4 総合討論   会誌目次へ
    
司会
  鳩貝太郎 国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官
パネラー 
 
中川美穂子 全国学校飼育動物研究会事務局長 全国学 校飼育動物獣医師連絡協議会主宰 
 森田和良   筑波大学附属小学校教諭
 山崎京子   西東京市立保谷第二小学校教諭
 桑原保光   群馬県獣医師会学校動物愛護指導委員会委員長 群馬県教育委員
 唐木英明   日本学術会議会員 東京大学名誉教授

<鳩貝>
では、総合討論を始めたいと思います。
まずはじめに、この会の準備を中心となって精力的に行ってまいりました中川先生から、補足や思っていることを少し、ご紹介いただければと思います。
<中川>
ご紹介いただきました、獣医師の中川でございます。
 だいたい、学校で動物を飼うか飼わないかということですが、家庭で飼えばいいんじゃないかという考えもあるのですが、抄録の最後から2ページ目にです ね、家庭での飼育状況が書いてあります。これは4年生の調査ですけれども、あちこちで調べさせていただいて、結局、このごろ多いのは、飼っていない子ども たちとだいたいが水槽で飼っている動物なんですね。これは、東京、横浜、川崎といろいろなところで調べましたが、だいたい同じ傾向です。森田先生が、動物 を飼うときには親御さんにアンケートを採っているんですが、それを見ましたら、この間のアンケートでは、「家では飼えないから、学校で飼ってくれるとあり がたい」という回答が多かったんですね。家で飼えないという理由が私にはちょっとわからないんですけれども、森田先生のクラスでも、学校で飼っていると、 そのうち家庭でも飼いだす、ほ乳類を飼う親御さんが増えてくる、ということのようです。私たちは命の実感を与えるために子どもと動物を離したくないと考え ていて、学校での飼育を獣医師のサポートで何とかしようと考えています。そうすれば、10年20年経ったときに、家庭でみんな飼いだして、今みたいな問題 がなくなっていればいいなという希望で、教育は希望だといわれますので、そういう希望で活動を続けています。
 獣医師のサポート体制としては、抄録の一番後ろに学校獣医師の概要というのが書いてありますが、今実際に自治体がかかわっているところは、このピンク色 の抄録がありますが、これは小動物の獣医師会の人たちがつくっている小動物獣医師会が、毎年こういう冊子を出していますが、これの23ページにだいたい報 告がまとまっています。そのうちの31ページからは、各自治体の契約内容が詳しく載っています。群馬県みたいに行政がたくさん用意するところもあります し、だいたいが、1校1万円以下で、獣医師がすべてのことをやっているというのが現状です。森田先生の文京区のお話は、システムができているとおっしゃい ましたけど、それは、獣医師会が「診ましょう」という申し合わせをしただけで、どこからも手当が出ていません。でも、理解があって、各個人の獣医師が全部 引き受けてやっているということです。
 私たちは親として学校を見てきましたので、やはり、やらざるを得ないというところでやっていますので、そういう理解が獣医師にも広がるようにやっていけ ればいいなと考えています。
 保谷二小、先ほどの山崎先生の学校で経験したことですけれども、1,2年生の子どもたちに動物ふれあい教室、つまり、動物の導入編ということで、学校の 動物をふれあわせたときに、さわらせる前は、何も質問が出ませんでした。抱かせたあとに、複数の子どもたちから、「動物は何でできてるんですか?」ってい う質問が出たんです。ビックリして「え?」って聞き返したら、「何で動くんですか?」って聞くんですね。すごくその子にとっては不思議なんですね。そこま で、動物を意識したことがなかったんです。子どもたちは動物が好きだかわいいだといいますが、すべて映像です。実際にさわったときには、ビックリして放り 出しちゃうんです。それが、実感が足りないということだと思うんです。だから、命が大切だとか大切じゃないとかいう前に、命とはどういうものだ、動物とは どういうものだ、人間も動物だと、そういう観点から子どもたちに体験をさせてあげられたらな、と思っているわけです。
<鳩貝>
ありがとうございました。
今、中川先生の方から今まで活動してきた、獣医師さんと学校とのかかわりを通して、そのなかで、「実感として」というお話があったと思います。今まで発表 された先生方は、そこが共通点であったように思います。
時間をできるだけ詰めてとお願いしたものですから、どうしても30分の中で話ができなかった部分について、1,2分で各先生方に補足説明をいただきたいと 思います。
森田先生どうでしょう?
<森田>
発表資料の一番最後に課題をいくつかあげたんですけれども、たぶん1番についてはこれから話題になるのでいいと思うんですが、実際に飼ってみるとお金の問 題とか土日に持って帰るときの順番をどうするかということについて、われわれ担任としては頭の痛いところです。治療費については、獣医師さんたちが協力し て体制をとってくだされば何とかなると思うんですが、実際には餌代とか飼育ケースの購入とかという問題が出てくるわけですね。やっぱりそれは学級で飼うん ですからその辺は保護者に理解していただいて、学級費で買ったりもしています。それから、かわいい問ですから最初はみんなが飼いたい飼いたいと言うので、 それを調整するのは、やっぱり担任がやらなければいけない。それを子どもたちに任せることは最終的にはいいと思うんですが、最初やっぱりこういうルールで こんなふうにやりましょう、というのは、先生がつくってあげないといけないわけです。全部子どもに任せっぱなしでも、やっぱり困るし、その辺の担任のかか わり方というのは、学級の実態もいろいろあって、いろいろやりながら修正をしていくというのが実態なんです。特に夏休みとか冬休み、それからお盆の時期、 正月の前後というのは誰も引き取り手がいないんですよね。少ないんです。どうしても。中には、投句の地方へ帰省するんだけれども大丈夫か?と聞かれたこと もありますが、大渋滞の中10時間も車の中に置くというのは、いくらクーラーが利いているといっても厳しいよ。という話をします。そういう場合には、最悪 は、私が引き取るということで、私の夏休みの日程も全部出して、その中で調整をしてもらったりしています。
こういう細々としたことは、目に見えないんですけれども、いいことばかり表には出していますが、いろいろなことを裏で担任が抱えざるを得ないことも事実で す。そのことを、やはり嫌だとは思わないで、いい意味で、保護者との協力体制をとっていくということで、うまくクリアできればいいなと思っています。
<鳩貝>
ありがとうございました。山崎先生、お願いします。
<山崎>
 学校では本当に忙しくて、たくさんやらなければならないことがあります。そこで、動物の飼育をすると、勉強に支障が出ると思われる先生方も多いみたいで す。でも、学習プログラムの中に、飼育が有意義であるという位置づけを行うことができたら、私たちはそうしたわけですけれども、そのときから気持ちが楽に なったんです。飼育がいろいろな教科に波及できるということで、いろいろな教科とのタイアップを1年間の中で考えてきましたので、これが学習であるという 意識の変化と計画性をもったことで、教師にとっては安心感につながったと言えます。
