獣医師広報板ニュース

動物看護師掲示板過去発言No.7000-200202-4

今、目の前にある命・・・
投稿日 2002年2月1日(金)23時50分 シッポナ

動物病院で看護士を続けて十数年、動物を飼っている飼い主さんはみなさん同じ考えを持っていると思っていましたが、人間1人1人、まったく考えが違っています。
もちろん、私の考え、獣医師の考え、飼い主さんの考え、どれが正解でどれが間違っているのか、と聞かれると、ハッキリとした答えを出すことはできません。飼い主さんの「考え」や「意識」を変えることは不可能に近いんです。
ヨレヨレになった仔猫を拾って「可哀想に、幸せになろうね」と大事に大事に育てた飼い主さんも、外出自由で飼っているにもかかわらず、メス猫は避妊手術をしますが、オス猫には手術をしない方が圧倒的に多いんです。「メスだけでは子供はできないのよ、オスがいるから、交尾をするから、可哀想な野良猫が増えるのよ」と何度言ったことか。
そのオス猫さんをお預かりや入院で病院に置いている数日間に、何度も去勢手術をしてしまおう!!と思いました。しかし、患者さんの猫、人の猫にはどうやっても手を出せないんです。あちこちで交尾をし、引き取り手のない猫をガンガン増やしているとしても、その猫が目の前にいても、何もできないんです。
そんな飼い主さんのお考えは様々で「オスはそのうち帰ってこなくなるから、お金は掛けないの」「お父さんがタマを取ったら可愛そうって言うんです」「よそで子供を作っても、ウチに連れてこなければいいの」「仔猫が産まれたら先生の所で飼って〜、10匹も20匹も一緒でしょ」信じられないかも知れませんが、こんな話を笑い飛ばしながら言ってくれます。
落ちている仔猫を可哀想に思い、拾って育ててワクチン接種や避妊手術までしている飼い主さんがこんな事を言っているんです。正直、何がどうなっているのか?みなさん、自分の目の前にいなければいいんです。自分が関わり合いにならなければそれでいいんです。私自身も、自分が世話をしなければならない状況になって、初めて「どうしたらいいんだろう・・」と悩み始めるのも事実です。
それは、事故に遭い道端に倒れている子を抱えて病院に着き、話を聞いているうちに「自分が面倒を見なければならないの?」と、ビックリする飼い主さんと一緒かも知れません。病院で面倒見てくれると思ったのに、自分が責任を負わなければならないなんて、話がちが〜う!!って。運ばれてきたときに瀕死の状態の子は、処置を進めながら連れてきた方と話をして、「助かったとき、その後は面倒見れますか?」と必ず聞いています。
その話を聞いた所で、ほとんどの方が困った顔をします。責任の所在はハッキリさせています。困った顔をすると言うことは、分かっていると言うことでしょう。カルテに緊急の連絡先まで書いていただいています。しかし、責任の所在をハッキリさせたところで、何の意味があるんでしょうか?連れてきた方に「面倒を見てもらう」「治療費を払ってもらう」「面倒見れないなら里親を探してもらう」と約束を交わしても、たとえ誓約書なるモノを書いてもらったとしても、何も意味を成さないと思います。
今回の私の病院でのケースもそうですが、連れてきた方が責任を負わなければならず、「治療費も払えない、面倒も見れない」ということで「安楽死」を選んだのなら、これから先何年も生きて行かれる子を殺さなくてはなりません。しかし、「助ける」と言うことを仕事にしている私達は、何とかしてこの子が生きて行かれるなら・・・と考えて、治療費を格安にするとか、病院で引き取るとか、無意味かも知れませんがそんな方法を取ってしまうんです。
病院は慈善事業ではないけれど、動物を殺すところでもありません。ほとんどの方は、「自分の手で動物の命を絶つ」なんて経験はないと思います。私の言葉1つでこの子は生きることを止められてしまう、そんなのは絶対にイヤだ!何とかしてあげなくちゃ・・・と思ってきた結果が院内猫の増加、毎年の捨て猫、です。
「捨てない、増やさない」と発言をしたとしても、そんな話を聞いて納得をしてくれるのは、もともと「捨てる、増やす」なんて意識のない方達だし、「増やさない」という事に関して本当に効果があるのは、片っ端から捕まえて避妊・去勢の手術をすることです。手術をして野に放つ事が「無責任」と思ってしまうなら、自分に関わってしまった子達をすべて面倒見ることです。どちらにしろ限界があることです。どこかで割り切らなければやっていけません。
獣医師会で発言権のある院長クラスの方々が、野良猫問題を本気になって考えてくれるとは思いません。ウチの院長だったら、目の前にある1匹の猫の行く末を考え悩んでいるなら、さっさと安楽死をしてしまうでしょう。そんな院長ばかりでは無いと思いますが、少なくはないでしょう。勤務医や看護士がどう思おうが、邪魔なモノはどける!と思う院長です。そんな院長が、獣医師会で偉そうなことを言っているのですから、とうてい無理な話です。
今現在、目の前にある命をどうすればいいのか、「悩める獣医師さん」の病院の前に明日にも仔猫たちが捨てられていたら、今までと同じく里親を探し、残った子は病院の子になってしまうのか、手術をして生きて行かれそうな場所に放すのか、安楽死を選ぶのか、目の前に迫っている問題です。獣医師会、行政、愛護団体、が本気になって動き解決策が見つかるまでの間にも、捨て猫はあとを絶たないと思います。その間にも何十頭、何百頭と仔猫は産まれていくのです。半年もすればまた子供を産むんです。
それを少しでも少なくするにはやはり、猫を捕まえて手術をしていく、がいちばん確実でしょう。微々たるモノとは思いますが・・・・。私も自分の家の周りの猫達には、勝手ながら捕まえて手術をしています。良いことなのか、悪いことなのか、答えは出ません。今目の前にある命をどうすればいいのか?それはその命と向き合っている人間が決めることでしょう。自分の限界を知り、それを越えても頑張っていけるのなら、頑張り通して欲しいです。
自分勝手な事ばかり書いてしまいましたが、悩める獣医師さん、先生が考え、悩み、苦しんで出した答えなら、それは多分、正しいと信じるしかないと思います。今年は病院の横に箱が置いてないことを祈っております。


◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。