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花埋み
渡辺淳一



学問好きの娘は家門の恥という風潮の根強かった明治初期、遠くけわしい医学の道を志す一人の女性がいた―日本最初の女医、荻野吟子。夫からうつされた業病を異性に診察される屈辱に耐えかねた彼女は、同じ苦しみにあえぐ女性を救うべく、さまざまの偏見と障害を乗りこえて医師の資格を得、社会運動にも参画した。血と汗にまみれ、必死に生きるその波瀾の生涯を克明に追う長編。(「BOOK」データベースより)



図書館が閉鎖されたので、予約した本が手に入らず、家の本棚から昔の本を引っ張り出してきました。

この本は、昔読んだ本ですが、だいぶ忘れているところがあり新鮮でした。

日本初の女医・荻野吟子の生涯を描いた作品です。
結婚して1年で夫から淋病をうつされ離縁された彼女が、苦労しながら女医への道を手探りで進んでゆきます。
彼女が生まれたのは、なんと江戸時代です(゚o゚;。
そして離縁されたのが明治3年。
その数年後、彼女は女医を目指すのですが、この時代、文明開化とは言え、女性が医者を目指すことがどんなに大変だったのかは、想像に難くありません。
なにしろ、女性が本を読んだり、勉強することが、まだまだ白い目で見られた時代なのです。
そんな時に、周囲の反対を押し切って、単身上京し、男ばかりの学問所に通い、様々な偏見や差別に屈せず、着実に医師への道を進む彼女の姿は、凜々しく、神々しく、小気味がいいです。

また、目標を達成した後、突然訪れた人生の転機で、彼女の人生は一変するのですが、ここでも一生懸命まっすぐに立ち向かってゆく姿は、とても彼女らしいような気がしました。

それにしても、なんと強い女性でしょう。
こういう人がいたからこそ、女性の新しい時代が切り開かれて、今に至っているということですね。 (2020,03,26)