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「奔馬」
三島由紀夫



今や控訴院判事となった本多繁邦の前に、松枝清顕の生まれ変わりである飯沼勲があらわれる。「神風連史話」に心酔し、昭和の神風連を志す彼は、腐敗した政治・疲弊した社会を改革せんと起を計画する。しかしその企ては密告によってあえなく潰える・・・。彼が目指し、青春の情熱を滾らせたものは幻に過ぎなかったのか?ーー若者の純粋な<行動>を描く『豊饒の海』第二巻。 (裏表紙より)



『豊饒の海』第一巻「春の雪」を読んでから一年少々。少しずつ読んでやっと読み終わりました。
「春の雪」は、妻夫木聡、竹内結子で、映画化された、儚く、切ない恋物語でしたが、今回の第二巻は、美しく気高い”生まれ変わり”の物語です。

純粋で美しい清顕が、飯島の息子として生まれ変わり、本多の前に現れます。そのことに気付いた本多の衝撃・・・。

飯島勲は、剣道に打ち込む純粋でまっすぐな好青年。しかし、純粋なだけに、ひとつのことに突き進むとき、それ以外のことが目に入らず、そのことが、再びの悲劇へと繋がってゆくのでした・・・。

勲の美しさは、このまっすぐな心であり、それ故に、日本のことを憂い、自分を捨てて、日本を救おうとする。
若い純粋なこの気持は、すがすがしくて、潔く、それを阻止することは、彼の心を殺すことだったのでしょう。なんと、青々しい心でしょう。
大人になるにつれ、いつしかこの青々しさ、猛々しさは少しずつくすんでゆくものなのですが・・・。

三島由紀夫の精神を反映した姿が、勲な様な気もします。
第三、第四巻も読むのが楽しみになりました。 (2009,02,20)



『豊饒の海』
 「春の雪」
 「奔馬」
 「暁の寺」
 「天人五衰」