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「グラスホッパー」
伊坂幸太郎  



「人は誰でも、死にたがっている」
「世界は絶望と悲惨に塗れている」
でも僕は戦おうと思うんだ。
君との記憶だけを武器にしてーーー(帯より)



今回の伊坂さんのお話は、ちょっと変わった世界の人たちを描いています。言ってみれば、裏社会の人たち。殺し屋さんです。
主たる登場人物は、3人の殺し屋「鯨」「蝉」「押し屋」と、そして妻を殺された「鈴木」です。
それぞれ違う殺し方をする3人ですが、なんと言っても存在感が大きいのが、「鯨」でした。
彼の殺しは、「自殺」。
自分では死ぬ理由がなく、また死にたくもないような人間を、様々な理由で死に追いやってしまう彼。
普通に生きている人でも、心の奥底には、自分は本当は死にたいんだという願望があって、それを見事に引き出してしまう、そんな才能、存在感のある男「鯨」。彼もまた、その才能ゆえに、自分が自殺させた人たちの亡霊と共に生きていかなければならない運命を背負ってしまう。
そんな彼は、生きながらすでに冥界の中に足を踏み出しているかのようですねぇ。
こんな重さは、今までの伊坂さんの本の中には、あまりなかったように思います。
そんな重苦しさを「鈴木」が救ってくれていました。殺し屋たちに命をねらわれてしまう彼。少々浮世離れした彼の楽観性に、ほっと一息という感じでしょうか。

題名のグラスホッパーとは、バッタです。バッタは、過密すると性格が変わって、殺し合いをする・・・これは、先日見た映画「エクソシスト2」のテーマでもありましたっけ・・・。(2004.11.13)