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「石のハート」   
レナーテ・デレスタイン   03.01.17

    

お母さん、私は生きていいの?
なんの屈託もない幸せな家庭をおそう悲劇。
たった一人取り残された十二歳のエレンは、三十年近い時を経て、家族の謎を解明していく。
オランダが生んだ人気女性作家、レナーテ・ドレスタインが描く
家族、母性なるものが生む哀切に胸が締め付けられる・・・・・。
(帯・表紙折り返しより)



12歳のエレンは、両親と3人の兄弟に囲まれて、ごく普通の子供時代を過ごしていた。しかし、母親が5人目の子供を出産してから、しばしば異常な言動をとるようになり、悲劇が起こった・・・。30年経ち、病理解剖医となったエレンは、過去の出来事を静かに顧みる・・・。

過去と現在が交錯する上、彼女に話しかけてくる姉兄の存在があり、読み始めは、かなり話が分かりづらかったです。でも、その文体に慣れてくると、姉兄達の存在が、どこか懐かしく思えてきます。
そうはいっても、エレンが巻き込まれた悲しい事件と、彼女の心に残ってしまった心の傷を背負った半生には、胸が詰まります。
何もなかったら、全く違う人生を送れたでしょうに・・・。

親が精神的に不安定な子供ほど可哀想なものはありませんね。唯一頼れる大人が異常な行動を起こすとしたら、いったい子供は、どうしたらいいのでしょう。
未熟ながら、なんとか親を助けたいと思う気持ちがいじらしかったです。

オランダで、実際に起きた事件に関心を持った著者が書き上げた、再生の物語です。