見・知見・情報そしてデータを積み重ねていく必要
があり、今から始まることなのです。

>その感染経路が分かるとよいのですが、難しいのでしょうね。

狂牛病が4例で、国をあげての調査でまだ不明の状態ですので。口蹄疫では結局
感染ルートは特定できませんでしたしね。
さらに、渡り鳥が相手になると国境がありますしね。

こちらの掲示板でも「善意による誘拐」は、しばしば取り上げられています。
基本的には「No」なのですが、そればかりで良いとは私も考えておりません。
私が「先達」を名乗って良いか否かは別として、先達には後継者を育てる役目
もあると思うのです。個人の1代かぎりのボランティアで全ての問題が解決で
きるわけもなく、後に続く人間に託す場面も出てくるはずなのです。
この人、この子には無理だろうと判断していても、敢えてまかせることが必要
なこともあるはずなのです。
昨日、私が「手を出さないようにしている」といったのには、悲しい涙や悔し
い涙が救護を志す人を育ててくれるのではないかと都合良く考えているのと、
私自身が自分がやらなくてはならないことは、「人間によって野生や帰るべき
自然を取り上げられてしまった動物達」なのではないかと考えるようになって
きたからです。
アパート住まいの身で、お金の当てもないのに、そんなこと公言して良いのか
とも笑われそうのなのですが。
ですから、決して救護に携わっている方達をバカにしているのでもありません
し、軽く見ているわけでもありません。その活動を否定しているのでもありま
せん。
むしろ、京子さんに私の意見を聞いていただけたことはありがたいことであり、
感謝しております。

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