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「子盗(こと)り」   
海月ルイ 02.09.24



サントリーミステリー大賞受賞作
望んでも産めない女。子供を奪われた女。
母親になれないのに執着する女。
三人の女達の情念が交錯する傑作サスペンス(帯より)


それぞれが悲しい女達の話です。

でも、なんと言っても、最初に出てくる美津子の辛さが一番です。
子供に恵まれるか、恵まれないかは、神のみぞ知る。
こんな時の神様は、いったいどこを向いているのでしょうか。

ちょっと前には、ディンクスという言葉がはやり、子供を持たない夫婦がクローズアップされました。
それはそれで、いいかなと私は思うのですが、日本の少子化には、問題ありか・・・?。
このような、夫婦二人だけのこととすませられる人たちは幸いです。
美津子のような旧家で、跡継ぎが待ち望まれている場合、夫婦の問題だけではなくなり、親や、親戚まで乗り出してくるんだから、大変です。
追いつめられた美津子の起こした行動は、許されることではないけれど、美津子が出来るのは、それしかなかったかもしれない。そう思うと、かわいそうです。
そんな美津子を中心として、子供を取られた潤子、子供を育てられないひとみ、それぞれが絡んでくるこの小説は、読んでいて、辛すぎて、息苦しくなりました。

いつも、平行して何冊かを同時に読むのですが、偶然にも、子供のいない母親の本が二つ重なりました。同じ性を持つ者として、この手の小説はやりきれないです。