 先ほどの発表で、動物の飼育が人権尊重と関係あると言いました。今、校内の研究で、人権尊重についてみんなで勉強しています。たとえば、高齢者ですと か、子どもの問題、障害者の問題、先日はハンセン病の患者さんの施設や資料館などの見学にも行ったりしたんですけれども、やはり、共生の立場に立つため に、どんな教材で子どもたちにそんな理念を形作ろうかということを研究しています。正しい知識の不足から起こる差別意識、弱い者を支配しようとする潜在的 な信条とか独占欲というのが、お年寄りに対しても、障害者に対しても、ドメスティックバイオレンスというもに対してあるということを、私たちが勉強して知 るわけです。でも、こういう心というのが、動物を飼育していても、すごく芽生えるんだなと思いました。動物って本当に思うようにいかないし、弱い立場なん ですけれども、最初は、お世話してやっているんだという意識が子どもたちにもあります。僕たちがこの子たちの命を握っている感覚ですね。それが、だんだ ん、動物たちにも個性があるし、好きなものもあるし、ちょっとした癖もあるし、最後には、1年間通すと、こうしてほしいんじゃないか、だからこうしてあげ よう、という同等の立場に立つということに気がついたんです。それが、やはり人権尊重という点でも、原点だと思うんです。だから、障害者についての勉強も します。また、お年寄りの勉強もいっぱいしますけれど、飼育をしてみて、なかなかこれはいいんじゃないかなと思いました。そういう手応えを、1年の中で感 じて、今年は、違う先生方がやっているんですけれども、校内みんなでサポートするということが大事かなという感覚を得ました。
 また、公立小学校の場合は異動というものがありますので、私も、別の学校に異動したときにも、そこの飼育舎がどうなっているかということもあると思うん ですが、そこでも何かしらのかかわりができるかなと思います。
<鳩貝>
ありがとうございました。続きまして、桑原先生お願いします。
<桑原>
 子どもと動物のかかわり方や飼育指導の基準を、ここの場で、みなさんでこんな基準がいいよとか、こんな方法がいいよとか、指導案、指導方法、簡単に動物 を選ぶ方法など、どこの視点に合わせて、子どもの教育に動物をかかわらせていくか、やはり、真剣に討論する場を設ける必要があるんじゃないかと考えます。 やはり、動物に対する認識というのは、かなり幅があるんじゃないかと思います。その幅のある中で、教育ということで考えたら、こうあるべきだという、ある 程度の基準を出しながら、子どもの指導にあたっていけたら、より、先生方もわれわれ獣医師も、たいへんな思いをせずに、子どもの教育に十分よい影響が果た せる飼育になるんじゃないかと考えます。
 ということで、研究会のテーマとして、その辺を議論していったら研究会の活性化につながるんじゃないかと思いますし、いい方向が導き出せるのではないか と考えております。
<鳩貝>
ありがとうございました。それでは唐木先生お願いします。
<唐木>
 特に付け加えることはないんですが、あえてお話をするとすれば、一つは森田先生のお話にもありましたが、動物は自然のままがいいという誤解が非常に広く 広がっているということには、かなり私もこれではいけないなという感じがいたしました。自然の動物と飼育されている動物は全然違うんだということを理解し なければいけません。飼育されている動物、あるいは家畜というのは、人間が作り出した動物であって、人間が世話をしないと生きていけない動物であるという ことです。そして、飼育するということには非常に大きな責任が伴うということです。だから、子どもがその責任を感じるということが教育になるということで すが、一方、責任を伴うということは、必要性がなければ飼いたくないという、現代の家庭の問題にも変わってくるわけです。昔はわれわれは、食べるという目 的でたくさんの動物を飼っていましたけれども、今はもう、スーパーマーケットに行けば何でも手に入る時代で、自分で動物を飼う必要もないということになり ます。
 そうすると家庭での動物の飼育は、これからはどうなるのかということですけれども、一つの例をあげると、お年寄りの家庭が増えて、お年寄りが癒しのため に動物を飼うということが増えてきたということがあります。また、そういった生活環境の変化で動物を飼うことが少なくなったけれども、それがまた、違った 形で動物を飼育することになるということになってきたのかなと思います。ですから、子どものために動物を飼育することの必要性というものを社会が認識すれ ば、やはり、子どものために動物を飼育しようという家庭も増えてくるんだろうと思います。
そのためには私たちが、こういう運動や活動をもう少し続けていって、その必要性をアピールしていくということが大事だろうと考えます。
 それから、もう一つは、動物を使う教育に限らず、教育をするときに私たちが是非考えなくてはいけないことは、脳の問題を先ほどお話いたしましたが、人間 の進化の問題です。進化の中で人間がどういう性質を獲得してきたのか、という問題も考えなくてはいけないと思います。暴力というのは、おかしな人間がする ことではない。われわれ全員が、暴力に快感を覚えるという異本的な性格をもっているということ、それをきちんと、発達の段階で抑えるというメカニズムがあ るから、われわれは今それを抑えられているわけです。それを抑えられないと、それが表面に出てきてしまう。そういった危険性はみんながもっているというこ とを認識して教育をしなくてはいけません。
 同じように差別をするということ、これは、動物がもっている当たり前の性格なんです。ですから、悪い子どもが差別をする、悪い大人が差別をするのではな い。そういう教育を受けなかったら、われわれはみんな差別をするんです。それは、詳しく話をすると長くなりますが、たとえば、動物が繁殖の相手を選ぶとき に、最低限選ぶ条件は左右対称なんですね。なぜかというと、繁殖の相手の遺伝子がかなり正しくないと、自分の子どもがおかしくなるかもしれない。ただ遺伝 子は目に見えない。しかし、遺伝子が典型的な目に見える形になるのが、顔、体、すべてが左右対称であるということなんです。これは、遺伝子がかなりしっか りしていないと、左右対称にはならないんです。ですから、すべての動物が、内臓は左右非対称ですけれども、少なくとも、外見だけは左右対称にできていると いうことは、動物が、繁殖の相手として、左右対称の相手を選んでいるという、その結果なんですね。人間にももちろんその性格が残っています。ですから、傷 害がある人、左右が非対称の人に対し、まず子どもは気持ち悪いと思う。大人も子どももそう思います。そこから差別が始まるわけです。ただ、それがいけない ことなんだということをきちんと教えないと、教えない限りは、本能的にはわれわれは気持ちが悪いと差別をしてしまう。そういった、人間の進化あるいは脳の 働きをきちんと知った上で、教育を進めるということが非常に大事であるというように考えます。
<鳩貝>
ありがとうございました。
 それぞれのみなさんから補足の説明をいただきました。残った時間がだいぶ少なくなってまいりましたが、お聞きの先生方からご質問でも結構ですし、ご意見 でも結構です。これに限ってと絞るにしてもちょっとあまりにもテーマが大きいものですから、まず、いろいろなご意見、お考えの方もいらっしゃると思います が、動物を飼育するということにおいての、今までのお話をふまえた上で、ご発言をいただければと思います。なお、あまり一人で長くお話しされると時間もな くなってしまいますので、できましたら3分程度で、ご自分の考え等を含めてお話しいただければと思います。ご意見ご質問がある方は挙手をお願いいただけま すでしょうか。そして、所属お名前をいただいた上でご発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
<武>
群馬県教育委員会の武と申します。
 自分の考えというもの、自分の実践というものを、今配られた紙に連ねてみて、自分の気持ちを整理したつもりでいます。
そこで、提案といいますか、提言のようなものをさせていただければと思います。常々思っていることは、桑原先生のご発表にもありましたとおり、実際に子ど もたちを指導している先生方が、経験がない。知らない。だけれども、学校にいると動物がいる。だから、仕方なく飼うという負担感や義務感、リスク感という か、そういうものが先生方にあるがために、正しい飼育ができない。正しいふれあいが子どもたちにできないという事実があるかと思います。
 そこで、一番必要なことは、先生方が、子どもたちと動物がふれあうということについて、必要性を認めて、そして、義務感やリスク感を少しでも少なくし て、そして、子どもたちに適切な指導ができるということが必要かと思います。
