獣医師広報板ニュース

動物看護師掲示板過去発言No.7000-200202-1

悩める獣医師・看護士さん達へ
投稿日 2002年2月1日(金)00時11分 シッポナ

この問題のきっかけをつくってしまったシッポナです。
皆さんからの投稿を読み、私だけではないんだ・・・と、改めて感じ、同じ気持ちを持っているということが嬉しくもあり、悲しくもあります。
オペをした野良猫さんは、次の日の朝からエサをバクバク食べ、いつものように仰向けになって首を「ウニャン」と傾げて眠っています。撫でてあげると私の手を抱え込んで顔をすり寄せてきます。
野良猫さんには珍しく、甘え上手な子です。だから余計に、数ヶ月後、元気に歩けるようになったら・・・と考えてしまいます。ウチの獣医師は「もと居た所に放してくれば、なんとか生活できるでしょ」と言っていますが・・・
今までも人間に甘えて食べ物をもらっていたんですから、そう割り切ってしまえば・・・とも思います。でも、数ヶ月間、何不自由ない生活を味合わせて、「はい、さようなら」って放してしまうのは、どうなんだろう?それってものすごく無責任なんじゃない?と思っていました。
しかし、ウチの病院で寿命を迎えるまで面倒を見てあげられるのか?私1人で世話をして行くには限界があるし、今居る院内猫達とは、とうてい仲良くできそうにありません。
だからといって、家に連れて帰り飼ってあげられるのか?となると、先住猫達が反対するだろうし、今までにも私が仔猫を連れて帰ると、ストレスいっぱいでご飯も食べなくなり、トイレも我慢してしまう子達でした。
じゃぁ、どうすることがいちばんこの子の為なのか・・・結局、答えは出ないままで居ます。
私が関わっている子達は、すべて捨て猫、置き去り飼い猫、道端事故猫、です。我が家の子達は帰宅後、遊んであげたり、抱っこしてあげたり、一緒に眠ったりできますが、病院の子達は、仕事もあるのでそんなわけにも行かず、朝ケージから出して診察室以外の場所で寝たり遊んだり、昼間は待合いで日向ぼっこ、夜帰るときにはケージに入れる、そんな生活の繰り返しです。
生きて、エサを食べ、走り回り、いっぱい眠って、たまに優しい手で撫でてもらえる、そんな生活で本当に幸せなんだろうか?と思ったりもします。
でも、寒空の中お腹を空かして、人間に甘えようと思っても追い払われ、仕方なく腐った生ゴミや、スズメ・ネズミなどを捕まえて空腹を満たし、たった数年で命尽きてしまう・・・そんな生活をしている子達には、院内猫の生活は天国に思えるのかも知れません。
ケージの中だけで生活している子達も、私達が「可哀想・・・」と不憫に思ってしまうだけで、もしかしたら「別にこの生活で満足だけど・・・」と思っているのかも知れない。いや、でもそんなはずはない。猫として生まれてきて、外の風の匂い、走ったときの土の感触、人間の温かい手、そんな体験をしたいに決まっている・・・。いや・・・でも・・・
考えても考えても、きっと答えは出ないんだと思います。私は野良猫さんを安楽死しようと思っていました。「安楽死してください」と言われてからの2日間、本当にするつもりでした。だから毎日美味しいエサをたくさん食べさせ、これが最後のエサになるかも、これが最後の温もりになるかも、と考えては涙をこぼしていました。
安楽死をしても、誰からも責められることはなかったでしょう。「だって、仕方ないでしょ」で済まされる問題だったと思います。でも、私の気持ちは、心の中では、「本当に仕方ないの?どうにもできないの?何とかしてあげられるんじゃない?」という言葉を、誰かが言っていたんです。誰か・・・と言っても、私自身ですが。
院内が居るから入院の部屋が取れない、などと言われないように、入院が増えたりしたら、その間だけでも家に連れて帰ったりしていました。院内が居ることで患者さん達に迷惑が掛からないよう、ものすごく気を使ってきたつもりです。院内の数匹は、受付で患者さんを可愛く迎えてくれて、その子に会いに来てくれる方もいます。
私自身も、この子達が居るから仕事をこなしていけるんだと思っています。辛くても、悲しくても、痛くても、院内たちにグチって、癒されて、ここまで頑張って来れました。決してマイナスな面はありませんでした。でも・・・・だからといって、これからずっとこんな事が続いたら、必ず限界が来てしまいます。
猫さん達の生きる力を信じて、避妊去勢を済ませ、放してしまうことは、どうなんでしょうか?運のいい子は優しい飼い主さんと巡り会えるかも知れないし、エサをくれる人を見つけるかも知れない、何不自由ない幸せな生活があるかもしれない。こればかりはやってみないと分からないし、放した後の生活を知ることはできないような気がします。
これは本当の無責任になってしまうのかも知れませんが、「幸せに暮らしていける!」と信じて「ごめんね」と謝って、生活して行かれそうな場所に放してあげるのも、1つの愛情なのかも知れません。看護士として、してはいけないことなのかも知れませんが・・・・
結局は、周りから責められるから・・・とか、そうゆう問題ではなく、もしかしたら自分自身の気持ちが、許すか許さないか、なのかもしれません。周りが何と言おうと、私が「これでいいんだ!」と思って実行したことなら、それが正しいのかも知れません。
「これでいいんだ!」と思うところまでが、長い道のりなんですけど。目の前にいる野良猫さんにとって「これでいいんだ!」って思えるのは、どんな事なんでしょう。まだまだ自分に問い続けなくてはならないようです。長文、失礼いたしました。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

サポーター:日本ベェツ・グループ 三鷹獣医科グループ&新座獣医科グループ 小宮山典寛様のリンクバナー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。