飼育の課題と対策(2012年3月訂正)


  *自治体と獣医師会の連携事例要約表

学校の動物たちを活用して子供たちを育てよう

 昔、子供たちは動物と一緒に遊び育ちました。でも家庭で動物を飼えなくなった現在、子供たちに、人間以外の存在を教え、物言えぬ小さな弱 い者への思いやりの気持ちを培うために学校で動物を飼育しています。でも教育大学では「飼育にかかわる授業」がほとんど無い場合が多く、教師は苦労することが見られます。
そのため、動物の飼育方法、授業への活用、飼育体験教育の実際と成果などにかんする教員研修が広がってきています。

  愛情深く、保護者も交えて 子どもに良い影響を与 える動物飼育体験を用意したいです。
 先生にも、動物を可愛いと思えるゆとりが大事です。 
            ・・大変な飼育はしないで、世話の簡単な動物を 少しだけ子どもの身近に丁寧に飼う・・
飼育の課題への対応法                                                   ページ の先頭へ

子供たちから見た動物の問題点

 子供たちは動物が好きです。動物が元気なく餌も食べないときは心配で、教師に病院にかけて欲しいと報告します。
でも、職員室に 保護 するだけで病院に連絡できない学校も見られます。費用が心配なのと、担任として、こどもたちを置いて学校をぬけるわけにはいかないからのようです。
 しかし、それは子供たちにとって、とても辛いことなのです。
  子どもにとってのペットとは、親にとっての子どもと同じ位の意味があるのです。

 また、動物を好きだと言う気持ちだけで、動物の気持ちまでは考えることができず、自分本意に動物をさわり傷つけてしまうことも見られ ます。
bまた、動物を理解できずに、やがて「動物は汚いし、面倒だ。飼育舎は臭いか ら入りたくない。」と言い出す例も良く見られます。 
 子どもが動物の気持ちを思いやるように、大人の指導と助言が必要です。

 大人が子供に動物の表情を丁寧に伝えることが出来れば、こんな素敵で効果的な「子供たちの仲間」は、他にはありませ ん。学 校における児童と動物のふれあい例
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教師の先生方から見た動物の問題点
 教師の先生方は、動物飼育が子供の教育に必要と言われ実際に飼育を任されている立場ですが、具体的には動物が子供たちにどのように影響するのかについて、大学でも殆ど学んできていません。 そのため、大変さに目を奪われ勝ちになります。

  飼育活動により、子どもの思いやりを培い、命を大事にする心を植えつけるために、まず、動物に親しませて、かわいいと思う気持ちを沸かせます。そのためには、獣医師の支援をえて「動物ふれあい教室・飼育導入授業」をすると良いでしょう。
子どもは動物の体と心を気遣いながら世話するうちに、やさしさや、思うやりの気持ちを養いますが、同時に生物への基礎知識を培うことができます。
その子自身の将来の子育てにも、良い影響を与えるでしょう。
なお、大人が動物を大事に扱う事は、その動物を気にしている子供の心を大事にする事だと思っていただきたいと思っています。

教師から見た問題点
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心を養う飼育の条件
 飼育には、愛情飼育、理科飼育、家畜飼育、展示飼育、それにレンタル飼育があります
幼児期から小学校中学年までに大事なのは愛情飼育です。人の土台を作る基本飼育です。

 理科飼育は教育過程に組み込まれています。

 家畜飼育は、魅力は大きいのですが、手間も知識も費用も掛かります。
 とても、学校だけの手には負えないでしょう。地域の農家、獣医大学、畜産大学の手助けなど
、地域の協力の度合いにより、行うもので、無理して行うべきで はありません。
また
 基本飼育が丁寧に学校で行われているなら、たまの農家への見学でも良いと思います。
なお、子供の情愛の対象は殺してはならないと言うのは、動物と子供の関係の鉄則です。
子どもは「ペットの親」になります。子どもを殺されて平気な親はいないでしょう。愛情飼育と家畜飼育を混同してはなりません。

