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「コミュニティ」
篠田節子



欲望、妬み・・・、ふとしたきっかけで、自分の中に潜む闇が表出し、人生が思わぬ方向に転がりはじめる。日常を突き詰めて、あぶり出される恐怖、奇妙さ、甘美を多彩に紡ぐ短編集。不況のあおりをうけて、引っ越した団地での人間関係の濃さに戸惑う家族を描く表題作「コミュニティ」、大人の恋愛の切なさを美しく綴る「夜のジンファンデル」などデビュー当時から約10年間に発表された秀作を収録。 (裏表紙より)



篠田さんのホラー・ミステリー系の本が好きで、一時は、よく読んでいましたが、最近は、「Xωρα(ホーラ)―死都」を読んだぐらいで、ご無沙汰でした。
でも、久しぶりに読んでも、やっぱり、いいですね〜。面白かったです。

6つの短編が収録されていて、単行本で刊行された時の題名は、「夜のジンファンデル」。
どうして題名が変わったのかと思ったら、なるほど、「夜の〜」だけは、ホラー色のある他の短編と、少々感触が違っていたからなのでしょうね。
でも、題名としては、「夜の〜」の方が、インパクトがあって、素敵ですが・・・。

「永久保存」
男の滑稽さがもたらした恐るべき結末。
身から出たさび・・・というには、あまりにも悲惨です・・・(^^;。

「ポケットの中の晩餐」

「絆」
これも、男の身勝手さが悲惨な結末を誘引した話です。
それにしても、こんな男にとって都合のいい話ってあるでしょうか。
それに気がつかない女も、悲しいですが。

「夜のジンファンデル」
素敵な、大人の恋愛物語です。
でも、その後ろ側には、またしても男の身勝手な考えが・・・。
それを笑ってやるのが女の務めなのでしょうかねぇ。
場所が変わると、ブドウの姿も味も変わってしまうというところが、この小説の要かな。

「恨み祓い師」
怖いなぁ。
これだけ年季の入った恨みなんか持っていたら、やっぱり死ぬに死ねないのかもね。

「コミュニティ」
途中から、オチは分かってしまいましたが、
閉塞した社会の中にはいるまでは、抵抗感があるけれど、
いったん中に入ってしまったら、それなりに心地よくて、合理的で、それが普通になってしまう・・・っていうのは、よく分かります。
怖いことだけど・・・(^^;。 (2009,10,29)