8月29日 設立記念シンポジウム 講演要旨
                               
   「脳
の発達と動物飼育」
       
唐木英明先生 日本学術会議会員・東京大学名誉教授  
 子どもが動物と日常的に接して、ふれあいのなかから生命を実感することは、子どもの心
を育てる上で大きな効果があると考えられる。家庭での動物飼育が少なくなった現在では、子
どもが多くの時間をすごす学校においてそのような機会を作ることに意味があるといわれる。
それでは心とは何だろうか。なぜ動物と接することが心を育てる役に立つのだろうか。そのよ
うな基本的な疑問についての答えはまだ十分ではない。その意義が十分に説明できないために、
学校で動物を飼育することについて批判的な意見も出てくる。この難しい問題について、人間
の脳の発達の観点から考えてみたい。 
 「ストレスを感じたときに、一番簡単に快感を得られることは食べる行動になるわけです。
それで、ストレスがかかるとつい食べてしまうことになり、ストレスを解消することになります。
それから、キレル、暴力というのも、ここに結びつきます。食欲とか性欲という行動を満たすた
めには暴力がつきまといます。すると、暴力をふるうことが快感であると誤解して・・ 

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「獣医師が支援する動物介在教育」
    桑原保光先生 群馬大学教育学部非常勤講師 群馬県教育委員

 個人の動物観と認識の違いから学校で飼育されている『動物の命』に対する対応が混乱して
いる。学校飼育動物の教育目的を明示し、生物から総合的に学ぶ教育の重要性と、飼育基準や
飼育管理指導基準を検討し、共通理解に基づいた教育指導が実施できる体制作りが必要ではな
いだろうか。小学校動物飼育における個々の指導法や飼育体験に興味、関心を持ち、楽しく学
び実りあるものにすることが重要であると考えている。学校と連携を取っている獣医師の立場
から動物飼育について『動物介在教育』という観点から論じたい。
「ウサギさんの好きな食べ物何?」と聞くと、「ニンジン!」という子が8割くらいです。こ
れは日本人の特性で、好きか嫌いかわからないときに、図書やテレビなどから得た情報をもと
にして、「ウサギはニンジンが好きだ」と決めつけてしまうんです。ウサギも性格が皆違うよ
うに、食べ物の好き嫌いも当然あるわけです。それを見極められるような・・」全文


「委員会活動から4年生の学年飼育へ」
       山崎京子先生 西東京市立保谷第二小学校教諭

 今年度から4年生全体で飼育に関わることになり、三つのクラスがそれぞれ一ヶ月交代で動
物の世話を行った。毎月いろいろな事を引継ぎながら「動物の命を守る 4年生」のとおり学
年全体で協力し、世話をしていることの感覚を共有できた。地道な活動の中にもウサギの死産、
ヒヨコ誕生などドラマがいっぱいであった。この取り組みにあたり、最初に動物の世話や関わ
り方について、後に動物全般について調べ学習を進めた子供達が持った疑問点などに獣医師が
答える授業を行った。秋の学習発表会では体験をせりふにした台本をつくって劇を構成した。
また鳥インフルエンザの時にも獣医師の助言で飼育を続けた。3学期、3年生への引継ぎをし
たが、その姿にも成長が見られ良い体験を得た一年間だった。
 「動物も自分の思うとおりには動いてくれませんし、人も自分の思うとおりには動いて
くれません。
これは、他者を理解するということの原点なのではないかと思います。」 全文


「教室内飼育の課題と成果」
    
   森田和良先生 筑波大学附属小学校教諭 

  教室での動物飼育も6年目に入った。この間、様々な児童の変化やトラブルに出会っ た。飼っていたモルモットの死も体験した。さらに、クラス替え、卒業などの学級集団の解体に伴った、モルモットの引き取りについても児童と共に取り組んで きた。
 このような動物を飼育することによって必然的に出会う出来事に、子供や家庭、教師がどのように対応してきたのか、その6年間の活動の一部を紹介したい。
そして、動物飼育の教育的な効果や、トラブルに対する具体的な対応、残された課題などについて考えを述べたい。    
  「一生懸命やる先生が自ずと飼育当番になるわけです。この矛盾わかりますか?つまり、いい加減で無関心な先生は、「私はできない」と避けて通って、良 心的な先生ばかりが負担を背負うわけです。・・・」
保護者の手紙 「シーリンの死を他の3家庭に知らせ、電話口で親同士涙を流しました。そのとき、私は、ふと、娘の学校文集の分掌を思い出しました。娘は、 『シーリンが結んでくれている仲間との絆』どいう言葉を使っていましたが、この絆は、子ども同士のみならず、・・」
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