獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201212-94

Re3:犬猫の殺処分
投稿日 2012年12月10日(月)17時02分 投稿者 プロキオン

東京畜犬事件というのを ご存知でしょうか? 昭和40年代にあった犬を利殖の対象商品とした取引であって、子犬が産まれるとあらかじめ積んであった保証金(出資金に相当するお金)が、少しずつ返済されて、やがて利益が生まれるというネズミ講やマルチ商法の走りのような詐欺事件です。近年もこれと似たようなシステムの事件が肉牛で発生しております。
昭和41年から始まって、45年に読売新聞がこの事を掲載し、46年の社長逮捕までの間に、48億円の負債と被害を与えたとなっています。昭和54年に詐欺罪で7年の実刑判決がくだされましたが、最高裁で確定するのは、昭和63年まで待たなくてはなりませんでした。

なぜ、この事件を取り上げたかと申しますと、ちょうど日本が高度成長時代に突入し、各家庭で犬が飼育される機会が増えるのと重なっており、この東京畜犬という会社が血統書のついた犬の普及に大きく関与していたのと同時に、「野犬撲滅運動」を掲げていたことにも関わっています。
商品として、犬を取り扱っていたので、その仕入先ということで、国内のペット販売業者と競合すうるようになり、その多くをイギリスから輸入するに至りました。そして、昭和43年には、イギリスが全世界へ輸出する犬のうちの大半をこの会社が買い占めるまでになり、そのことが逆に、イギリスのドッグショー関係者や愛犬家の反発を生むに至りました、「日本に買われていった犬達は、虐待されたり、食べられたりしているのか?」と。
犬好きのイギリス人の間では、安く大量に犬を買い付けていくこの会社に不審を感じるのと伴に、当時の日本人への偏見もてつだって、このような風説が流布されるようになったのです。
そして、43年3月31日付けの日曜大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドというの一面記事で「日本人は犬を殺して、すき焼きにしている。」という扇動的な掲載となりました。
日本とイギリスの関係から当然、そのまま放置されていたわけではなく、在日英国大使館も事実解明に乗り出し、「そのような事実はない」と風説の打ち消しに動いてくれてましたし、王立獣医師協会元会長・イギリスケンネルクラブ理事であるジョン・ホッジマンが率いる調査団も来日して、記者会見で「日本人は大の犬好きで、わが国の犬は丁寧な扱いを受けていることがわかった。」と述べています。
けれども、ホッジマンが、日本に非難されるべき事実はなかったと報告しても、この風潮が改まるということはなく、同じく日曜大衆紙の「ザ・ピープル」が「日本は犬の地獄。人道の名において英国政府は犬の対日輸出禁止すべき。」という記事を掲載しています。
このザ・ピープルの記者は来日しての取材しているのですが、その取材対象が一般家庭ではなく、大学医学部の実験施設や野犬狩りや野犬の処分施設であった点は、むしろ意図的なものがあったのかもしれません。
いくら、政府やケンネルクラブが、輸出された犬が可愛がられていると発言しても、すでに犬の対日輸出頭数は、1月に1000頭にも達しており、利潤を得ている者の発言としての理解に留まってしまっていたのでしょう。と、同時に新聞が販売数を伸ばすには、それだけ購読してもらえる記事が必要でもあったわけです。この発行部数553万部の大衆紙の日本に対するキャンペーンは1ヶ月継続され、日本人が犬を虐待しているという意識を浸透させるのに多いに貢献したと言えます。

また、そこで取材された実験動物施設における犬の取り扱いというのについても、実はそれに先立つ昭和23年にイギリス人やアメリカ人の有志を中心に「日本動物愛護協会」として発足していました。
会の中心となったのは、駐日英国大使婦人等で、東大病院等の実験施設にいた犬達の世話に通うようになり、当初は煙たがられたりしたものの、薬剤や備品の提供を行って犬達の待遇改善に関わっていたのです。
そして、ここで重要なのは、日本人から見ると急進的な考え方をしていたこのグループの人達にしても、「動物を実験に使ってはならない」とか「犬を殺すな」ということは言っていなかったのです。彼女等が問題としていたのは、処分の方法であったわけで、東京都の野犬処分に「一酸化炭素」を提案したのは、当の英国大使婦人でしたし、薬殺用の薬品も彼女の斡旋でイギリスから無償提供されていたのです。
(もっとも、自治体が一民間機関からもらい物をしてはならないという厚生省からの指導で、後に中止されています。)

