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「刻まれない明日」
三崎亜記






「開発保留地区」―それは十年前、3095人の人間が消え去った場所。街は今でも彼らがいるかのように日々を営んでいる。あの感動から3年―“失われた時”が息づく街を舞台に描く待望の長編。 (「BOOK」データベースより)




「失われた町」の続編・・・と言うのでしょうか。
その後の”町”を描いた作品。

でも、最初は、そうとは気がつかないほど、とても穏やかで、感動的です。
癒しの物語ですね。

特に、先日、サバイバルな小説「デンデラ」を読んだ後だったので、私自身、とても救われたような気持がしました。

実は、2年半前に読んだ「失われた町」の内容をずいぶん忘れていて、この本を読みながら、ああ、そうだったっけ・・・みたいに思い出してゆくような読み方でした。

急に消えてしまった人を、残された人々が、思う心と、否応なく感じる喪失感。
その繊細な気持を大切に、尊重して、過ごしてきた10年間が、想像できる物語です。

彼らの気持ちを思って、やるせない気持になりながら、優しい思いがこみ上げました。

登場人物も、少しずつリンクして、物語に深みが加わっています。

前作よりも、心癒される、優しい深さを感じる物語で、とても好きです。

途中で、SFっぽくなってしまうところが、前作のつながりの深いところなのですが、かえって、ない方がいいなと思ったり・・・(^^)。

うまく作れば、すばらしい映画にもなりそう。 (2009,11,20)