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「虚無への供物」
中井英夫


昭和29年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、従弟の藍司らのいる氷沼家にさらなる不幸が襲う。密室状態の風呂場で紅司が死んだのだ。そして叔父の橙二郎もガスで絶命ーー殺人、事故?駆け出し歌手・奈々村久生らの推理合戦が始まった。「推理小説史上の大傑作」が大きい活字で読みやすく!!(裏表紙より)



日本探偵小説史上の三大奇書と言われる、夢野久作「ドグラ・マグラ」、小栗虫太郎「黒死館殺人事」、そして、本書。やっと全部読み終わりました\(^o^)/。
年代を追って、三作品を読んでいったので、一番新しい作品であるこの本が、一番読みやすく、そして面白かったです。
・・・というか、前二作品が奇書過ぎたので、この作品が、普通に思えてしまいました(笑)。

実は、昔、”本格”に、はまった時、何度もこの題名を目にしていて、昔からずっと、読みたかった一冊だったので、やっと読めて無感量です。

ミステリーでありながら、ミステリーではないという、”アンチミステリー”という範疇の本作。
どこがどうアンチなのか、立派な推理小説じゃない?!と思いつつ読んでいましたが、ラストに、その意味が分かったような気がします。

とはいえ、前半は、氷沼家を知る人たちが集まって、”ヒヌマ・マーダー”として、推理合戦をしたり、 後半には、満を持して登場する牟礼田敏夫の”第四の密室殺人”の告発本が発表されたりと、とことん推理小説なのでした。

この小説には、時代背景がとても重要な意味を持ってくるのですが、なんだか、この混沌とした時代は、現代にも、通じるところがあるように思えて仕方がなかったです。 (2014,05,06)