シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     



「恋しぐれ」
葉室麟

蕪村、最後の恋。
五十近い年の差を厭わぬ
一途な想いに友人の応挙や秋成、
弟子たちは、驚き呆れるばかり。
宗匠と祇園の妓女の
恋路の結末は・・・。 (帯より)



江戸時代の俳人、与謝蕪村と、彼を取り巻く人々の物語です。

俳句には興味がなく、与謝蕪村も、名前だけは知っている・・・という程度の私。
最後まで読み切れるかなと、少々ビビリながら読み始めました。

でも、なかなか面白くて、どんどん引き込まれて、最後まで、わくわくしながら読み終えることが出来ました。

描かれているのは、晩年の与謝蕪村、67歳。

登場するのは、蕪村の弟子の月渓、蕪村と親交の厚かった画家の円山応挙や、国学者の上田秋成など。

名前だけ知っている人もいましたが、知らない人でも、実は、みんな、名のある人たちばかりでした。

そんな彼らの、恋のお話です。

それらの物語は、全て、蕪村が残した一編の俳句から、著者が想像力を駆使して、作り上げられたもののようでした。
たったひとつの俳句から、こんな素敵な物語が生まれる・・・すばらしいですね〜。
もしかすると、本当に、こんな事があったのかもしれないなと、思いを馳せながら読みました。

遠い歴史の彼方の彼ら。
でも、彼らにも、もちろん、今の私たちと同じような、悩みや、思いが、あったわけで、
このようにして、彼らの周りで起こった出来事や、その時の彼らの心の中の断片を、想像できるなんて、とてもうれしいことでした。
その楽しみを与えてくれた著者、葉室麟さんに感謝です。

葉室さんの経歴を読むと、この作品もそうですが、何度も直木賞候補になりながら、残念ながら受賞されていないとのこと、是非とも、次の機会こそ、受賞されますように・・・。 (2011,08,10)