 殺すことが予想される動物には、情愛を沸かさないように扱いに注意しましょう。

 基本飼育(愛情飼育・子どもと動物が情を通わす飼育)  
 世話の簡単な動物を、より身近に、
    死を迎えるまで、丁寧に飼う。 (頭数は多くする必要はない)
 継続が重要。
 手の回らない飼育は避ける。

この基本飼育で動物や生物への心情を介した認識で出来れば
他の 理科飼育、家畜飼育にも理解が深まる。

 学校では珍しい動物やきれいな動物を飼う必要はない。

まして、面倒な時に人に返したりするレンタル飼育は
責任と愛情を培うという日本の教育の基本を変える危険がある
と、文部科学省の指導方の言葉です。

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子どもたちが、安心して可愛がれるように飼育するには?  この2点を守れば、動物の傷病が減少するばかりではなく、掃除が楽になり、かつ飼育舎が不潔にならずに先生も子供たちと飼育を楽しむゆとりが出来ます。 しかし動物飼育の実際は、飼育の意味、動物の心情、生理習性への理解、衛生面の注意、動物との交流方法など奥深い理解が必要で、よほど経験のある教師でも 難しいでしょう。動物を良くわかっている専門家の助けが必要です。「可愛がってこそ、子どもを育てる動物たち」 この辺りの事は、「学 校飼育動物のすべて」に詳しく書きました。
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子供たちのために動物飼育を正 常化するには,専門家の助けが必要です
 実は、動物が死んだら新しい動物を入れるとの教育現場の伝統的な考えであったため、動物の治療費が現在まで予算化されていなかったのです。そのため全国 の多くの動物 病院では、子供たちや先生方が持ち込む傷病動物を見兼ねて、無料もしくは実費程度の診療費で診療してきました。 しかし、飼育そのものが改善しないまま治療しても動物の飼育状況は変わりませんでした。それで、全国の獣医師会は、自治体と協力して学校との交流と飼育への助言・支援を進めています。      

医師が診療費を負担してた1例
 今、各地の獣医師会が子供たちと動物たちのためにと自治体と協力して、小学校を訪問してふれあい指導や飼育舎への助言、
動物の治療などをして、かつ教育委員会主催の「先生方への講習会」に対応しています。平成17年10月現在の獣医師会と提携している自治体は112です。また次々と準備されています。
 なお、市区町村で数えると705自治体になっています。
全 国の自治体の獣医師会との連携の要約表 
代表的な自治体と獣医師会との連携詳細例                                                                                                                                                                           ページの先頭へ 
獣医師が学校訪問で助言・支援すると、こんな変化が…
 制度として獣医師が飼育指導を毎年学校内で行うため、その学校の個別の条件に合うやり方を検討しながら、校長、教頭先生方などの学校の管理者とも飼育動 物をめぐる問題点を話し合うことにより、動物を巡る環境は急速に改善して行きます。なお、訪問し調査した各校の結果を獣医師会が自治体行政に報告すること により、自治体行政、学校、獣医師の3者で問題点を確認でき改善法を検討できます。  
 毎年獣医師が学校を訪問して飼育指導している学校では、
 師が経験した「飼育動物が児童に良い影響をあらわした事例」の調査

 より動物が生活しやすい飼育舎にだんだんに改修し、また動物の飼育数を減らし、ゆとりのある動物飼育をしています。そして動物の様子がお かしい時、教師は気軽に獣医師に相談できるため、動物飼育が苦痛では無くなっています。また教師が自信を持って対処できるため子供の心を傷つけないで済み ます。
 飼育者が動物の病気の見つけ方や人への防疫法が解るようになり健康に気をつけるため、結果として動物から人への病気の予防が出来ます。  また獣医師は 同時に「動物とのふれあい法」を指導するため、教師と子供たちは動物の心を理解できるようになり、本当の意味で動物飼育が子供の教育に役立つようになりま す。 そして、何より動物飼育を楽しむことが出来るようになります。そして動物がクラスの子ども達の核となり、一緒の思いを持つ経験が出来ます。
獣医師との連携の有る地域の教師はどこでも「 とても助かる、楽になった。動物を可愛いと思えるようになった」と言って喜んでいます。

