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殯(もがり)の森      


2007年 日本・フランス   

<監督>河瀬直美
<キャスト>うだしげき , 尾野真千子 , 渡辺真起子

<ストーリー>
奈良県東部の山間の村にある老人のグループホーム。ここで、軽い認知症のしげき(うだしげき)は、他の老人たちと共に、静かに暮らしていた。そこに、子供を亡くし、夫とも別れた真千子( 尾野真千子)が介護士としてやってきた。ある日、しげきと真千子は、しげきの妻の墓参りに出かけるのだが・・・。

<感想>
以前、カンヌ映画祭で、カメラ・ドール賞(新人監督賞)を受賞した「萌の朱雀」の河瀬直美監督の新作です。この映画でも、カンヌでグランプリを受賞しました。
前の受賞作「萌の朱雀」は、私には、なかなか理解するのが大変だった作品で、結局2回見て、何となく、作品の色を理解出来たかなぁという感触でした。そんなわけで、この作品も、見る前から苦手意識が、先に立ってしまいました。だいたい、カンヌ映画とは、相性が悪いのです(^^;。
しかし、思いがけなく、カンヌ後、すぐに、NHKでの放送を録画できたので、とりあえず見たのですが、第一印象は、「萌の朱雀」よりも、分かりやすかったかな〜〜という感じです。特に、監督のインタビューも、一緒に放映されていたので、作品を作った監督の気持ちなども分かって、より理解しやすかったですね。
逆に言うと、映画だけでは、やはり、理解しにくかったかなーーー。
これも、何回か見たほうがいい映画なのかもしれません。

監督は、ドキュメンタリー出身なので、この映画もドキュメンタリータッチで、淡々と、人々の様子を追いかけています。

美しい森、美しい茶畑。日本の風景の美しさの中で、童心に帰ったような認知症の老人と、心に傷を負った若い女性との心の触れ合い。そして、二人の心が癒される過程が、静かに、時には、激しく描かれています。

しげきの妻が三十三回忌の弔い上げということで、しげきは、真千子と共に、妻の墓参りに出かけるわけですが、それが、大変なことになってしまいます。 まさに、生者が、死者に会いに行くぐらいの困難が、二人を待ち受けているわけですが、その困難な道々で、二人は、許され、そして、癒されてゆくのだと思いました。
映画を見ている最中というよりも、終わってから、じわりと感動しました。

監督は、実際に認知症の親の介護をしているそうで、介護の大変さと、そのことによる心の葛藤を常に感じているそうです。そして同時に、子供を持つ母としては、命の大きさも感じられるようになったそうです。
そういう彼女自身の変化が、この映画を作ることの大きな動機になったそうです。

しげき役のうだしげきさんは、これが、映画初出演で、演技経験もないそうです。河瀬監督は、彼のような演技に素人の、作らない生身の姿を大切にする監督のようです。
真千子役は、「萌の朱雀」にも出演していた尾野真千子。彼女は、透明色の女優さんというイメージです。そのせいか、河瀬監督の2作以外にも、「EUREKA ユリイカ」「リアリズムの宿」でも見ているはずなのに、透明すぎて、全く覚えていませんでした(^^;。

見ていて違和感を感じたのは、しげきが、妻を亡くして、33年で、認知症というには、ちょっと年齢が若く感じたこと。実際、しげきを演じたうださんは、60歳そこそこなので、他の老人と比べると、とてもお若く見えました。ということは、27歳ぐらいで、妻を亡くしたと言うことですね。認知症に関しては、若年性と言うこともありますが、ちょっと元気すぎかなぁ、でも、元気でないと、後半は、無理だろうし・・・。ここは、難しいところですね。
セリフの中で、何を言ったのか分からない所があり、巻き戻して見直したところが何カ所かあるのも、ちょっと気になりました。(2007,05,30)



≪殯(もがり)≫ 敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間のこと。 また、その場所の意。 語源に「喪あがり」喪があける意、か。



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