 そのためには、やはり先生方の研修が必要だと思うわけです。その研修の場というのが、今曖昧な状態にある。だから、この会でこれからの研究の中で、その 研修の場というものを、虚位初苦行性と獣医師会とがタッグを組んで研修の機会をしっかり設けるということが必要だと思います。その際にどんな研修が必要か というと、やはり、桑原先生がおっしゃっているように、飼育基準のようなものをしっかりと設けて、それをもとにした研修が、全国の中で行われていくという ことが今、いちばん求められているというのではないかというふうに考えております。
 ですから、この研究会が、国や地方自治体の教育行政を動かしていけるようになっていければいいという期待感をもって、今発言をさせていただきました。
<鳩貝>
ありがとうございました。具体的なこの研究会でやるべきことを含めて提案いただきました。
そのほかいかがでしょうか。
<横山>
防衛医大の横山と申します。
 ちょっとお聞きしたいんですが、学校飼育動物のおもしろさというものは集団で飼うことだと思うんです。それで、われわれの生活上、みんなで一つの命を、 たとえば、ペット、イヌとか飼っていたら1対1の関係しかもてない場合に、今まで学校の先生方もそうだと思うんですが、集団で一つの命に向き合う距離感て いうものをどうとったらいいかわからないんじゃないかと思うんです。たとえばイヌを飼っている子が、学校で10人でハムスターを飼ったら、同距離感をとっ たらいいかわかりにくいと思うんです。どういうふうに、命との距離感をもつように教えるというか、気構えを学校の先生方がもつのかということが、全然わか らないので教えていただきたいと思います。
<森田>
 今のご質問で、私はそういう距離感というのをあまり感じないんですけれども、具体的に、自分の家でたとえばイヌを飼っていれば、自分である程度占有でき るっていうのはありますよね。ところが、10人で飼っていれば、自分だけ占有すれば周りからはずるいと非難されます。そういう意味では、ある程度セーブし てつきあいますね。たとえば、飼育当番ならばある程度きちんと世話をする。世話をするということはマイナスのイメージかもしれないけれど、プラスのイメー ジとすれば、動物にさわれる。自分の飼育当番じゃなければ、当番がさわっているときに横取りするっていうことはしないということが、たとえ1年生でもやっ ているわけです。そういう意味では、学校の中で、ほかのこの目の前では自分だけ占有しないということがある程度ブレーキになるんですけれども、それを今度 は家にもって帰ったときに、まさしくペット状態になるんです。だから、10週間に1回自分の家に来たときに、ほかのこの目を気にしないでたっぷりさわれる ということになるわけです。そうすると、今まで学級でさわっていたこととを違うことを、彼らは思う存分やるし、それから発見もたくさんあるということにな ると思います。その辺の変化は保護者の手紙からどんどんわかってくるんです。だから、学校ではある程度他の子の目を気にしながら、等距離でつきあおうとす るけれども、自分のところに帰ってきたら、100%自分のものということ、2泊3日だけは、自分のペットという意識は彼らはもっているような気がしますけ れどもね。
それくらいしか感じる部分がないんですが、よろしいですか?
<鳩貝>
今のお話は、教室で飼うことと自分の家にもって帰るということの子どもたちのその場その場での対応の仕方、友だちとの人間関係、生き物とのかかわり、それ をきちんと見据えながらやっているということかと思います。
横山さんの質問の趣旨は、今の答えでおわかりになりましたか?
<横山>
それは、ハムスターやモルモットだからできているということですか?つまり、イヌとの関係は全く違うと思うんですよね。それはちゃんと教えるっていうこと ですか?
<鳩貝>
イヌとの関係はまたちょっと違うと思うんですが、そのへんはどうしましょうか。
<森田>
そのことは、私の学級に限定すれば、何も教えていません。彼らは勝手に判断しているということです。実際にイヌを飼っている子もいますし、だから、そうい うところで彼らはつきあい方を全く同じにしているか私も聞いていないので、推測でしかないんですけれども、それはたぶん違えていると思います。
それは、やはり家でイヌを座敷で飼っていることがありますよね。彼らはモルモットをもっていくと、モルモットの周りに寄っていくわけです。モルモットはイ ヌが来るとおびえるので、彼らは、イヌを別の部屋に押し込んだり、つまり、普段かわいがっているイヌの方を我慢させるわけです。だから、彼らの順序からす れば、みんなで飼っているモルモットが第一優先で、クーラーの利くいちばんいい部屋に置かれるわけです。それで、たった2泊3日だけイヌを我慢させて蒸し 暑い部屋に押し込んでしまうということを彼らはやっているようです。
<鳩貝>
その辺のことについて、中川先生いかがですか?
<中川>
 ネコを拾った話がありましたが、あるお子さんが拾ったネコを飼いだしたんです。その弟の言葉なんですが、「お姉ちゃんネコが来たらモルモットの面倒見な いんだよ」っていうんです。そして、その弟が一生懸命面倒見ているわけです。
 そういう事例は確かにあるかもしれませんけれども、やっぱりクラスのモルモットというのをみんなが認識して、大事に扱っていると思います。
<鳩貝>
ではそのことについてちょっと唐木先生お願いします。
<唐木>
今、イヌのお話ですが、イヌはモルモットのようには飼えません。ご存じのように、イヌはボスがいてあとはそれに従う動物ですから、人間をボスと思っている とそれが次々回っていったらイヌはノイローゼになります。ですから、ボスが1匹いて、イヌはそのボスに100%従うことによって、安堵感を得ているので す。そういう動物ですから、こういう集団飼育に合う動物と合わない動物がいます。
<鳩貝>
その辺は、学校飼育動物を考えるときに特に重要な点かもしれません。先ほど桑原先生がおっしゃいましたように、どういう動物種を選ぶのかということが、大 きくかかわってくることかと思います。
続いてのご意見をお願いします。
<最上>
青森県八戸市の最上と申します。
 先ほど森田先生があげられた課題にもあったんですけれども、アレルギーの問題について、パネラーの先生方にご質問したいと思います。
 われわれ八戸でも4年前からふれあい指導ということで、各学校を回って、ふれあい指導をやっているんですが、その過程の中で、幼稚園から小学校にはいる ときの1日入学のお子さんで、強いぜんそくを引き起こしまして、救急車で運ばれたという事例があったんです。実際そのときにモルモットを教室で飼っている 事例だったんですが、その時点で、モルモットをさわったとかなにもなく、教室の中にモルモットがいたというだけで、喘息の原因が、モルモットの毛によるも のだろうということで、校医さんがそのモルモットのアレルギーだろうとおっしゃって、学校からは一切動物を排除してくれと、そういった事例がありました。 それで、学校側は、校医さんの意見をそのまま尊重して、そのまま学校から動物がいなくなったという事例があったんですけれども、そのときにわれわれ獣医師 サイドとしてどのような対応をとるべきなのか、意見としてどのようなことを話をしていっていいものなのか、その辺のところの先生方のお考えをお教えいただ ければと思います。<唐木>
それはかなり理不尽な話で、校医さんのその感覚、感じ方でその問題を処理したということだろうと思います。アレルゲンはテストすればすぐにわかるわけで す。本当にモルモットが原因だったのかどうか、それを確認してもらうというのが、まず大事なことだろうと思います。
<中川>
森田先生のクラスでもやはりそういう親御さんの心配があったときに、それはきちんと親御さんに説明したら、調べてくれました。だから、獣医師のやったこと は、唐木先生がおっしゃったように、科学的な見知から対応したらどうですかという助言です。そうしないと、他の子どもが恨んだりしてしまうということもあ るわけです。
それから、そういった上でやはりその子が反応するようでしたら、そのときはみんなで考えればいいということだと思います。
たった1回来て、緊張感からか何からか原因がわからないまま起こした喘息なのに、すべて何も文句が言えない動物に押しつけてしまうという風潮が結構ありま すので、獣医師が頑張っていただけたらと思います。
<森田>