教育課程に飼育活動を入れている事例  
 同校の子どもの動物飼育に関する作文
実践実例
獣医師の支 援を得ている地域の学校と、支援の無い学校との飼育の実態と獣医師支援事業の評価に関する調査(抜粋
飼育指導マニュアル
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飼育の課題への対応法

  飼育舎
    校舎から離れていると、子どもから動物が遠い存在になるので、身近なところにつくりましょう。
    子どもの身近に動物がいると、気持ちをかけるようになります。

  狭い飼育舎 は自然ではないので、そこで快適な生活を営ませるためには、出産制限が必要です。 個別飼いにするか、手術、薬などで妊娠を防ぎます。去勢だけでは成功しません。正常なオスがまたどこからか来ると、すぐにすべてのメスが妊娠します。

 1種類1部屋がよいでしょ う。人とチンパンジーが形が似ているからと言って同じ部屋で生活できない事を、思ってください。
 
 ウサギは穴を掘るのが本能ということで飼育舎の床を土にすると 動物の数にもよるが、どうしても土がかびてくることが
多いし、ウサギが潜ってしましまって、こどもとスキンシップができないので、コンクリートの床にして、木製の2階建ての巣箱を
いれて欲しいです。 
掲示板の「土の床を考える」を読んでください。 飼育舎の構造

 ウサギの争い 
 ウサギは、最強のオスがメスを束ね て集団を作る動物で、大人のオス同士が仲良くくらすのはむづかしいのです。どうしてもライバルをやっつけるわけです。これはニワトリ類でも同じ事が言えま す。また、ウサギの傷は化膿しやすく治療も長くかかりますが、ウサギの抵抗力が無くなっているときは治らないときも有ります。けんかをさせないように飼育 する事が、肝心です。つまり複数のオスを1部屋で生活させないようにします。

 ニワトリのオス同士 
  性格上、ボスは1羽だけなので、 ライバルを殲滅するのです。さながら、プロレスのデスマッチのようです。ウサギと同じで、ニワトリもオスを1羽だけにして飼うと、トラブルは減ります。  仕方のない時は、せめて餌と水を2箇所にわけて置き弱いオスも食べられるようにしましょう。

 子どもとのふれあい
 可愛くない動物がどこで死のうと、子どもには何の関係もないため、命の大事さを伝えることができません。
 子どもが動物の健康を気遣いながら世話する内に、なつかれて、かわいくなると、動物に頼りにされる自分の価値に気付きます。
つまり自尊心を得て、周りの人とも自信をもってつきあえるようになります。
が、世話に手間がかかりすぎる飼育では、可愛いと思うゆとりができませんので、 

適正な飼育数を守り、掃除などの世話が直ぐにおわり、たっぷりのふれあいの時間がもてるようにしましょう。

 また、動物の気持ちを子どもたちに話してあげられる大人が必要です。
 ちょっと支援すると、子どもは動物と仲良くなり、とても良い効果を得られるでしょう。

土日の世話(保護者の教育参加) 

親子当番、
「命には休みがない。命から目を離してはいけない。」と、子どもに伝えるために、
休日も親子当番*で世話をしましょう。

子どもにとって、飼育は大事な教育活動と理解すると、保護者も手伝ってくれるようです。
そのような学校の先生は、子どもと一緒に飼育を楽しむゆとりが出来ています。先生は土日はお休みです。

* 総合的学習の時間に、飼育体験を位置づけて、生命観、勤勉さ、やさしさなどを養うとの目的をもって、3〜4年生全員の飼育体験を行うと、
当番はたまの事ですので、当番の子の親が付き添う親子当番を取り入れます。保護者の教育参加です。
 たまの当番ですから、負担はあまり無くしかも親子のふれあいが出来ると好評です。子どもが、自分の心配する小さな命のために手伝ってくれる親ごさんに感謝するようです。 中には当番の子が急病で先生が「先生がやるから心配しないで寝てなさい」と言ってくれたのに、子どもの代わりにお父さんが動物の世話をしたとの話しもあり ます。さぞかし子どもさんはお父さんに感謝したでしょう。動物を可愛がる子どもの気持ちを皆で大事にしていただいてます。

