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初恋      


2006年 日本 青春・ロマンス・犯罪   

<監督>塙幸成
<キャスト>宮崎あおい , 小出恵介 , 柄本佑 , 青木崇高

<ストーリー>
1960年代後半。高校生のみすず(宮崎あおい)は孤独だった。幼い頃、母親に捨てられた彼女は、引き取られた叔母の家に帰るのがいやで、毎日、新宿のジャズ喫茶Bの前にたたずんでいた。店の中に招き入れられたみすずは、そこに、幼い頃に別れた兄(宮崎将)の姿を確認する。そして、Bに入り浸るようになるのだった・・・。

<感想>
あの「三億円事件」の犯人は、女子高生だった!という、衝撃の推理を元に、作られた物語です。
そして、孤独な少女、みすずの初恋物語でもありました。

家でも学校でも寡黙で、暗い目をしたみすずが、離れて暮らす兄の仲間が集まるジャズ喫茶の中に、ようやく自分の居場所を見つける。
高校生から見た大学生や、働く人って、とっても大人に見えるはずなのに、その中にいて、落ち着ける彼女は、ずいぶん大人びて見えました。それなのに、「大人になんかなりたくない」というのは、どういったことなんでしょう・・・?
この時代は、学生運動が盛んに行われ、社会や大学を相手に、若者が闘争している時代でした。だから、若者は、大人=権力として反発していたわけで、みすずも、そういう意味で、”大人の側”になりたくないと言ったのかもしれません。
私なんかはむしろ逆に、早く大人になりたかった。早く自分で自分のことを決められる年齢になりたかったので、彼女の言葉が、すぐには、理解しがたかったです。

映画の解説を読んだり、ネットで調べたりすると、どうも、この映画の原作「初恋」は、著者の中原みすずさんの自叙伝のようなもののようです。その真偽は、分かりませんが、主演の宮崎あおいさんは、著者に会って、これこそが真実だと感じたそうです。
なるほど、犯人の似顔絵は、細面で、女性と見えないこともないですが、どうなんでしょうか。

映画自体は、暗いイメージに終始し、みすず意外の人物像が希薄なので、”面白い映画”ではなかったですが、強奪シーンは、なんだかリアルで、見入ってしまいました。
そして、なにより、宮崎あおいの演技がよかったです。暗い目をしたみすずが、明るい笑顔を見せてくれると、ホッとしましたし、バイクで颯爽と走る姿も、やっと自分の生を実感出来たかのように生き生きと見えました。ただ、ラストは、淡い初雪のように美化されすぎているような気もしましたが・・・。

登場人物は、それぞれモデル(芥川賞作家、大物政治家の息子)が実際にいるそうで、そんなことも、この架空の話をリアルに見せているところでしょうか。(2008,03,30)



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