シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     





「月と蟹」
道尾秀介


「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる―やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。 (「BOOK」データベースより)



第144回直木賞受賞作です。
とうとうこれで、道尾さん、直木賞を受賞されたんですね〜(^^)。
”祝!”

私が、道尾さんの作品の好きなところは、作品のジャンルが、読み終わるまで未知数だという所。
道尾さん自身も、かつて、ジャンルは考えていない・・・と言うことをおっしゃっていたような・・・。

そんなわけで、この作品も、いったいどの方向に進むのか分からず、時にはドキドキ、時にはハラハラしながら読み進みました。

引っ越しして以来、級友となじめない小学生の慎一。
そんな彼の唯一の友だち、春也と、自分たちだけの場所で、過ごす時間・・・。

実は、大人が考えるような、純粋で無垢で、何も知らない、いい子なんて存在しないのでしょう。
大人だって、自分たちの子どもの頃を思い出せば、分かっているはずなのに、どうして子どもに、そんな幻想を持つってしまうのでしょう。
子どもには、子どもなりの考えがあり、結構残酷だったり、陰湿だったり・・・。
子どもにとって、いやなこと=自分のやったことが発覚して、大人にしかられること。
でも、隠れて、いろんな事をし、いろんな事を考えるからこそ、成長し、たくましくなっていく。
それは、大人の言うことをおとなしく聞いたからではなく、自分で、いろいろな体験をして、痛い目に遭うからこそなのでしょう。
そこをうまく通り過ぎて、やっと、大人への道が開けるのだろうなぁ。
そんな事をこの本を読みながらつらつらと考えていました。

慎一の周りにも、いろいろな事がありました。
小学生の慎一には、大きすぎ、たくさん過ぎるほどのいろんな事が。
そして、彼は、これから大人へと成長してゆくのでしょう。

子ども時代の、淡い恋物語とか、しっかりした友だち同士の絆とか、そんな幻想を打ち砕く小説でした。 (2011,08,15)