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「ナイフ投げ師」
スティーヴン・ミルハウザー   柴田元幸=訳


自動人形、遊園地、気球飛行、百貨店…ようこそ“ミルハウザーの世界”へ。飛翔する想像力と精緻な文章で紡ぎだす、魔法のような12の短篇集。 (「BOOK」データベースより)



初めて読む作家さんでした。
なんの気なしに手に取ったのですが、読み始めるとこれがすごい!(^^)。

短編集で、12の物語が収録されています。
最初の作品は、この本の題名でもある「ナイフ投げ師」。

昔あったような興行で、ナイフ投げ師が美女にナイフを投げて観客を沸かせる・・・ようなシチュエーションなのですが、
この本に出てくるナイフ投げ師の登場を、観客たちは、大きな緊張感を持って待ち受けていたのです。
それは何故か・・・。
確かに、彼のナイフ投げ師としての実力は、すばらしいもののようでした。
あり得ないほど正確なナイフ技。
そして、彼は、最後に、恐るべき事をするのです・・・いえ、それは、もしかすると、錯覚だったのか・・・??

他の作品も、一風変わった話が続き、
そして、私が最も特徴的だと思った作品は、
「新自動人形劇場」「協会の夢」「パラダイス・バーク」そして「私たちの町の地下室の下」です。
これらの作品は、一つのことを究極まで追求していき、そして、それがたどり着いた結末の物語です。
その追求の仕方が、激しく、大胆で、驚きに満ちていました。
描写が細かいので、書かれていることが、自然に頭の中に構築されるのですが、それが、どんどん発展していって、終いには、想像すら出来ない状況に陥ってきます。

この本を絵で描くとすると、カラフルで、細かくて、独創的で、そして、狂騒的・・・なものになるでしょう。
映像化は、まず無理。
読者がそれぞれの頭の中で、思い描くしかないですねぇ。
私は、これを読んで、頭の中が、ミルハウザーの書き上げた世界でいっぱいになってしまって、息苦しいほどでした。

ちょっと変わった作風ですが、読み始めると、やみつきになるかも(^^)。 (2012,02,01)