獣医師広報板ニュース

動物の愛護掲示板過去発言No.6000-200803-7

Re:動物実験
投稿日 2008年3月22日(土)11時47分 投稿者 プロキオン

お書きになられている「『人間は嫌なことがあって飲酒すると忘れられるか』みたいな研究をラットを使ってしたみたいでハア〜?と思いました。」というような実験は、たしかに無意味な実験のように思います。人間とラットでは営まれている社会生活にあまりにひらきがありますぎますし、大脳皮質における「心」にも相違がありすぎます。

けれども、動物実験の全てを否定することはできません。どこまでが容認されるか、どのように苦痛をあたえないですむかという一定のガイドラインを設けることが求められています。
現在の人間の暮らしている環境はすべて安全性をもとめる基準の上に成立しています。これは何も医者にかかったことがないから動物実験の恩恵を受けていないと豪語できることではなく、衣食住のすべてに安全性が求められているからです。衣服にも住宅建材にもそれはあります。飲用とされる水であれば、これにも必ず基準があります。裸で山の祠に暮らして川の水を飲む生活をしている人間であっても、いざ何を食していくかという問題につきあたります。農薬を使用しない家庭菜園で食料をまかなうとおっしゃられている方でも、その背後にある薬剤や堆肥の影響は承知していません。堆肥の元となる家畜の時点で薬剤のお世話になっているのです。
今の人間社会ではたった1人の力で生きていくことはかないません。必ず、どこかで他の誰かとつながっています。動物実験とは医療の世界に限られた話ではなく、日常生活に浸透しつくしていて、私達がその恩恵を感じることなくいるのにすぎません。私達は多くの動物の犠牲のうえに成立している社会の住人なのです。それも両手が血で汚れているというレベルではなく肩までどっぷりとつかっているのです。
私達に動物実験を否定する権利はありません、実験で犠牲になる数を少しでも減らすように、少しでも苦痛を与えないように、心のあるガイドラインが設定されますようにという話につきるようです。

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