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「荒野」
桜庭一樹  


直木賞受賞第一作
恋なんてしらなかった。わからなかった。
これまでは。
子供でいるあいだは。 (帯より)



この本の前に読んだのが、井上荒野(あれの)さんの本。今回は、この「荒野(こうや)」です。”荒野”つながりで頭の切り替えが難しく、主人公の名前を”こうや”と読んだり、”あらの”と読んだり、”あれの”と読んだり、その都度混乱してしまいました(^^;。

この作品は、桜庭一樹さんが「私の男」で、直木賞を受賞した後、受賞第一作として発売されましたが、実は、第二部までは、2005、6年に発表されたもので、第三部だけが今回書き下ろされたものだそうです。
私はこの方の作品を「赤朽葉家の伝説」しか読んだことがなかったので、あぁ、こういう軽い青春小説も書く人なんだとちょっと驚きましたが、元々、ライトノベルを書かれていた作家さんなんですね。

本作は、子供から大人へと変わる、まさにその時期の成長物語です。
女の子にとって、いろいろな変化が訪れるこの時期、ちょっと奥手な荒野が、家のことや、友達のことで悩みながらも、大人へと近づいてゆく姿が丁寧に描かれています。

荒野の父親が作家という設定が面白いです。しかも、恋愛小説家。
彼の本のタイトルに、思わず吹き出してしまいました。
そんな父親の女性遍歴にあきれつつも、達観する彼女。
どんなに珍しい家庭環境でも、その中にいれば、それが普通なんですよね〜。

一番荒野がかわいそうだったのは、家政婦の奈々子さんが去っていってしまったことでしょうか。母親を幼い頃になくした彼女にとって、頼りになる母親代わりの人だったのに・・・。

そして、淡い恋の相手でもある悠也との関係も、いろいろとありました。

中学から高校にかけての日々は、もう、遠い昔のことなので、忘れ去っていましたが、こんな感じだったかなぁと、思い出したりしました。特に、女子と男子との違いや、敵対心など、そうそう、こんな感じだったよね。

そんな感じで、さらさらと読めましたが、期待したほどではありません。
受賞作「私の男」をまだ読み逃しているので、早くこちらが読みたいです(^^)。 (2008,08,04)