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「小さいおうち」
中島京子




赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。 (「BOOK」データベースより)



最初は、ちょっと取っつきにくくて、あらま、と思ったのですが、
読み進むうちに、どんどん引き込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。

主人公は、いろいろな家に住み込みで働いた、タキという女中さんです。
この本は、その中でもタキの記憶に強烈に残った、ある家で働いた思い出を綴った手記です。

時代は、昭和初期。
田舎から、女中として働きに出てきたタキが、平井家で働くようになった頃の話です。

この頃の庶民感覚の歴史が、案外新鮮で面白かったです。
今となっては、当時の日本の存在の危うさが歴史として分かるけれど、
当時生きていた人たちは、ただただ、政府の発表をそのまま信じ、実際の状況よりも、明るく、楽しい生活を送っていたようです。
まあ、当然ですよね。
今のようにインターネットなんてないのだから、新聞やラジオで知らされる以上のことが、一般庶民に、分かるはずもないんですから。

そんな時代の、女中さんを置いているような、ちょっとゆとりのある家の生活の描写も、とても面白かったです。
若奥様のファッションや、プチ贅沢な外食、人々の交流や、家のモダンさ、子どもたちの生活。
いかにも”昭和”の香りがプンプンとしてきます。
まさに、古き良き時代ですね〜〜。

そんな中、ある時を境にタキさんの手記がぷつりと途絶えます。
それからは、ちょっとしたミステリー風になって、
ラストは、その結末が・・・。

はっきりと書かれていない、その理由とタキの心情が余韻を残して、読んだ後も、心が後を引きました(^^)。

映像化したら見たいかも(^^)。
時子奥様役は、常盤貴子なんていいかもね(^^)。 (2011,04,25)