このようにして見ると、「ザ・ピープル」が日本の犬事情をとりあげた内容というのも、かなり偏ったものであって、本当の事が知りたいとか、事実を報道するという姿勢が貫かれていたのかはなはだ疑問な点があります。

イギリスの王立虐待防止協会では、その名称が相応しいか否かは別の話としても、野良犬や病弱犬を年間25万頭処分しており、犬の安楽死が協会の重要な仕事だった事実も有ります。また、1960年代には同協会が、処分した犬の遺体を業者に提供して、その毛皮をベルギーに輸出していたりもしていました。
1975年には、イギリスの南極探検隊が基地の閉鎖からエスキモー犬100頭あまりを銃殺や薬剤による安楽死処分しています。この時の理由も「経済的理由」とされていますが、この事自体は欧米では非難の対象とはされておりません。

日本では、自らが生き物の命を絶つ行為を忌避する傾向があって、不用となった犬や猫を山野に遺棄することが選択されがちですが、欧米では、遺棄によって動物に飢餓や苦痛を与えることが虐待になるのです。
「ノアの洪水」の後、エホバから動物を管理する権限を得た欧米人にとっては、殺す事は虐待ではなく人間の管理の一端に相当するわけです。また、そうしないと、牛でも豚でも食料とすることが罪となってしまうわけです。だからこそ、種を滅亡させるとか、苦しめて殺すという行為こそ非難される行為と写るわけなのです。

ですから、最初の投稿の頭にある20万頭の殺処分というのは、欧米人が非難しているという事は、むしろおかしな話であって、処分頭数が非難の対象であるのなら、むしろ日本を非難できるほどの謂れをもっていようはずがなく、ある種の意図をもって語られている話にすぎないのではないかと思います。
動物愛護法の前身となる動物管理法が成立する当時においても、海外から関係する団体に資金提供があったことも知られていますが、昨今では、シーシェパードが日本の捕鯨活動の急進的な反対活動で知られています。この団体も過激な活動をすればするほど、資金獲得が容易となっています。「クジラやイルカは、小学生と同等の知能を有している動物だから殺してはならない」と言いますが、では、どこの誰がそのような事を事実として確認したのでしょうか? どのような試験・研究がなされているのでしょうか? 実際には、「クジラやイルカは利口だから、このくらいの知能はあるのではないだろうか」と誰かが言い出しただけの話しに過ぎません。それでも、根拠がなくても、この話を持ち出すと、反捕鯨運動は勢いづきますし、日本を攻撃するほど、寄付が集まります。

欧米人同士の話としても、10何年か前、アメリカのある州でアメリカバイソンの大量の射殺が計画されました。
バイソンの間でブルセラ病が流行し、感染したバイソンが州境界を越えて侵入してくると牧畜業に大打撃を与える恐れがあったからです。この計画が発表されると国内はもとよりヨーロッパからも非難の声が相次いで届きました。その時に、知事は「アメリカバイソンがどのくらい貴重な動物なのか、いまさら教えてもらわなくても結構。」と計画を実行に移し銃殺されるバイソンが出ました。抗議を寄せる人々にしてみれば、自治体が バイソンの貴重性を認識していないから、そのような計画をしているのだろう。ここは一つ、教えてあげなければと自治体を一段低く見ていたことが、かえって知事の反感を買ってしまったのです。ブルセラ病の病勢と牧畜に携わる者を守ることを考えれば、自ずととるべき道は最初から限られています。

感情に訴えて、多くの人間を扇動して利用しようとする動きこそが、私からするといかがわしく感じます。どのような裏があってのことかと勘ぐらざるをえなくなるのです。
犬の処分頭数というのは、相当に減少しているのですから、この上、何を意図しているのかと考えざるを得ないのです。処分方法も、銃殺にでも変更すれば良いのでしょうか?
そうすれば、日本は非難されないのでしょうか? そんな事をしても、決してなくならないのではないかと思うのです。そういう処分の現場にいる人達のことを考えると、私は、とても気の毒になります。
責められるべきは、動物を捨てていく人間であるべきだと思いませんか?

# この投稿に記載されている内容の多くは、東京畜犬事件のルポに相当する文芸春秋社発行の書籍を参考とさせていただいております。
この会社が活動を始めた当初は、私は小学生でしたし、大学に入学できた頃には、すでに詳細を知ることが出来る時期は過ぎておりましたので、直接見聞きできたわけではありません。ただ、この会社の活動と日本へのバッシングが時期的そして内容的に連動していたようであり、背景として参考となる事項が記載されておりましたので、知っていただきたいと考えました。

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