補足で、私の学級も基本的には希望制なんです。全員に強制すると今みたいな問題があったりすると困りますので、一応希望をとります。そのときに「やらな い」という子はいないですね。でも、心配事を書く欄があって、それを見ると、アレルギーのことも出てきます。そのときには、先ほど言ったように、ゴム手 袋、長袖で世話をさせるようにします。だから、直接ふれあわないようにします。それでも、ちょっとかゆくなった場合には多少距離をようにします。
あるお母さんは、「うちの子はアレルギーなのでさわらせないでください」と言ったんですが、ではわかりましたと、手袋をして長袖でやりなさい、と言ったん ですが、1週間もしたら子どもですから、もう手袋を忘れて、素手で世話してるんです。私の方はあとで気づいて大丈夫か心配したんですが、全く大丈夫でし た。そんなもんだと思います。だから意外と保護者の方が、ものすごく心配が先にあるようです。ただ、最近の子どもたちにはそばアレルギーとか卵アレルギー とか魚卵アレルギーとか、われわれの想像もしていないようなことがあるので、特に今1年生担任なので、子どもたちに判断をしろと言っても無理なんですよ ね。ですから、ある意味では、事前にアンケートを採って、こちらでそういう情報を知っておいて、なおかつ、これは調べればわかりますから、念のために医者 にいってアレルギーの診断をしてくださいといいます。そうすると、アレルギーだって言った子の中には、モルモットの毛は大丈夫だけれど、ウサギやネコの毛 にアレルギーを起こす子がいるわけです。そういうことがわかっていれば、親も安心するし、こちらも安心できると思います。やはり、検査をしてもらうという のが、いちばんいいんじゃないでしょうか。
<鳩貝>
 動物飼育の場合には、今そこが非常に問題になっています。1人の子がそのアレルギーをもっているために、結局全体で飼えなくなってしまうこととか、鳥イ ンフルエンザに関しましても、結局学校から鳥の仲間がいなくなってしまうような状況が現実に出てきています。不安が先だったためのいろいろな行動が起こっ てきている。それについては、今唐木先生がおっしゃいましたように、科学的な見方、先ほどの発表にもございましたが、そういう知識をきちんとわれわれ自信 も身につけていかないと、そういう風潮に流されてしまうことになります。先生方もやはり不安だからそれを信じてしまう。ということなのかと思います。そう いう意味でも獣医師会のみなさんや、医師のみなさんとも連携しながら、この研究会そのものもそういうことを勉強して、各学校の先生方にも不安な状況がない ように、いろいろな広報活動をしていく必要があるのではないかと考えております。
そのほかにいかがでしょうか。
<田中>
学芸大附属世田谷小学校の田中と申します。よろしくお願いいたします。
 先ほどから唐木先生のお話をたいへん興味深くお話をうかがっておりました。先ほどイヌの件につきましても、学校でイヌを飼えというお話だったのかちょっ とよくわからなかったんですが、私どもはかつて、イヌを飼いまして、子どもが怪我をするというようなそういう状況も起こって、たいへん危ない目にあったこ ともあります。そういう意味で、集団で飼うときにどういう動物が適切かというような、今回の桑原先生のご提案なども非常に大切に受け止めなければいけない と思いました。
桑原先生のお話の中で、期限をつけてというようなことをおっしゃっていたかと思うんですが、その辺のところをもう少し教えていただけると嬉しいと思いま す。
 動物を飼うというときに、教員がどういう気持ちで飼っているのかということを考えると、非常に様々だと思います。自分が飼いたくて仕方なくて子どもにか こつけて飼ってしまうのか、それとも子ども自身の発達段階に応じて、とてもこれは大事だからということで飼うのか、ということでも全然違うと思います。ま た、そのときの対応によってはやり、子どもにとっての必要性を感じた場合に、それなりに親などに説明などをして、了解を取って飼育をしていく方もいるだろ うし、とにかく、周りのものを巻き込んで事実をつくってしまうというやり方をして、あとでおかしくなるという場合もありますので、そういうところを考えて いかなければいけないと思います。
期限ということも非常に興味があるので、教えていただければと思います。
<桑原>
 期限ということで、群馬県獣医師会と学校が6年間の連携をとっている中で、やはりいちばんの問題は、赴任先に必ず動物がいるということです。私の意志に 反しても、そうでなくても、動物はいるんだということです。それで、飼育舎の構造とか飼育頭数に制限がないために、自分の首を自分で絞めているという状況 です。そんな状況なので、果たして、学校がずっと同じ動物を飼う必要があるのかということも考えてもいいんだと思うわけです。そういう一連の流れの中で、 思いやりの形成の時期は、8歳までとか10歳までとかいわれますが、生活科で、1,2年の期間の中で、たとえば1年半とか2年の終了までとかいうような、 学校計画、生活科の指導案に基づいて飼うということ。それで、2年の3月の終了時にその飼っていたクラスのウサギは、たとえばクラスの中で相談をして、持 ち帰るとか、森田先生の事例のようにして、持ち帰るのか、また1年生に戻すのか、6年生まで飼うのか、室内で飼った動物は、6年経ったら一緒に卒業させた らどうですか?というような提案をしています。ですから、室内飼育に限って、愛情を注いだ動物は、年限を切って、卒業したときに置いて帰ってしまうのでは なくて、一緒に卒業させましょうよ。というような、具体的な思い入れが入る動物なので、外の動物と全然違うと思うんですね。ですから、室内飼育の動物に チャレンジした場合には、必ず年限を切って、そのあとはもって帰るとか、6年まで飼って一緒に卒業するんだというような、いろいろな具体例を考えていかな いと、子どもの優しい気持ちとか、子どもが純粋に動物のことを思っている気持ちを見過ごしてしまうケースが結構あるかと思います。ここは、先生の意見と子 どもの意見がうんと違うところです。だから、その辺は十分生活科で室内飼育を始める前には、アンケート調査や、動物の環境とか、どんな動物を飼ったらいい か、1年生からスタートする場合は半年間かけて、保護者とか、学校全体の教員とかで、検討しながら、年限まで決めた飼育計画を立てた方が、先生方もいい し、すべてにいい循環になるのではないかと考えています。
<鳩貝>
ありがとうございました。中川先生。
<中川>
 今のことで、補足させていただきます。今学校で飼われているのは、飼育委員会が飼育舎を維持するというやり方がありますけれども、愛情を基本にしたとき というのは、ちょうど30ページに提言をしましたけれど、これは、各地の学校やらいろいろな学校のやり方を見て、森田先生たちと相談し、一つの形にまとめ たものです。
 学校で飼うときには、生活科の中で身近に飼うということを必ずしたらどうかということです。そのときの動物は、ウサギより小さいもので、1,2年生は飼 育舎がまだ管理できないから、教室の内外で身近に飼う。そして、3,4年生になれば、飼育舎を管理できる能力がありますから、飼育舎で飼う。3,4年生の 飼育は別に年限を切る必要はないので、学校のためにずっと維持して、保谷第二小みたいな飼育法方がいいと思います。こういうやり方をすれば、5,6年生は このことを基礎にいろいろに発展していくということで、直接には飼育にかかわらない。
それと、全く別のことですが、森田先生のように、総合的な学習の時間に位置づけていらっしゃいますけど、いわゆるクラスのペットとして、飼っている場合も このごろだんだん増えて、そのクラスのペットの場合は、森田先生の例と同じように、一緒に卒業する。または期限を切る。そういうのがいいと思います。
 だから、いろいろなやり方がありますけれども、子どもと動物がどのようにかかわれるかという、感情を見て飼える動物と心をつながらせるということをやっ ていただけたらと思います。かわいがるというところから、いろいろなところへ発展しますので、かわいがれる状況をつくってあげてほしいと思います。
<嶋田>
西東京市の島田と申します。
