獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200605-65

りんママさん
投稿日 2006年5月21日(日)21時34分 投稿者 はたの

なんか腐してばっかりで恐縮なんですが。

 「原種に近いと言われている」が、「古いイヌの遺伝子をよく保持している」なのか、「見た目、古いイヌはこうだったのだろうなあと似ている」のかによって、意味はずいぶん違うでしょう。
 カナーンドッグは第一に、あんなホットな地域の産ですから、前近代までぐちゃぐちゃに各地のイヌが移入されたことは想定できます。第二に、民族の遺産として作業犬としても有能にという矛盾する改良が施されましたから・・・
 カロライナドッグは、歴史レベルとしてはむろん貴重でしょうが、スペイン人が連れて行ったいわゆる洋犬の血が少なからず入っているはず、というか、そっちに重心があるぐらいかもしれません。すごく主観的なハナシになりますが、同じ「大きめの立ち耳」であっても、垂れ耳の血が薄まって立ったものと、元々の立ち耳が暑さへの適応で大きくなったのとの差というか・・・
 残る二つはより古い血を伝えているとは思いますが、歴史時代、つまり物事が書かれて記録されるようになったのが比較的新しい、ということもあるわけで。何で読んだのか失念しましたが、オーストラロイドが彼の地に分布を広げたときに帯同したわけではなく、後から入っていったものだろうという説を読んだ覚えもあります。
 
 同程度かそれ以上に、南アジアのストリートドッグにも注目すべき点があるように思います。
 新大陸は大航海時代の影響が強い、アフリカも植民地化された影響が強い、日本は御維新と敗戦、韓国は対中国の視線と戦争(民族の誇りを掛けた復元はしているようですが)、イスラム圏は対イヌ偏見が強い、中国中央は文革その他の影響が、インドも英国支配が・・・なわけですが、インド東部からマレー半島の付け根、中国南部、ネパール、ブータン、というあたりの、夏緑林体およびその周辺地域は、比較的外乱の影響が弱く(在地の文化がオーストラリア・ニューギニアより強かったので相対的に、というのも含め)、かつ、イヌに対して強い淘汰圧が加わったようではなく、気候的にも比較的(シベリアとかと比べて、ですが)イヌが最古に家畜化されたであろう地中海東岸〜イラク・イランあたりにかけてに近いので。
 あとは、「すでにエジプトあたりで一次的な改良された後」のものになりますが、地中海の島嶼のイヌも気になります。

 「外」との接点ができれば研究も進みますが擾乱も進むので、そこは競争ですねえ。

 地元なので応援したいのはやまやまなのですが、地域上げての保存運動が軌道に乗り、頭数が増えるのに合わせてたった十数年で変質してきた(頬に飾り毛がある半長毛、耳も緩く、幅広く、目は丸く)川上犬なんかを見ていると、よっほど厳しく、意地っ張りなキーパーソンに一任するぐらいの覚悟がないと・・・

 うちの近くでは、「復元」ものとはいえ、キツネ顔の柴保っぽい柴もそれなりに見ます。復元ではあってもタヌキ顔に席巻されるよりはマシだろうと思っています。

 イヌに限らず、「科学」というのは腑分けしていくツールであって、統合は苦手ですから。学際の重要性が言われはじめてからずいぶんたちますが、成果はなきに等しい。イヌの遺伝学と人類学、という狭い範囲に限らず、サイエンス全体を巻き込むぐらいのスケールでの革命(その後はおそらく今の科学とおなじような科学は成り立たないはず)が起きない限り、「全体として」解釈するのは難しいのだろうと考えています。CNSとかインパクトファクターとかが研究者のプライオリティである限り、パラダイムシフトは望めません。現代思想の分野でも、ポスト構造主義とはいわれますが、では何が次代を担うのかは・・・
 おそらく我々が生きている間には間に合いませんが、数世紀のうちにはなんとかなるかな?
 その「革命」までの間は、個々の突出したセンスが少しずつ風穴をあける試みをしていくのを見る、程度になるのではないでしょうか? 

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