獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200611-168

re: 人工授精や凍結精子の希釈液?
投稿日 2006年11月28日(火)12時19分 投稿者 プロキオン

このお話には、あまり振り回されない方がよろしいでしょう。とういのは、犬においては、「人工授精」という行為が信用されていないからです。

精液を希釈して人工授精を実施するということは、1頭の雄が多くの雌に対して受胎させることができるところに利点の1つがあるのですが、凍結精液を用いれば、「時」「場所」「相性」を選ぶ必要がなくなるので、より利便性が増すのですが、この利点は逆にストローに入った精液が本当に希望している雄犬のものであるという保証がないという問題とも直結しています。
家畜の方であれば、種雄牛の飼育も凍結精液も旧家畜改良事業団が実施していますので、精液の検査や処理においては、信用が保証されています。
犬の場合ですと、精液の検査は実施されていませんし、希釈濃度もわかっていないはずです。もとより、個人がやっていることなので、公の信頼性がなく、実際の世界でも、テレビのサスペンス番組のネタでも、「犬の凍結精液」にまつわる怪しげな話がとりあげられるくらいです。そのため、犬の登録団体でも親子判定に困るので、自然交配が基本とされています。
# 子や孫の世代になってから、祖父や曽祖父が後から生まれても血統書を発行すする方としては、困りますよね。凍結精液となると、10代でも20代でも、いっきょに時間を飛び越えてしまうので、物凄く不自然なこととなります。

牛であれば、1回の精液量が5mlとしても、15倍の希釈で、1回の注入量が1mlと
して、75頭の雌牛に人工授精が可能です。1年間に150回の精液採取を実施したとして11250頭の雌に使用できることとなります。
この希釈率も、馬では5倍、めん山羊で10倍、豚で4倍とされています。動物によって妊娠させるのにたる精子の数に相違があるからですし、個体による精液量・濃度・イオン
PHにも違いがあります。
採取した精液の検査や取り扱いが、無菌的に実施されていないと精子も殺してしまいますし、死んだ精子と細菌をいっしょに雌の子宮内に注入してしまうわけにもいかないのです。獣医師がかかわっていたとしても無菌室や無菌操作を犬に対して行っているというのはないように思います。

また、精子の希釈液は、緩衝液であり、栄養液でありという性格が必要であって、外界からの感作とくに温度感作から精子を保護し、その授精力を延長させるものである必要があります。また、細菌感染を防ぐために微量の抗生物質も添加されるようです。
その組成は燐酸緩衝液がベースとなっていて、これに卵黄クエン酸やグリセリン類が入ってきます。

実際にブリーダー間で行われている人工授精と称される行為は、相性のあわない雄雌や一度の複数の雌犬に交配させるときに実施されているように聞きます。
この場合は、雄犬の精液を生理的食塩水やブドウ糖液で希釈して、注射シリンジで雌犬の膣内に注入するというものであって、本来の人工授精とは異なり、「人工交配」と呼ぶべきものです。
こちらの受胎率は、あまりよろしくありません。その理由についての質問が犬BBSの方でありましたので、そちらに書いてあります。
11月15日付け「re: 人工授精について」です。

人工授精という行為は、人間が対象であれば、医療行為となりますが、家畜が対象の場合は必ずしも獣医療行為ではありません。県の実施する試験を受けて免許を発行されている「家畜人工授精師」が存在するからです。
こちらの場合も、牛とか豚とか、動物の種類を限定して免許を発行しますので、「犬」を対象とした免許は発行されていないはずですので、ブリーダーが実施しているのであれば、2つの職種にまたがって、抵触していそうですね。
凍結精液の希釈液というものは、市販はされていても、凍結精液を製造する機関でないと必要のないものです。そういうものを持っているということがすでに話として変ですね。

馬とか犬の世界では、種雄はそれこそチャンピオンですから、交配にかかる金額はかなりのものとなります。それゆえ、精液のすり替えができないように「本交配」という目に見えるハッキリとした形が雌畜側の希望となります。
犬で凍結精液という話になると、この保証がないことになりますので、常に疑ってかかられることになります。( 目の前で精液を採取して、そのまま注入したのであれば、まだしもですが。 )
凍結精液の保存には、液体窒素が必要です。この液体窒素の充填されたボンベにも1月に一回くらいの定期的な補充が必要ですから、それなりの手間暇はかかりますし、目にもつきますね。

付記:牛における人工授精は、トリコモナス病やビブリオ病の自然交配による蔓延を防止   する目的から国の政策として協力に推進され、雄畜の保有が制限されたことが背景   としてあります。凍結精液の供給も管理されています。

http://www.vets.ne.jp/log/search/data/1100/files/20061115120222.html

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