長いことぐ犯少年とかかわってきたことから、質問というかお願いなんですが、今、みなさんのお話ですと、たぶん小学生とかが対象だと思います。最近テレビ で目にした方もいらっしゃるかと思いますが、再犯率0の少年院というので、アメリカで、日本では保健所に預けられてしまうようなイヌを少年院の子どもたち に育てさせたところ、その少年院の子どもたちは、少年院を出てからの再犯率が0であったということがあります。いまだかつてその0というのは破られていな いということです。
 今、青少年犯罪が非常に問題になっております。小さいときにやっておかなければならないということはもちろんなんですが、青少年がいることもお忘れいた だきませんように、是非、獣医師会の先生方、また、小中学校の先生方も動物を飼うことを通して優しい心を育てて、青少年犯罪を少なくしていきたいと思いま すので、その辺のご協力を是非お願いしたいと思います。
<鳩貝>
小学校だけではなく、中学校高校でもそういうことを考えていく必要もあるのではないかというお話でした。
<石田>
多摩動物園の石田と申します。
 学校の話を中心にされているんですけれども、今、獣医師さんにかかっている動物の数というのは、十数年、二十数年ほとんど変わっていないと思います。と ころが最近見ていてもわかると思うんですが、町中で子どもたちがイヌを散歩するとか、そういう場面を見ることがなくなりました。つまり、動物を家庭で飼う ということのスタンスが、著しく大人化しているわけです。では、なぜ大人化しているかということですけれども、大人だとすると、人間と動物の関係と、人間 と人間との関係が飼う上でも重視されていることになります。
そういう中で、そのような実際的なメリットというものが大人の中にはあるわけですから、そういうことを適用して、たとえば生臭い話になってしまうかもしれ ませんが、学校で動物を飼うということによって、学校運営がうまくいくとか、家庭の環境がよくなるとか、そういうことを積極的にどこかで事例を出して、そ ういうことをてこに活動していく必要があるのではないかと思います。そのことによって、特にいちばんいいのは、先生方の精神的な負担が下がっていくという ケースが出てくることがいちばんいいと思うんです。その一つが今日の、獣医師さんが学校を支援するということだと思うので、何とか教員が学校で動物を飼う ことによって、たいへんなところはたくさんあるけれども、うまくいくとすごく楽になるんだということを、うまく表現できないかという感じがしますが、いか がなものでしょうか?
<唐木>
動物飼育に限らず、人間の行動はすべてそうなんですが、コストベネフィットの計算なんですよね。ですから、学校飼育動物はコストがかかる、コストというの は、手間がかかってお金がかかって、アレルギー対策で...という面倒くさいことは山ほどあります。その割にベネフィットがはっきりしない。そこはおっ しゃるとおりです。
 それから、昔は子どもが家庭で動物を飼いたいといっても、残飯を与えるくらいでコストはあまりかからなかったわけです。今はアパート暮らしで飼うのがた いへんになり、コストがかかるようになった。そうするとそこでもやはり、ベネフィットがあるのかどうか。この研究会は、先ほどの講演の最後でも申し上げま したとおり、ベネフィットが何なのかという、先生方の教訓をなるべくたくさん集めて、それを世の中にアピールしたいということで、今ご提案のとおりのこと を、この会でやるべきなのではないかと思います。
<森田>
 今のようなお話は、いい事例はいくつかあるんです。たとえば、私は1年生を担任していて5月くらいから飼い始めて、そろそろ3か月くらいになるんですけ れども、全くほ乳類をさわったことがなかった母親がいたんですが、私が担任して子どもが家に持って帰って、子どもと一緒にさわりましたというんですね。そ して、改めてほ乳類のおもしろさがわかりました。という手紙を長々と書いてくれたんです。
そういう事例はいくつかあるんですけれども、では、そういうことがたとえば、動物飼育をすることによってこんなに優しくなりましたとか、こんなに人に対し て優しくなりましたということが、本当に動物飼育だけでそうなったのか、それにプラスしていろいろなことがあるわけです。たとえば、母親として子どもの見 本にならなければいけないという責任感もあるわけです。多様な影響によって現実が見えてくることもあるので、教育というのは、1つのことでなかなか語れる ことではないので、やはりある意味ではその効果というものが、おぼろげながら、きっとこうなんだろうという実感はあっても、これだからこうですよ、という ふうに断言するためには、ちょっとたくさんの事例を集める必要があるのではないかと、正直思うわけです。でも、今ご指摘のように、そういういい事例をたく さん紹介することによって、少し躊躇していた先生や、いろいろな保護者の方が、前向きに動いてくれるということはあるので、いい意味でたくさんの事例を紹 介する場をつくるように、こちらとしても努力していく必要があるし、特に保護者に理解してもらわなければいけないので、そういう努力は学校現場としても、 どんどんしていく必要があると思っています。
<中川>
29ページの右の下の方に、教室内飼育の利点欠点という表があります。これは鳩貝先生と私たちがまとめたんですけれども、これ、左側に「なし」と書いてあ るのは、教室内で飼育していない先生です。その先生は、利点については、心を癒すとか、生命尊重の心を養うとか書いてありますが、何よりもいちばん数が多 いもの、環境が不衛生になるという点をあげています。それからもう少し上で、授業妨害になる欠点があると、こんなふうに答えています。ところが、右の方 は、現在教室で飼育している先生の感想です。その中でも、環境不衛生については12.3%の先生があげましたけれども、その下の方の利点がすごく大きいと いう特徴があります。それに授業妨害もないということですね。
 教育というのは、私は言える立場ではないんですけれども、今こうやったから子どもがこうなったということはあり得ないことだと思います。今こういう種を まいて維持しておいたら、いつかこうなるということがあって、それでも、このアンケートに答えてくれた先生は、ごく短い経験の中でこのような回答をしてき たわけです。ということは、これを大事にしていっていただけたらと思います。長いものだと思います。
<山崎>
私もごく普通の現場にいるわけなんですけれども、子どもたちが飼育にかかわるのは、1年間という期限付きですけれども、今、5年生になっても気にしている 子たちはいます。先ほどのイヌのこともあったんですけれども、外の飼育ですと、たくさんの動物をたくさんの子どもたちで世話をするわけです。私たちも教育 の仕事をしていて、子どもたちがあと十数年したら親になるという、長期的なスパンで子どもたちを見ていくということはとても大事だと思います。子育てして いるお母さんが公園で孤立化しているとか、子育てがすごくたいへんだというのをうかがいます。でも、子どもたちが飼育にかかわっていると、子どもたちに とって動物は、自分たちの子どものような対象になっていて、何人かの子どもを一緒に育てているという疑似体験というか、そういうことをしていると端から見 ていると見えます。だから、客観的にも見るし、愛情を持っても見るしということで、将来子どもたちが、親になったときのとてもいい経験をしているのではな いかと思います。保護者にも、そういうことがすごくいいことだとか、いい発言があったとか、飼育をやったということだけではないんでしょうけれども、いろ いろな変化があったとか、いじめになりそうだったけどここで歯止めがかけられたとか、そういう事例を親御さんに声を大にしていうっていうことがすごく大事 だと思います。また、去年の1年間の中でも、すごく保護者の方々に支えられた、地域の方々に支えられたということもあるので、こちら側でただ義務でやって いるのではない、私たちの学年でもこんないいことがたくさんあった、ということを声を大にして言っていく。次の年は、私も今年は1年生を持っているんです けれども、また違う先生が飼育をする。そして、そこをサポートする。また次の年に、違う先生が携わるということで、いいことを、声を大にして伝えながら、 やっていくということが大事かなと思います。いっぱい失敗もあるんですけれども、そういうのを広げていくということも大事かなという感想を得ました。
