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そして、バトンは渡された
瀬尾まいこ    



森宮優子、十七歳。継父継母が変われば名字も変わる。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。この著者にしか描けない優しい物語。 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」 身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作(内容紹介より)



瀬戸まいこさんの作品は、ずっと以前「優しい音楽」という作品を読んだだけですが、その優しさに、とても感動したことがありました。
彼女の本を読むのは、その時以来です。

読み始めてすぐ、違和感を感じてしまいました。
それは、読み手である私のせいなのでしょう。
世の中では、虐待死事件や、自然災害が溢れていて、心が暗くなりがちでした。
そんな時、「困った。全然不幸ではないのだ。」という書き出しで始まるこの小説は、
あり得ないほど、私の心を上滑りしたのです。

そんな違和感を感じながらも、さらさらと心地よい文章に誘われて、読み進んでゆきました。これは、フィクションだからと、割り切りながら。

主人公の優子は、親がたくさんいる女の子。
ん?!と思いますが、話が進んでゆくと、その理由が分かってきます。
他人は、彼女の複雑な家庭環境に驚き、同情しますが、彼女はいたってお気楽です。
それもそのはず、彼女の周りには、”いい人”しかいないのですから。

結局最後まで、なんだか夢のような物語で、現実味がなかったです。
もちろん、悲劇だけが好きというわけではないのですが・・・。
でも、非現実的な世界に浸って、ほんわかした少女漫画を読んだ後のような、気持ちになりました。 (2019,10,28)