獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200501-40

Re:大型犬への対処法
投稿日 2005年1月17日(月)14時55分 投稿者 パールちゃん

かりんとさんの取った行動は正解だったと思いますよ。
それは相手が大型犬でなく小型犬の場合でも、
複数vs複数のときだけでなく、1匹vs1匹または1匹vs複数のときでも同じ。
とにかく双方を興奮させないことが第一。
犬の心理を抑制することができれば実力行使(噛みつき)はたいてい回避できます。
かりんとさんの「待て」の声は、発声もタイミングもドンピシャに適切だったんでしょうね。
ベンチで待っていたのも正しい選択だったといえます。
「向こうから犬が来るみたいだけど、あれれ?飼い主はリラックスしているぞ」、
コーギーたちはきっとそう思ったことでしょう。
もしその場で仁王立ちのままリードをピンと張って待ち構えていたとしたら、
警戒せよ!いざとなったら闘うんだぞ!のサインを
コーギーたちに送ることになってしまっていたでしょう。

噛みつきに至るまでの犬の心理は、「警戒〜威嚇〜攻撃」というのが基本です。

「警戒」は、相手の力量を探ったり相手の出方を推測したりする段階です。
犬は緊張し、四肢を突っ張ってシャキッと立ち、耳は相手に向けます。
この段階でいかにピリピリした緊張をゆるめてやれるかで、
次の心理段階である「威嚇」に移ることは避けられます。
犬が警戒しているときに飼い主が大きな声を出したりバタバタ動いたりすると、
「あ、飼い主がうろたえている。これはまずい」と犬は劣位の感情をもちます。
自分の身を守るため、また飼い主を守るために、
自分を強く見せようとウ〜とうなったり牙を見せたりして虚勢をはります。
これが威嚇です。
一度ウ〜と言い出すとそれを止めるのはかなり大変です。
極妻発声の「こらっ!!!」がまったく効果のないこともあります。
人が大声を出したり、リードをグイッと引っ張ったりすると
犬は応援されたと思ってますます興奮を高めてしまうことがあるからです。
つまり、威嚇が始まると飼い主のできることは非常にせばめられてしまいます。
威嚇したほうも威嚇されたほうも、もう後には引けない状況になりますから。
ですので、威嚇に移る前の警戒の段階で犬を抑制することが大切です。

犬同士とはおもしろいもので、出会った双方が両方とも警戒はしても、
どちらか一方が威嚇さえしなければ攻撃スイッチに火がつくことは少ないのです。
しかし、パニックになった飼い主の多くは、
犬に攻撃命令を出してしまうような間違った態度を取ってしまうことが多いんです。
うろたえて「こら〜!ダメ〜!」と中途半端な大声を出したり、
リードを強く張りすぎて自分の緊張を犬に伝えてしまうことは、
ヤバイぞ、やられる前にやってしまえ!それ行け!のサインになってしまいます。
はたのさんの書かれたマルチーズの『リードを手から離してしまった飼い主』は、
モロに「それ行け!闘え!」のサインを送ってしまったことになります。
しかし、小さなマルチーズは戦意をもっていなかったでしょうし、
仮に戦意をもっていたとしても相手がエアデールテリアでは結果は明白。。。
はたのさんがいなかったらマルチーズはどうなっていたことやら。。。

相手からの攻撃を受けないためには、
そっと逃げるのも、極妻発声をするのも、高く抱き上げるのも、
それなりに効果のあることはあります。
しかし、これはよほどうまくやらないとリスクが大きくなります。
犬は逃げるものを追う習性がありますから、背を向けて走って逃げるのは禁物です。
極妻発声は渾身の気合いを込めたドス声を一発でキメる必要があります。
ワーワーキャーキャーは逆効果です。
「気合いだ!!」の一声ならいいけれど、「気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜気合いだ〜」10連発だと途中で噛まれます(笑)。
噛まれないためにと愛犬を高く抱き上げるのは、
相手の犬がすでに攻撃モードに入ってしまっているときは危険です。
高い位置に置かれた犬は心理的に強気になってますます興奮しますし、
下にいる犬は抱き上げている人を狙ってきます。
致命的なダメージを追わせるくらい本気で足蹴りにしないと相手の犬はひるみません。
なかなかできることじゃないです、牙vs足で犬に勝つのは。
足を噛み裂かれて倒れるのがオチです。

長くなってしまいましたが、、、、、
突然の出会いをなるべく避けること、
出会ってしまったときは戦意を芽生えさせないこと、
闘いになってしまったら相手がどうなろうが必ず勝つこと、
これが自分の犬の身体的ダメージを軽くする方法です。
闘わずに引き下がることは心理的ダメージは大きい場合がありますけどね。
ノーリードにしないことを相手飼い主に強く求めることを忘れずに。
そうでないと事故は必ずいつか起こります。

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