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「水上のパッサカリア」
  海野碧


過去を秘め、静かに暮らす大道寺勉の前に、昔の稼業“始末屋”の仲間が現われる。半年前に事故死した同棲相手・菜津は、実は謀殺されたのだという思いもよらない事実と、トラブルを抱えて…。精緻に描き上げた男と女の物語。 (「MARC」データベースより)


まず、第一章の「奈津」で、引き込まれました。
どうも普通の男ではないらしい大道寺勉。そして、もうすでにいないらしい奈津。二人は、どういう関係で、いったいどうなったのか・・・?
謎めいたストーリーが、始まりそうな予感に、ドキドキしました。

第三章までで、大まかなところは、はっきりします。勉の仕事、奈津の最期・・・。
そして、再び、勉の仕事が始まります。
その仕事の話あたりから、急に読みにくくなってしまうのは、どうしたことでしょう。文の区切りが長すぎるのでしょうか。読んでも、なかなか頭に入ってこず、余計な描写が、やたらと長く書かれているような気がしてしまいました。

それが、犬のケイトのところになると、また、文章が生き生きとしてくるような気がしたのは、私が、このおばかなケイトを好きになってしまったからかもしれません(^^)。

勉の仕事については、ちょっと肩すかしでした。もっと国際的な陰謀に関わるような、もっともっと危険な仕事なのかと、漠然と考えていたので・・・。でも、彼のこの完璧主義も、彼の生い立ちを考えると、分からないでもないです。
また、奈津の死因について聞かされても、勉が動揺しないことに、違和感を感じていたのですが、これもラスト近くで、はっきりして、よ〜く納得できました。
要するに、勉は、深く奈津を愛し、彼女によって、人間的な心を与えられたんですね〜〜。
パッサカリアが聴きたくなりました。 (2007.08.16)