家庭での動物飼育に関する調査

平成13年11月・調査より

子どもの気持ちと親の考え

調査対象:西東京市 子ども4年生192人、親192人
回収率:回収率は子ども100%、親70.3%であった。しかし動物の種類を愛玩鳥と哺乳類に限定したため、子ども172人、親110 人の回答を分析した。
有効回答率:子ども89.5%、親57.2%。
表の「飼育中」は現在飼育している家庭、「以前」はこの2年以内に飼育しており、今は動物がいない家庭、「なし」は、それ以前か全く飼育していない家庭を 示している。
 
 
飼育経験(子ども総数) 飼育中(66名)   以前(43名)  なし(63名)
動物が好きな子 95%(63名)  100%(43名) 94%(59名)
飼いたい子  98%(65名) 95%(41名) 81%(51名)
将来(も) 
   飼うつもりの親 
 
86%(42名)  33%(7名) 15%(6名)
 
1、子ども達の背景
 飼育を4年生全員が担当している小学校2クラスと学校獣医師から動物体験授業を受けている小学校の2クラス。
 どちらも学校獣医師がたびたび学校を訪問して飼育活動を見守っている。またゲストティチャーとして動物の話などを聞かせ触れ合わせている。

3群とも、殆どの子どもが動物を好きで、飼いたいと答えている。

2、ペットを飼うことは子どもにとって良い影響があると思うか?
 飼育経験に関わらず、親は、どのグループも飼育のよさをあげている。しかし、上のグラフが示すように、現在飼育している家 庭で86%が飼い続けるとしているが、以前飼育していた家庭では67%、飼育経験のない家庭では85%の親が「将来、飼育するつもりはない」と答えてい る。
 この調査の親の有効回答率約57%であるので、動物飼育に肯定的な親の回答が多く得られたと言える。が、殆んどの親が観念的に飼育は子どもに良い影響が あると答えても、実際には飼育経験のあまりない、或いは全くない親は、飼育に踏み込むことにためらいがある事を表している。これらは、動物を飼っていない 家庭では将来に渡って子どもの動物体験を得させるのが難しい事を表している。
 なお、現在飼育中の家庭の14%が、将来の飼育については子どもの熱意によって決めるので現在は「わからない」と答えている
3、親が考える、「飼育動物が子どもに与える効果(自由記載、複数回答)
(回答の分類内容)
子への情緒的効果:愛情豊かに、情緒が豊かに、人間性を養う、愛情の対象を得る、思いやり、いたわる気持ち、人の気持ちを推し量る ようになる、優しくなる
命を知る小さな生き物にも命がある、リセットできない
体験:体験を得る、大変さが分かる、身近に感じる、潔癖と清潔の違いが分かる、規則的に行動できるようになる、しつけを学ぶ
責任感を養う:責任感を養う、自分で世話をする
和み:癒される、たのしい、ぬくもり、留守番の時寂しくない、気分転換
家族への影響:家族が増えた、家族意識が増した、兄弟のかかわりが増えた、会話が増えた、家族が賑やかになった、家族の一員として の自覚が出た、家族全体にゆとりができ愛情を表現できるようになった
その他:いいとこだらけ、子どもと動物が一緒に成長する、沢山学んだ、忠実な番犬(犬の飼育)

3群とも親は飼育に、子どもへの情緒的効果と、命を知り大切にする心を養うことを期待している。
 

4、飼育家庭が感じた動物の効果
 飼育中の49名の親を対象に飼育の効果を調査した。「子への影響」は上のグラフと同じのデータ-であり赤で表している。
 また、親が動物を飼ってどのように感じているかを青いグラフで表している。子への飼育の影響として、多くの親は情緒的影響、命を知る、などをあげている が、動物を飼うと癒しや和みの効果があると、多くの親が答えている。

 

5、家庭でのペット飼育体験と、友達への共感に関する一考察
飼育体験:現在飼育中回答66名、現在は飼育していないが以前飼育した事を覚えている人回答43名
飼育していたことを覚えていない、あるいは全く飼育経験のない回答63名 計172名への質問。
友達がいじめられていたら、どう思いますか?
 

 (回答の分類の内容)
かわいそう:かわいそうに思う
助ける:助けなくちゃ、ぶっ飛ばす、ける、先生に報告、止める、やり返す、2人で逃げる、助けなかったら自分にむかつく
声を掛ける:声を掛けてあげる、傍にいってあげる、力になってあげる
助けたい;助けたい、ずっと見ている
怖い:怖い、声がでない、ひどい、
気が知れない:何故いじめるのか分からない、不思議、
頭にくる:頭にくる、いじめる人にイライラする、いじめられている人が男らしくない、嫌だな
ほっておく:ほっておく、何とも思わない、みなかったことにする、通り過ぎる
わからない:自分がどうするかわからない

 いじめられている友達を「可愛そうに思う」のはどの群でも見られるが、「助ける」と積極的に答えた子が、現在飼育している群に、他群より 10%以上多くみられた。また、「助けたいと思う」子も、飼育中の群に多い傾向があった。多くの先人、または学校の先
生は「動物を可愛がって飼っている子は、世話は面倒だけど、ほって置けないのだ」と言うが、この動物への「思いをかける」体験が共感、積極性などを養って いると言えるのではないか。
 なお、全く飼育体験のない群は、「かわいそう」と書いただけの子が半数にのぼっており、また少数だが、いじめられている子を見るとその状況に苛立ちだけ を感じる子がいた。またその中で、「いじめられている子が男らしくない」と、いじめられている本人に批判的な子が複数いたのは興味深い。

調査・考察 全国学校飼育動物獣医師連絡協議会 主宰 中川美穂子 ほか
助言者・国立教育政策研究所 鳩貝太郎総括研究官 お茶ノ水女子大学 無藤 隆教授