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「聖家族のランチ」   
林真理子   03.04.02


     エリート銀行員の夫に美貌の料理研究家の妻、今どきの長女と出来の良い長男。
誰もが羨むこの家族に何が起こったのか?
ある事件をきっかけに結束し始めた家族だったが…。
衝撃の結末が待ち受ける長編小説。
(「MARC」データベースより)



なんとまあ。途中から、筆のタッチが、がらっと変わってしまう小説でした。

前半は、普通の小説です。
夫は、大手銀行の部長。妻は、売り出し中の料理研究家。娘は、大学に進学しないで母親のアシスタント。息子は、有名進学高校に合格したばかり。この4人家族の織りなす様々な問題をホームドラマ風に描いています。

破綻をウワサされている夫の銀行のことには無関心な妻ユリ子は、彼女の料理本を出版している出版社の編集長と不倫中で、美しく、時代にマッチした、彼女のステイタスが主婦の人気になり、TVや、雑誌では、引っ張りだこの忙しさになっている。そんな彼女の舞台裏が、おもしろかったです。
そして、彼女自慢の秀才の息子は、家族が知らないうちに、あろう事か、新興宗教にのめり込んでしまっているのです。
一つの家族にもかかわらず、それぞれの事情をお互いに知ることもなく、一つ屋根の下で暮らしている彼ら。そんな彼らのことが、とてもテンポよく書かれていました。

しかし、ある事件をきっかけに、突如、狂気の世界に足を踏み入れるのです。
衝撃的な事件には、違いありませんが、それまで普通の社会生活をしている人の決断とは、とうてい考えられません。妻のユリ子だけならばともかく、夫が、あっさりとそれを受け入れるのは、納得できませんでした。それ以降は、思わず吹き出したくなるような展開で、これは、もう、まさに狂気の嵐です(^^;。
とても、食べ物をつまみながらでは読めませんでした(^^;。

前半の一家の姿がとてもうまく描かれていただけに、この後半は、ちょっと残念でした。