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ぐるりのこと。      


2008年 日本


<監督>橋口亮輔
<キャスト>木村多江 , リリー・フランキー , 倍賞美津子 , 柄本明 , 木村祐一 , 加瀬亮 , 光石研 , 田辺誠一 , 片岡礼子 , 新井浩文

<ストーリー>
1993年、出版社につとめる翔子(木村多江)と、靴の修繕のアルバイトをしているカナオ(リリー・フランキー)は、翔子の妊娠が分かり、結婚した。その後、カナオは、法廷画家の仕事を得て、生活は安定するが、夫婦の子どもは生まれてまもなく、亡くなってしまう。そのことから、翔子の気持ちが揺らいでゆく・・・。

<感想>
実は、映画を見るまでは、”ぐるり”という名前の子どもの話かと思ってました(^^;。
実は、ぐるりとは、”周りの”・・・っていう意味のだったようです(^^;。
翔子とカナオ夫婦の周りで起こったこと、そして、その間、世間で起こったこと・・・。
そんな事を描いた作品です。

何事もきっちりしないとすまない性分の翔子。
そんな翔子の隣で、同じように、きっちりさせられようとするカナオ。
私なんか、ぼーーっとしている人間なので、なんでそんなにきっちりしなくちゃいけないんだろうと、
カナオが気の毒でしたが、性分なんだから、しょうがないんでしょうねぇ。
でも、生きていく上で、きっちりとか、ちゃんととか、出来ないことも、数多くあるわけで、
そんな事が周りで起こり始めると、翔子のような性分の人は、ポキンと、心が折れてしまう時もあるのかも。

翔子が、じわじわと落ち込んでゆく様子が、痛々しかったです。
でも、周りの人間には、ただそばにいるだけで、どうしようもないことのようでした。

そんな翔子を演じたのは、この映画で、日本アカデミー賞や、ブルーリボン賞を獲得した、木村多江。
彼女は、この映画で、いろいろな顔を見せてくれました。
最初は、きっちりしていて、気の強い女性。
そして、気を病んで、ボロボロになり、
また、ラストでは、ゆったりと心の余裕を取り戻した表情。

この監督は、長回しが好きなようで、
ワンテイクが、とても長く、緊迫したシーンなど、俳優さんたち、大変だっただろうなぁと思いました。
でも、その分、感情の高まりが、そのままストレートに伝わってきました。

翔子が「ちゃんとしたいのに、ちゃんと出来ない」と、泣きじゃくるシーンなど、
木村多江と、リリー・フランキーが、本物の夫婦のようで、すばらしかったです。

そう、リリー・フランキー!
彼の演技が、これまた自然で、ひょうひょうとしていて、優しくて、暖かくて、とってもいいんですね〜〜。
いやぁ、あまりのうまさに、びっくりしてしまいました。

もう一つ、ツボが割れるシーンも、長回しなのですが、これがまた、絶妙なタイミングで、割れるんですね〜。
このシーン、あまりにも絶妙なので、何回も見てしまいました(^^)。

カナオの仕事が法廷画家ということで、当時の社会的事件の裁判の様子も描かれていました。
これは、いろいろな俳優さんが、いろんな役で出てきて、面白かったです。
事件の記憶も、まだ鮮明に残ってましたし。
でも、この部分、必要だったのでしょうか??
私は、ここをすっぱりカットしても良かったのではと思いました。
まあ、それでは、”ぐるりのこと”にならないのかな。(2011,04,18)



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