<鳩貝>
時間が迫ってきていますので、いまお手をあげた3人の先生方に限って、ご発言をお願いします。短時間で申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
<野村>
私は保育園を経営しております。こうした研究を通してこれからの日本をつくることになるかもしれないということを考えています。命は命からしか学べないと 思っておりますので。命を学ぶことは平和な社会へ、まあそんな単純にはつながっていかないと思いますが、希望的な観測はもっています。
この会は、学校飼育動物ということの研究会ということですが、私は保育の立場で言わせていただきます。
 保育園では、ウマやヤギを飼っている園もあります。また、ブタを飼っているところもあります。ウサギはもちろん、アヒルとかウズラとかも飼っ ています。また、たくさんの動物を飼っているところと飼っていないところもあります。その飼育の仕方は各園に任されているところがあります。学校でやって いる生活科のような内容は、すべて保育園で終わってしまっている場合もある。
 だから、この研究会の中で、幼児教育であれば幼稚園もその中に入りますけれども、保育園のそうした活動に対してどのようなとらえ方をされるの か、ということをお聞きしたいというのが一つです。保育段階では、そういったレビューは実際たくさんあるんです。
あともう一つは、愛玩するような動物だけではなくて、命を分け与えている家畜にふれあうことについて、どのように考えていらっしゃるのか、その辺のところ をお聞きしたいと思います。
<鳩貝>
まず、学校飼育動物ということで「学校」と書いてありますが、これは、全部書き並べていくと、どうしても長くなってしまいますので、「学校」というのは、 子どもの発達に応じた教育をする場、というように広い意味でとらえていただきたいと思います。これは小学校と限定しているわけでもないし、教育にかかわる ということで、保育園、幼稚園も含めたものであると、私どもは理解しています。そういったことの説明が不足であったかと思います。
 それから、家畜との関係、これもいろいろな実践等もございますし、命とかかわるということで、その辺を具体的にいろいろ実践されているところ もあります。これも、われわれの側でどうだ、ということではなく、みなさんと一緒に議論しながら、家畜とのかかわりをどう指導していくかということ、子ど もたちの発達段階とともにどうプログラムを組むかということについても、積極的な提言をいただきながら考えていきたいと思います。
 それから、保育学会ということもありましたけれども、いろいろな学会でいろいろなことが行われていますが、飼育をするということに焦点を当て て、いろいろな学会の先生方にも集まっていただいて、共通の土俵で話し合うという機会が、この研究会をもとにできるのではないかと思っております。特に教 育心理の専門家とか発達心理の専門家とか、いろいろなところでそういう研究もなされております。
 実は、日本学術会議の中で唐木先生が委員長をされております、獣医学の研究者の団体、獣医学県連というものと、私どもが所属をしております科 学教育(サイエンス教育)の研究者の集まりがありまして、両方のデータを出し合いながら話し合いをもつということをやっていて、シンポジウムも行いまし た。そこで言われてきたことは、きちんとしたデータを出そうではないか。まだまだそういうものが不足しているのではないか。経験論の中だけで話されていた り、一つの事例があまりにも立派すぎて、あと他のことが使えないとか、いろいろなことがあります。これから、それをもっともっと一般化できるような事例で すとか科学的なデータ、特に子どもたちの発達と疑問との関係の今後の研究が待たれているのではないかと思います。
 先ほど、唐木先生の方から脳科学の話がありましたが、特に今、脳科学と教育というのが、脚光を浴びる時代になってきました。文科省の方でも重 点施策の中に脳科学と教育というものが位置づけられていくというふうにも聞いております。
 ですから今後、こういう部分が科学的な教育研究として、もっともっと進んでくるのではないかと思っております。ですから、こういう研究会の中 で、われわれもそういうことを学びながら、お互いの知識を深めていくことが必要なのではないかと考えております。
<矢田>
三重県の矢田と申します。
先ほどから出ている話とだいたい合致するんですけれども、森田先生が言っておられたように、動物が具合悪くなって動物病院に連れて行ったら、なんだこんな の、と言われてしまったという話がありましたが、私も学校飼育動物にかかわる前はそう思っていたんです。思ってしまうんですね。それほどひどい状況になっ てから来ることが多くて、何でこんな状態なんだと思っていたんですが、やはりかかわるようになってくると、やむを得ないかなと思う部分がずいぶんあるんで す。特に、飼っている動物についてあまりご存じでない先生方が割と多くて、訪問活動で子どもたちに説明する中で、ウサギっていうのは齧歯類じゃないんだよ と話していると、子どもたちよりも先生方が驚くんですね。先ほど桑原先生がおっしゃっていたみたいに、歯の数が違うんですよというお話からしていくと、も のすごくビックリされるんです。そして、エサも当然違うんですよという話をしていくと、実は子どもの方が知っていて、先生方がやたらと横で感心しているん です。
 そういったサポートは私たち獣医師は十分できるんです。ところが、その話をしたあとに懇談などをしていると、今度は教育的な意義はどうでしょ うとか聞かれるんです。そう聞かれましても、逆に私たちは教育の専門家ではないですから、説得力のあるお話がなかなかしづらいんですね。先ほどの教室内飼 育のことにしても、こんな飼育方法もあるんですよ、というお話をしても、「ああそうですか」で終わってしまうんです。ですから、できればそういう点では、 教育界のこと獣医師界のこと、そういういろいろなことがクロスして行われるこのような研究会では、教育界での先駆者の先生方の事例をどんどんペーパーにし ていただいて、私どもが学校訪問したときに、こんな事例がいっぱいありますよということを出せるようにしていただくと、非常にありがたいと思います。
 それから、先ほどの青少年のことと関係しますが、私の休診時間に、病院の前にいわゆるシャコタンで派手な車が止まって、暴走族が殴り込みに来 たのかと思ったんですが、弱りきったウサギ抱えてオロオロしながら、ものすごいヘアスタイルの青年がでてきたんです。「どうしたの?」と聞いたら、「まだ 飼って1週間もしないのにぐったりして、どうしよう」と、半分涙目で訴えてきたんです。そして、診てあげて少し何とか治まって、そうしたらペコペコしなが ら帰っていったんですね。普段怖いような青年がそんなふうになるんですね。ですから、やはりそれなりの年齢になっても効果があるので、子どもにはもっと効 果があるんじゃないかと思っています。
 そういったことで、私たちにできることはどんどんしますし、利用していただきたいと思うわけですが、教育の専門家のみなさんからもいろいろ な、逆にいうと私たちへのサポートもいただきたいと思っております。
<鳩貝>
ありがとうございました。
あとお一人でお願いします。
<柴内>
東京都の獣医師の柴内です。
今日は、このようなテーマで開催されました、中川先生はじめ、関係者の方々に感謝申し上げます。
私は獣医師でございまして、動物病院も設営しております。その間に、今お話がありましたように、本当に学校の中というものは、私たち臨床のものからは縁が なかったんです。では、本当に病気が悪化したときに、先ほどの先生もおっしゃられたように、悲惨な状態を見ることになります。最近でもそのような現状はた くさんあります。そのようなことは私たち獣医師としては当然のこととして見ておりますが、単純に申し上げれば、学校の教材として、動物を取り上げるなら ば、やはり、それなりの手当ができるような体制で飼育なさらなければ、本当に、先ほどから何人もの先生がおっしゃっておりますが、温かい形で動物たちを子 どもたちと結びつけることは難しいと思います。ましてや、それには文科省からきちんとしたカリキュラムが出て、そしてその中には予算もつけて、そこまでい かなければ、本当に家族としての動物も、それからまた、不潔な飼育状態とか、病院に行くのをためらうような動物の状態とか、先生方がご苦労なさることも、 私は大間違いだと思います。
