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愛の旋律
アガサ・クリスティ

奔放なオペラ歌手ジェーンの歌声に魅せられたヴァーノンは、
婚約者のために一度は諦めた音楽家への道を再び呼び醒まされた。
それはまたジェーンへの愛の兆しでもあった。
平凡な幸せを望む心とは裏腹に、ふたりの女性を愛し、
音楽家としての野心に取り憑かれた天才芸術家の愛と苦悩を流麗な筆致で描く大河小説。
解説:服部まゆみ(裏表紙より)


いよいよクリスティーのロマンス小説部門に突入です。

"愛の旋律"・・・ちょっとこっぱずかしい題名ですが、内容は真面目です。
原題は、”Giant's Bread”ちょっとイメージが違いますね。
天才音楽家の愛の軌跡が描かれます。

冒頭と、ラストに芸術論とかあって、ちょっと難しいのですが、中盤は、すらすら読み進めました。

特に子供時代は、三人の個性の萌芽が見られて面白いです。
子供の発想って、凄いなぁ。

青年期に入ると、大人になり、未熟なりの理屈っぽさが出てきて、これまた個性が伸びてゆく様子が分かりました。

ネルのエピソードが好き。
貧乏な境遇で苦労しているのに、愛した人がこれまた貧乏青年。金持ちの紳士との間で、悩む姿は、よく理解できました。
また、戦時中のネルの看護助手としての生活は、クリスティーの体験に基づいているようで、興味ありました。
その後のヴァーノンの記憶喪失も彼女の実体験が生かされているそうで、クリスティーの思い入れが分かります。

ヴァーノンの音楽的才能がとうとう実を結ぶ最後を読むと、思わず、冒頭をもう一度読み返しました。 (2026,04,10)