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「告白」
湊かなえ  





我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。 (内容紹介より)



第29回小説推理新人賞を受賞した作品です。受賞したのは、第一章の「聖職者」だそうで、とても印象深い、作品でした。第六章まであるのですが、それぞれ別個の短編かなと思っていたら、連作になっていて、より深い作品となっています。

ひとつの事件について、各章で、それぞれ違う立場の人物が、独白しています。
なんと言っても、第一章の先生の「告白」が、強烈な印象を投げかけます。
起こってしまった事件の、隠された真実に対する驚きもあるし、先生の気持ちも分かる。しかし、その後の先生の行動に、より強い衝撃を受けました。

この第一章「聖職者」だけでも、すごいのに、その後の、各人の告白も、また、強烈です。

最初は、ちょっとしたボタンの掛け違いが、徐々に大きくなって、大変な事件が起きてしまうのですが、それぞれの心理を丁寧になぞっているので、彼らの気持ちが、分かるような気がしますが、でも、どうしてそこまで・・・という思いもわいてきます。

悲しく、切なく、悲惨で、重い。
救いがなくて、読み終わってからは、しばらくどんよりしてしまいますが、ここまで人を憎めたら、ある意味、いさぎいいのかもしれないなんて思ったりもしてしまいました。 (2008,11,16)



映画「告白」