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「波打ち際の蛍」
島本理生  

蛍、
あなたに
触れたいのに。
DV、刻まれた怯え、求める心と拒む身体ーー
痛みを越えて、もういちどわたしたちは、恋をする。 (帯より)



繊細な、とても繊細な心。
一度傷を負ってしまった心は、もう、怖れを知らなかった、あの頃には戻れないのでしょうか・・・?

あることから、壊れてしまった麻由の心。
ちょっとした言葉や、視線で自分を制御できなくなる辛い毎日。
そんな時に出会った蛍は、徐々に彼女の心をほぐしてゆく・・・。

人間の精神は、本当に、脆いもので、こんな状態になってしまったら、本人はもちろんだけど、周りも、途方に暮れてしまいます。
何気ない肉親の言葉ひとつでも、こんなに、心がかき乱されるのなら、ほんとうに、どうしたらいいのでしょう。

でもセラピーの先生の言葉は、心に響きました。
彼女たちは、患者が自分自身を信頼する事が出来るように、そして、自分自身を自分で支えられるように手伝ってくれるのですね。

確かに、辛いことは、少しずつ、自分で、乗り越えていかなければ、誰にも、どうして上げることも出来ないのかもしれません。
周りの人も、そんな彼女を見守るだけ。ちょっとずつ、前に行かれるように・・・。

心の痛みを知っている人は、そんな心の余裕も持ち合わせているのでしょうか。蛍のように・・・。 (2008,09,15)