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「慟哭」
貫井徳郎  



題は『慟哭』
書き振りは《練達》
読み終えてみれば《仰天》ーーー北村薫 (帯より)



とても面白かった「追憶のかけら」の著者、貫井徳郎氏のデビュー作で、鮎川哲也賞の候補になった作品です。
なんと、著者25歳の時の作品だそうで、内容から、30代以降の方かと思っていたので、驚きました。才能の輝きが感じられる、すばらしい作品だと思いました。貫井さんの他の本も読んでみなくっちゃ(^^)。

★(ここからは、未読の方は、読まない方がいいかもしれません)
二つの物語が1章ごと交互に書かれています。その事柄が、同じ時期に起きているのか、それともタイムラグがあるものなのか、そのヒントは一切ありません。
どちらも、とても興味を引かれる話で、夢中になって読みました。
そして、ラスト近く。この題名の意味に気がついて、本当に愕然としてしまいました。 「慟哭」という題名からして、胸を締め付けられる物語なのだろうとは、読む前から覚悟していましたが、夢中になって読むうちに、すっかりその警戒が薄れてしまっていたので、本当に辛かったです。

最近、物騒な事件が多発しています。私は、日本の警察の捜査力を信頼していたので、事件解決まで、時間が少々かかろうとも、絶対に犯人は、捕まるものだと思っていました。でも、数年前の、世田谷一家殺人事件以降、犯人が、どんなに証拠を残していっても、犯人逮捕に至らない事もあるのだと、知りました。昨年の幼女誘拐殺人事件にしても、なかなか犯人逮捕に到らなくて、どうなることかと思いました。この事件は、犯人の行動に助けられて逮捕出来たからいいようなものの、あのまま、犯人がなりを潜めていたら、どうなっていたか分かりませんよね。正義は勝つ!なんてことは、ただの妄想だったのかな、と、そんなことを、この本を読んで、つらつらと考えました。 (2005.01.21)