獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201601-53

Re2:メス7歳、糖尿病の猫について
投稿日 2016年3月27日(日)12時40分 投稿者 プロキオン

投稿を拝読して、思い当たる事柄どころか、これこそが猫の糖尿病の特徴ではないかと思います。

猫は単独で狩りをする肉食獣ですから、空腹や絶食が続いたからといって簡単に低血糖状態に陥ってしまうと、それこそ狩りそのものができなくなって餓死しかねません。
そのために空腹状態が続いていても、生理的に血糖値が容易にさがらないようになっています。つまり、1回のインスリン投与において目的とする血糖値にまで下降させることがむずかしいのです。血糖値が下がらないからといって、インスリンの投与単位をどんどん増やし続けていくと、いきなり低血糖が出現して危険な状態となりかねません。
したがって、余程の緊急時でないかぎり低単位を我慢して継続しなくてはなりません。使用するインスリンのタイプと最大効果発現時間を念頭に血糖値を測定して、インスリンの単位を調節していく必要があるのです。
この必要単位数が決まるまでに、そこそこの時間がかかるのです。

また、血糖値にばらつきができる可能性としては、これも猫の特性として興奮時にインスリンの消費量が増えたり、インスリン注射が皮下脂肪内や皮下に停滞していたりして、正しく筋肉注射になっていなかったり、インスリンの取り扱いで失活していたりというようなことが起きている可能性も考慮しなくてはなりません。
投稿にありましたように患者は雌猫ですので、副腎ホルモンだけでなく、卵胞ホルモンの影響も考えられますし、避妊済みであれば先に挙げたように皮下脂肪の影響も考慮される必要はあるでしょう。
食事内容や食餌時間以外にも猫の糖尿病なら、なんだってありと言えます。考えもつかないような事が、障害となりえるのです。
ケトン体まで出現していたのであれば、KやNa値の補整や水分調整も必要でしょうし、どこかで何か1つがということで、思い通りにはいかないことがしばしばなのです。

通常の猫の糖尿病であれば、1〜3単位で目標とする血糖値も200mg少々というところではないでしょうか? これは下げすぎると突然危険な低血糖が出現するからです。この血糖値については、さまざまな意見があって各々の先生によって目標値が異なるとは思います。
同じ単位数でも、測定値が安定せず、原因が分からない事が多いので、その分安全域をどのくらい見込むかということにつきます。

また、症例の中には5単位を超えて、インスリンを必要とする症例もあるわけなのですが、このような場合にインスリン耐性があるのなら、単位数に拘るわけにもいきませんし、その分、血糖値のコントロールはさらにむずかしくなります。

私は、セミナーで糖尿病の治療は血糖値を正常範囲に戻すことではなく、日常生活を支障のない範囲で過ごせるようにすることだと教わりました。
実際にやってみれば、相手は機械ではなく生き物であって、患者本人が意図しないところで血糖値の変動が見られます。いたずらに攻める治療ではなく、安定した日常生活を支えるということで事故を回避するというが大切なのです。

実は、ある猫の飼い主さんから聞かされた話なのですが、飼育していた猫が糖尿病と診断されて、インスリンを投与されたのですが、その猫が翌日には死亡してしまったのだそうです。
診断は正しかったのか、投与されたインスリンの種類と投与単位はどうであったのかと考えることは多々ありますが、結論とすれば、猫が死んでしまったという事実しか残りません。
その飼い主さんにしても、ネットで色々調べて、やはりインスリンがいけなかったのではないかと思い、インスリン投与には、このようなことが多いのかという点を確認したかったのだそうです。

猫の糖尿病が相手であれば、あせらない・我慢する・血糖値に振り回されないが大切ではないかと思います。

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