私も40年間そのような状態をずっと続けてまいりましたけれども、最近はちゃんと区に申し上げます。これだけかかりましたけれども、十分の一か二十分の一 をご請求いたします。港区ですけれども、千代田区も港区も、最近はその十分の一か二十分の一をお支払いくださるようになりました。やはりこれは表明しなけ ればいけないことだと思います。
 そして、今日のような大会が開かれるということは、もう十年に十年前は考えられなかったことです。それは、私も今日本動物病院福祉協会というところで、 動物、特にイヌを中心ですけれどもコンパニオンアニマルと呼ばれる動物たちを連れて、高齢者とか学校とかそして、またハンディキャップを持つみなさん、ホ スピス、小児科の病棟等をおたずねしていますけれども、そうした中で、今ここでこういう話題になってくる理由は、子どもたちにとっては、私は専門家ではあ りませんけれども、先ほども脳の科学ほお話が出ましたけれども、とてもイヌ、ネコといったような温血動物、ほ乳類は、人間と同じように同じ年齢の時まで に、10歳までの脳ができあがる。それまでの教育は非常に重要で、特に身近にいる温かい動物とふれあう体感教育が非常に大事だということがわかってきてい るわけです。そういうことをこれから本当に教育の中に活かしていただくことで、先ほどからお話も出ていますように、特に10歳から先の男の子にとっては、 男性ホルモンが活躍しはじめてからの男の子にとって、女の子のように母性本能ではかなわないということです。 それでも、いわゆる動物たちに対する配慮は 変わらないという素晴らしいデータもあります。ですから、いろいろ犯罪に走る子どもたちも多くなってきました。動物はなぜ大事なんだろうということを今話 さなくてはならない理由は、社会が変わったからだと思います。
 そのようなことで、私たちもそういったことにご協力することを本当に今までは積極的でなかったと思います。今、桑原先生をはじめこうしたことを立ち上げ てくださった先生方がよりよい議論を進めて、きっといい確立した基準をつくっていただけたらと思っております。
<鳩貝>
 時間がなくて申し訳ございません。5時には閉じなければならないものですから、申し訳ございませんがこの辺で、まだまだご意見等たくさんあろうかと思い ます。やっと白熱してきたところでもあるわけですけれども、先ほどお渡しいたしましたペーパーの方にその辺お書きいただいて、われわれのところで対応でき る部分については、対応するし、また今後の会の運営をしていく上で、みなさんのご意見を参考にさせていただきたいと思いますので、ご遠慮なくいろいろ書い ていただければと思います。
 ここで、総合討論の方のまとめということにはなりませんが、閉じさせていただきたいと思います。
これで、この研究会がやっと歩き出すことになるわけですが、みなさんの様々なご意見をいただきながら、活動できたらと思っております。
この場でいろいろ発表していただきましたパネラーの先生方、どうもありがとうございました。

【講評】日置光久 国立教育政策研究所教育 課程調査官
<鳩貝>
このシンポジウムの締めくくりとして、文部科学省 日置先生より講評をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
<日置>
みなさんこんにちは。
もう終わって、帰ろうとされた方もいらっしゃるようですが、ここで少しだけ、10分ちょっとお話をさせていただければと思います。
 私、文部科学省の教科調査官ということもありまして、ここには、たぶん教員の先生方と獣医師の先生方、それから動物園の方もおられたようですが、いろい ろな職種の方々がいろいろな意見をもって、新しくできたこの研究会にいろいろな可能性と思いをたぶんおもちだと思います。これからどんどん発展していけば いいと思っております。私は、文部科学省ということもあって、教育ということで、少しだけ、特に学校の先生方に、どんなふうに学校教育の中で考えていけば いいのか、そのことに対して何か少し参考になればということで、今日のお話を締めくくらせていただきたいと思います。
 簡単に四点のことを考えていたんですが、一つは、今の教科で行われている教育、これは記号系と実物系があるわけです。記 号系というのは国語とか算数、言葉とか文字とか数、これを扱うことによって子どもが学んでいく教科です。もう一つは実物系です。あえてそういう分け方をす るならば、生活科はまさに直接体験、具体的であります。理科もそうです。自然に親しむという文言が一番最初に出てきます。具体的な事物現象から始まるもの です。そういった様々の教科の特性があるわけなんですが、動物飼育は、どこの教科でどんなふうにやるか、もちろん、総合的な学習という、今の流れがあるわ けですが、いろいろな可能性があると思うので、その辺を考えていく必要があるのではないかと思います。
 一般的には実物系で扱うということになるわけですが、これが総合的な学習の時間を含めて、今、体験活動、自然体験とか、法律もできて増えています。とこ ろが、体験のバブルとかいわれて、これが、体験だけで終わってしまって、子どもの学びがないんじゃないかということをよく言われます。動物飼育がその仲間 入りをされてしまっては困るわけです。そこに、学びというものを考えていっていただきたいと思います。単なる体験ではなくて、体温のある体験、それは何か というと、われわれと同じように体温のある動物を抱っこしたり、精力的に世話をすることによって、子どもにどういう力が育つのかということです。教育的な 価値です。この辺を今から考えていく部分も大きいでしょうが、その辺をしっかり位置づけて、考えながらやっていくということだと思います。そじゃないと、 たまたま学校に動物がいたから、扱わなければならない、コンピュータ買ったから何かやらなければいけない。そういうことではなくて、まず、子どもへの教育 的な価値というものを、しっかり考えていかなければならないのではないかと思います。そこは、中教審の答申にある「生きる力」に当然関連してきます。その 辺を研究していく。そしてそういう願いを実現するための一つの非常に効果的な可能性のある方法として、学校における動物飼育というものを考えていくという ことが、基本的なスタンスなんだろうなと思います。そのためには先ほどの動物飼育管理指導計画ですか?そういう、いろいろな指導計画をしっかりつくってい こうという試みが、すでにスタートしているということは、喜ばしいことだといえると思います。これが一点です。これは、四観点の評価でも考えられますの で、特に第一観点第二観点が、動物飼育に関連してくると思います。もちろん三観点四観点もありますが、その辺は先生方もうおわかりでしょうから。
 それから、二つ目。これは、心理学的な面から若干お話しいたしま す。いわゆるメンタルローテーションという言葉があります。これは、自分から見えている見え方と、こちらの人から見ている見え方は違うわけです。小学校低 学年くらいの小さい子どもですと、自分から見えているように他人からも見えていると思うわけです。相手の立場に立ちにくい、ということがあります。ピア ジェがいうように発達段階でくっきり切れるわけではありませんが、そういうメンタルローテーションの一つの研究がされております。学校における飼育動物と いうのは、認知的なメンタルローテーションもさることながら、信条の気持ち、思いやりのメンタルローテーション能力を育成することにも、私はずいぶん可能 性があるのではないかというふうに聞かせてもらいました。その辺がポイントになってくると思います。要するに相手のチャボとかウサギが、自分に何をしてほ しいんだろう。自分が好きな食べ物とチャボが好きな食べ物は違うはずなんです。自分はこれが好きなんだけれども、でも...というふうに、相手の立場に立 つ力、これを、動物の行動とか日々継続観察し、飼育舎の様子とか体調とか、その辺から一種の推測して、行動して、その結果がどうかということをまた自分に フィードバックしていくこと。これはすごく大事な新しい学力の一つになると思います。これが二点目です。
