シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     



「家のロマンス」
  加藤幸子


おばあさまが
死にそう。
早く、早く。
駆けつけた
孫娘に
託されたものは・・・。

祖母が語る家の過去、
孫娘が築く家の未来。
時を越え連鎖する生の物語。 (帯より)



前半は、祖母ミヤが、臨終の床で思いを馳せる家族と家との物語です。
北原白秋が、前住者だったという、その大きなお屋敷の中で、非社交的だったミヤは、ほとんど外出もせずに、暮らしていました。
といって、家事や、子育てに奮闘するわけではなく、広大な庭を散策したり、本を読んだりの生活。あぁ、なんて、うらやましいんでしょう〜〜(^^)。

後半は、家を託された孫娘、ヨシノの物語です。家にまつわる、家族の、その後の生き様を物語っています。

最初は、ミヤが、死の間際に、家族の思い出を綴っただけの物語かと思いつつ読んでいたのですが、そうではありませんでした。
東京で住まうことになり購入した広大な屋敷で、子供を育て、戦禍をかいくぐり、大家族の軋轢を乗り越えて暮らしてきたミヤ。彼女とともに、いつも家族の中心にあって、家族を見守ってきた家そのものの存在を感じる物語でした。

ヨシノの代になってからは、家そのものは、消滅してしまうわけですが、その家の影を背負ったまま、家族は、ばらばらになっても、生きていくのだということを、強く感じました。
今の時代では、家族=家。こういう図式を描けるのは、幸せなことなのかもしれないですね。


私の祖母の家も、ミヤさんの家ほど大きくはなかったのですが、東京の閑静なお屋敷街にあって、うっそうと茂る木々の中に、ひっそりと、建っていました。たまに母に連れられて遊びに行くと、薄暗くて、古い家特有の匂いが染みついていて、子供の私には、少々怖ろしかったところです。そんなわけで、私は、あまりその家についてのいい思い出は、あまりないのですが、こういう家の物語を読むと、無性に、懐かしくなってしまいました。 (2007.05.28)