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「デンデラ」
佐藤友哉


五十人の老婆が、奇妙なコミュニティを形成する現在の姥捨て山「デンデラ」。ある者は自分を捨てた村を恨み、ある者は生き永らえたことを喜び、ある者は穏やかな死を願う。様々な感情が渦巻く隠れ里は、一匹の巨大羆の襲来により、修羅場と化した。 (「BOOK」データベースより)




貧しい「村」では、70を越えた老人は、山に捨てられる倣(なら)いでした。
斎藤カユも、息子に背負われて山に捨てられ、そして、当然、極楽浄土に行くはずだった・・・。

気がつくと、カユは、山に捨てられた老女たちが作った集落”デンデラ”に、運び込まれていたのです。 せっかく極楽浄土に行けると思っていたのに・・・。

物語は、ここから始まります。

デンデラには、70歳以上の老女が、50人も集まり、かつて住んでいた「村」以上の貧しい生活をしながら、ある者は「村」への復讐の炎を燃やし、ある者は、デンデラでの生活を守ろうとしていたのです。

最初、斎藤カユは、せっかくの極楽浄土への道を閉ざされて、怒り狂っているのですが・・・。

貧しいが故の因習に洗脳されたカユが、自分自身で、生きることの意味や、生活する上での知恵を獲得し、自分で”考える”ことをし始めます。

この老婆たちのパワーの凄いこと!
とても70歳以上とは思えません!(^^)。
怖いもののなくなった彼女たちは、言いたいことを言い、したいことをしながら、意見の違いを受け入れつつ、デンデラで生きていたのです。

そして、巨大熊との壮絶な闘い・・・。
それは、決してきれい事ではなく、グロテスクな描写に溢れていて、気分が滅入りました(^^;。

隔絶された彼女たちの世界は、人間社会の縮小したものなのでしょう。
人の考えは様々で、それをまとめようとする人間の苦労。
報われない事の多い日常。
熊との闘いという究極にまで追い詰められた彼女たちの行く先は・・・。

彼女たちの強さに驚嘆しつつも、死の匂いが強く感じられる小説で、読みながら疲弊してしまいました。
力強いおばばたちが好きな人向きです・・・(^^)。 (2009,11,13)