獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200402-8

>シゲさん
投稿日 2004年2月3日(火)17時17分 プロキオン

過誤腫は、細胞の形態は異常ではありません。正常な細胞がたくさん集まって
全体として大きくなっているだけですので、「新生物」としての腫瘍とは同じ
扱いにする必要は無いということです。

また、陰睾の場合、腹腔内の精巣は大抵腎臓から膀胱や鼠経部の間のどこかに
あるわけなんですが、精巣が小さいうちは、これの摘出には腹部切開を大きく
しなくてはなりません。
大きな傷をつくってお腹の中を捜しまわるよりも、精巣がある程度の大きさに
なってからの方が犬も術者も負担が少なくて済むように考えます。
過誤腫であるなら、一刻を争って手術を急ぐ必要はないし、時期をみての手術
で良いし、手術をしないという選択があっても良いのです。

また、実際に腫瘍化する症例においても、ある日いきなり腫瘍化していたとい
うのではなく、その前の段階があります。何も気に止めていなかったというの
ではなく、「陰睾」の犬であれば、腫瘍化する可能性があることは概ね誰かし
らから耳にしている事が多いはずなのです。
飼い主さんにしてみれば、手術の適応の検討や犬を観察している時間はあるよ
うに考えています。


ホルモン注射による精巣の下降処置は、「意見交換」の方でもたびたび目にし
ますが、2つの問題があります。
1つは、相談者の犬の月齢です。大抵のケースがホルモンの処置による効果が
期待できない月齢になっています。
2つ目は、遺伝の問題です。陰睾の犬を繁殖に供しても良いのかという点です。
精巣を下降させても繁殖に供さなければよいだけなのですが、逆に繁殖に供す
る意図がなければ、去勢してもよいわけで、知らないうちに近所の雌犬と交尾
してしまったということがないようには、手術しておいた方がよいと考えます

福ママさんのところの犬は、おそらく雌を妊娠させることはなかろうという前
提あっての上で、書いておりますよ。

ホルモン処置によって下降した精巣は、体温による雌性細胞の活性化(部分的
に精子を除いた雄性細胞の活性化)を避けることができますから、体内に存在
した時程の腫瘍化の可能性はないはずです。
雄として、繁殖に供しても良いかの問題は残りますが、私達にできるのは、去
勢の推奨までですね。決定権はあくまでも飼い主さんにあります。

福ママさんの犬のケースでは、陰茎の状態がありますので、このままその都度
正しい位置に戻してあげるか、外科的な処置をとるか、なのです。
情報として提示するのであれば、「腫瘍化するかもしれないが、しないかもし
れない」という両方を知らせる必要があります。
この点がインフォームドコンセントのおかしなところです。各々の可能性が何
パーセントとはっきり言えれば良いのですが、統計は統計、患者自身のデータ
ではありません。獣医師にとってみれば、いくらでも飼い主さんの気持ちを誘
導することはできるでしょう。この点を私は否定しません。
もし、それが許されるとするなら、飼い主さんと患者のことを他の誰よりも考
えているという自負が持てるまで、おつきあいする事だと考えます。

逆に、飼い主さんには、やっぱり勉強して欲しいと思います。変な理屈で言い
包められたり、すべておまかせであっては欲しくないです。おかしいと感じる
ことは質問できる飼い主さんであって欲しいと思います。
そこから先は、個々の症例の中で検討されていくべきなのです。飼い主さんの
気持ちもあるでしょし、主治医の先生の考えも有るでしょうしね。

飼い主さんとして、どうしなくてはならないというつもりで書いているわけで
はありません。





なのですが、

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