 クジャクや野生動物、あるいは世話が大変な動物を飼わない
  野生動物は 人になれず、大人になると触れなくなる場合が多いです。愛情飼育にはつかえませんので、
学校では選ばなくても良い種類ですし、病気の面からも不安材料が多く、また治療もままなりません。

また、 強い羽をもっている孔雀を学校で飼うのは無理といえ、実際 子どもを攻撃するようになる個体が多く見られます。
だれかが「孔雀をあげる」「野生動物を引き取ってくれ」と学校に頼んできても
「学校についている獣医師に禁止されている」と、お答えになったらいかがでしょう。
 

 また、動物を業者から借りて、休みには返還する。病気の時は治療に返し、死んだら新しい動物に変えてもらうなどのレンタル飼育をしている ところが見られ、関西で静かにかなり広まっています。しかし、これは愛情も責任も中途半端でしょう。弊害がしんぱいされ、文部省の専門官も、とんでもないことといっています。

レンタルについて (小学校が飼育動物をレンタルで賄っていることについて
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子どもと動物の心のふれあい

 府中のある小学校の校長先生は、校長室でジャンガリアンハムスターを飼育している。それを目当てにいつも児童が出入りして、ハムスターを 抱きながら校長先生と色々な話をしていく。

 教室でハムスターを飼っている学校で、低学年も高学年もそれぞれの付き合い方があり、児童は全員で「どうしたら動物が喜ぶ か」を、工夫しながら動物を大事にしている。また、1匹ハムスターがいることで、クラスがまとまることが良く見られている。同時に、今まで余り話さなかっ た子が動物のことを色々他の子に教え、はつらつとする事が見られる。
 すずめの雛を児童が拾い、獣医師の指導で育てたクラスではどの子もすずめの糞をすぐに片付けながら可愛がり、空に放すとき は送別の会を開いた。このときは皆の気持ちがひとつになり、とても楽しかった。いつまでも良い思いでになっている。
 大井町の小学校の1年生がクラスでウズラを飼育した。児童は、ウズラのためにさまざまの工夫をしながら、1年の間その抱き 心地や卵を楽しんだとの報告を担任の先生がしている。 また、児童の興味は、飼育だけに留まらず、残りの餌を野鳥が食べたことから野鳥の餌場を作り観察をしたり、糞をチューリップに播いてその成長の促進を観察 したりと、自然の営みにまで広がっていったとのことだった。
 田無市の中学校で背骨を折ったウサギを、先生がついた生徒達が動物病院に連れてきた。獣医師は、このウサギはもう歩けず排 泄も人がさせなければならないので、特定の飼い主がいてもとても世話が大変なの事を話した。彼女たちは覚悟をして出来るだけウサギを看護したが、ウサギは 日に日に痩せて弱り(筋肉の萎縮もあり、そう見えた) 肢を引きずるため皮も傷ついてきた。 後日、彼女たちは、自分たちの世話をしたいという欲望のため に却ってウサギを苦しめていると、獣医師に涙ながらに安楽死を頼んだ。
 彼らにとっては、つらい体験だったが皆で心を揺さぶられ、真剣に悩み結論を出した。得がたい経験をした。
保谷市の小学校でクラスで世話をしていたウサギの内1匹が、背骨を折って病気がちになった。子供達はみんなで排尿など世話 をたが2ヶ月ほどで死んでしまった。子供達は悲しくてし方が無く、先生はみんなに作文を書かせて気持ちを落ち着かせた。この子達のクラスは、変に冷めた子 がおらず落ち着いた優しい雰囲気が有ると先生のお話。  

*蕨市の中学校で、登校拒否気味の生徒がいたが、クラスで小鳥を飼いその子に世話を任せたら欠席しなくなった。その小鳥の籠を真中にはさん でいると担任と良い雰囲気で話が出来るようになった。
 他の地域の中学校教師からも「クラスに小鳥でも居れば、殺伐としたムードが軟らかくなる」と聞いている。

*徳島の高校で、荒れている生徒が居たが、ある教師が自分の愛犬を学校に連れてきていたのを見て、段々に近づいてきてその犬にブラシをかけ ながら教師に自分の家庭のことなどをこぼすようになった。それまでのツッパリがうそのようであった。

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