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「鍵のない夢を見る」
辻村深月


普通の町に生きる、ありふれた人々がふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる5篇。現代の地方の姿を鋭く衝く短篇集 (内容紹介より)

第147回直木賞受賞作です。

五編の短編が収録されています

最初読んでいて、これは、どういう作品集なんだろう?と思いました。

日常生活の中の、ちょっとした変わった出来事・・・。
でも、読み進めていくと、納得。
これは、犯罪小説集なんですね。
なるほど、よく見ると、それぞれの題名には、みんな犯罪のタイトルが付いています(^^)。
でも、最初の2作品は、何気ない、小さな町の出来事が描かれていて、”犯罪”というには、小さな、でも考えてみれば、立派な犯罪を描いた小説だったので、気がつきませんでした(^^;。

ちょっとした、心の齟齬で、起こってしまう犯罪。

犯罪にまでは至らなくても、どこにでも、こんな事は、転がっているような出来事ばかりです。

この主人公たちは、越えてはならない一線を、越えてしまった人たちということですかね。


「仁志野町の泥棒」
田舎町だからでしょうか。
人々の、それなりの優しい心遣いが、とても意外に感じた物語。

「石蕗南地区の放火」
36歳という微妙な年齢の独身女の心情が、あけすけに吐露されていて、なんとも、笑えるというか、悲しいというか、不愉快というか、そんな思いでいっぱいでした。

「美弥谷団地の逃亡者」
ラストに驚きが集約された物語。
でも、実際、こんな事件あったよなーーー。

「芹葉大学の夢と殺人」
本当にこんな人がいたら、困ってしまう、夢見男。
この話が一番好き。

「君元家の誘拐」
怖くて、ドキドキしてしまいました・・・ちょっと違う意味で・・・。



今まで読んだ3作品(他には、「オーダーメイド殺人事件」「水底フェスタ」)の中では、一番面白かったです。 (2012,10,27)