それから三つ目です。これは、物的関係として子どもと動物ということ です。動物介在教育というくらいですから、子どもがいて動物がいるわけです。子どもと動物に関係して、リレーションがあるわけです。この関係性によって、 一つの教育が行われる。そうですよね。だから、動物をかわいいなとか、思いやりも育つでしょうね。これは二項関係なんです。そういう教育の可能性もあるん ですが、もう一つの可能性も考えてほしい。それがなにかというと、動物を介在して子どもと子どもが話し合うということです。共感し合うということです。こ れは三項関係の教育です。動物を介在した三項関係の教育。僕は動物飼育をしてこういう体験をもっている。同じように友だちももっている。そういう点が共通 なんです。でも、自分の受け止め方や感覚とか、価値観が違うから、違う見方になるんです。そこで話し合うことによって、変わってくるものがあるんです。だ から、二項関係の教育の価値もあるし、三項関係の教育の価値もあると思うんです。そうなってくると、動物介在教育ではあるんですが、もっと言うならば、人 間交流プログラムになってくるわけです。われわれ人間というものが、お互いそういう生き物を飼育し合うことによって、集団としての学び合いがある。知をつ くっていく、学びを深めていくそういう可能性があるんじゃないかなというふうに思いました。さっき、学校で他の子どもの目を意識するけれども、家に帰った ら自分と二項関係だから、まさにねこっかわいがりするわけですが、それはそれでいいんだけれども、学校で他の子どもの目を意識する、これは、すごく大事な んですね。自分はこうしたいけど、たぶん友だちはこう思うだろう。一種のメンタルローテーションですね。その中で、自分は妥当な行動を決定していく。その フィードバックを自分で結果責任を考えていく。こういうことですよね。これが学校で、しかも集団で飼育することの新しい価値なんじゃないかと思います。非 常に短くて申し訳ないです。
 そして、四点目は、心情的なことです。思いやりだとか、そういうこ とがよく出てくるんです。動物飼育の場合。理科でも3年生で昆虫を勉強しますが、これは、自然を愛する信条、昆虫に対する愛情ということをやります。それ はもちろん大前提なんだけれども、もう一つあると思うんです。それは先ほど森田実践でもありましたが、モルモットが500gから1kgまで体重が増えてし まった。短い時間に。これはダイエットさせなくてはいけないという、切実な子どもの思いやりがあるわけです。そのためにどうしようかと、自分たちがダイ エットするときのことを考えるわけです。当然ながら。で、やってみるとの原に連れて行けば、草ばかり食べて全然動かない。これはだめだ。ということになる わけです。それじゃどうすればいいのか。必要に迫られて問題解決していくんです。考えるわけです。これは、心情系のことだけではなくて、認知的な能力で す。まさに、確かな学力を担う力になってくる。だから、そういう心情系の力を育成しながら、同時にそういう問題解決の力も育成できるんだと思います。たぶ んそれは、簡単に離れない。両方向が合わさっているんだと思います。そこを先生方が特に意識して、指導計画をつくる。改善案をつくる。これがポイントに なっていくのではないかと思います。多くは総合的な学習の時間で扱うと思いますが、そこに自ら課題を見つける、自ら学び自ら考える。ということです。これ はまさに、問題解決の能力を総合的な学習の時間で育成しろということです。そのためにコンテンツフリーだという話ですから。飼育動物という非常に豊かな可 能性を持った題材、テーマをもってきて、それで問題解決の能力を育成する。これもできるんですね。しかも命がもっているそういう信条、こういうものが溢れ るように出てくる。それと一緒になりながらできる。これが新しい価値。これが四点目です。
 以上、たいへん短いですが、私自身考えた可能性ですね。これからの教育で学校でそういうチャボやウサギを持ち込んだ場合の、単に持ち込めばいいんではな いんです。それでは単なる体験になってしまうんです。そうではなくて、学校教育での価値をこれから研究していく。これは素晴らしいことだと思います。
<鳩貝>
どうもありがとうございました。
 最初にお断りしましたけれども、主任視学官の嶋野先生が台風の関係で今日来られないということだったんですが、台風が二転三転いたしまして、突然、今お 見えになりましたので、嶋野先生にもちょっとご挨拶お願いしたいと思います。
文部科学省主任視学官の嶋野先生です。
<嶋野>
 たいへんお騒がせをしました。鹿児島に行く予定だったんですけれども、飛行機が欠航になりまして、向こうの明日の会も中止になりまして、そんなことを考 えながら家に帰るのもいいんですけれど、やはり、ここに来てしまいました。
 それで、私は今こう考えています。私は今、どうしてここにいるんだろうと思っているんです。それは、時間がありませんので簡単に申し上げますが、やはり ここに新しい可能性と魅力を感じているからです。いままでのこういう研究会とかこういう集まりというのは、どちらかというと、少し語弊があるかもしれませ んが、なにがだめだあれがだめだというマイナス面を指摘して、問題解決を図るという傾向が強かったと思います。
 しかし、それではどうも限界がある。そして、あまり強くなれば排他的になってきます。進みません。もう、これからの時代というのは、それぞれの立場で、 今自分は何ができるのかということを、それぞれが考えていく時代になったんじゃないか。私は今、文科省の中で仕事をしていますから、私の立場で、あるいは また獣医師さんの立場で、また、指導主事さんもいらっしゃるし、学校で授業をやっている方もいらっしゃるし、保護者の方もいらっしゃる。それぞれ、いろん な立場の人たちが全国各地から集まってきている。私の期待通りだったと思って、すごく興奮をしています。そういう時代づくりに乗って、子どもにとっての未 来。また、子どもの周りから動物がいない社会をつくってはいけないということが、僕の信念でありまして、そういう社会にしないためにも、みなさんと一緒に 学びたいし、やれることをやっていきたい。そういう思いを強くして、今、ここにおります。どうぞみなさん、一緒にこの研究会を盛り立てていこうではありま せんか。お願いします。
<鳩貝>
どうもありがとうございました。文部科学省から強い激励をいただいたと、私どもは考えていきたいというふうに考えております。
 先ほどちょっとございましたけれど、こういう飼育のことも含めた心の教育の問題に、文科省も力を入れて、来年度の概算要求をしているというお話もありま す。私どもが、今日、こういう形で集まりまして、学校飼育動物を通して教育の問題を考えていこうとうことで、研究会が発足いたしました。
 雨の中、また、西の方では台風がだいぶひどくなってきているということですけれども、全国各地からお集まりいただきまして、本当にありがとうございまし た。
 私ども、今日選出されました会長以下、運営委員も含めまして、みなさん方の要望に少しでも応えられるようないい研究会に育てていきたいというふうに考え ております。先ほどお願いしましたように、そのペーパーの中に、ご意見、どうしたらいいのかという情報も含めまして、感想も含めて書いていただければ、私 どものこれからの活動の参考になると思います。
このあと1月30日には、研究発表会を予定しております。その前には、研究史を発刊いたしまして、みなさん方にお届けし、発表会までの予定も、その中に入 れたいと考えておりますので、是非、これからの活動にご協力をいただければと思います。
本日は、これで、このシンポジウムを閉じさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
               おわり

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