獣医師広報板トップページ動物よくある相談メニュータマネギ中毒
獣医師広報板のキャラクター:ココロちゃんタマネギ中毒
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2002/06/07
◆「動物よくある相談」利用についての注意事項
★情報は自己責任でご利用ください。
★記載されている記事は獣医師広報板の掲示板に投稿されたものが中心で、獣医師広報板の
 見解を代表するものではありません。
★飼育方法の質問は意見交換掲示板をご利用ください。
◆こどもあんぜんサイト宣言◆
こどもあんぜんサイト宣言

タマネギ中毒と言う疾病は、愛犬家の皆さんは1度や2度は耳にされたことがあると思います。
知ったかぶりをして、わざと難しい言い回しをすると「Allium属植物に由来する有機チオ硫酸化合物による赤血球酸化障害性血尿症」という実に長い名称になります。
この長い名称の一つ一つの単語が理解できれば、すでにこの疾病の説明は必要無いという実にすぐれた名称です。
でも、一般の愛犬家の方々には、それではあまりに不親切というものなので、少し、説明が必要です。

まず、Allium属植物というのが、タマネギや長ネギ、そしてニンニク等の原因となる植物のことを言っています。
この属に含まれるネギの親戚の植物は多かれ少なかれ、有機チオ硫酸化合物を持っています。
では、このチオ硫酸化合物とはなんでしょうか? 実は私も「硫酸基」を持った有機体であろうとしか分かりません。
分からないくせに説明を続けさせていただくと、ネギ類にはn-propylthiosulfateとmethylthiosulfateがあり、ニンニクには2-propenylthiosulfateという物質が存在しているそうです。
これらの物質はthio以下の綴りが共通しており、その部分こそがチオ硫酸化合物を意味しています。
そして、これらの物質は赤血球やヘモグロビンに対して、酸化障害性の作用を持っています。
そして従来はこの原因物質が赤血球内にハインツ小体と呼ばれる物質を形成して赤血球が破壊される、と簡単に説明されていました。
酸素というものは、動物が生きていくうえで、欠く事ができないものではありますが、過剰な酸化という現象も決して望ましいことではないのです。
実際には、「還元型グルタチオン」との反応を介しておきる機序を有しており赤血球内のこの還元型グルタチオンの濃度が遺伝的に高い犬程、重度の溶血性貧血を起こすことが分かってきています。
そして、この還元型グルタチオンが高濃度に分布する犬では、細胞内の(Na-K ATPase)がやはり高く関連性があるのだそうです。

どうでしょう、少しは理解していただけたでしょうか?
化学の先生でも呼んで来る必要がありそうですね!
もう少し簡略に述べると、
(1)タマネギ類はその中に催溶血物質を含み、それは有機チオ硫酸化合物である。
(2)溶血物質は、還元型のグルタチオンと反応して強い反応を起こす。
そしてそれは酸化還元反応の一環として発生する。
(3)還元型のグルタチオンを高濃度にもつ犬程症状が重くなり、それには遺伝的な素因が関与しているようだ。
ということになります。

難しい話はこれくらいにして、実はこのタマネギ中毒と言う疾病は、それ程昔から認識されていたわけではありません。
我が国でこの疾病が初めて報告されたのは、1975年のことなのです。
北海道大学の家畜病院に赤色尿を呈す秋田犬がやってきたのが初発なのだそうです。
原因が不明で首をかしげるばかりだったのですが、どうもタマネギが怪しいということになり、再現試験を試みたところ、みごとに実証されたということなのです。
この事件を契機に我が国には、タマネギ中毒という疾病が犬に存在することが少しずつ知られるようになったのです。
今、「犬に」と言いましたが、むろん他の動物においても存在し、猫や牛にも報告があるそうです。
また、原因物質も熱に安定であり、加熱調理によってもその有害な作用は失われず、ネギ類も我が国の食生活・食卓の広がりを考えると、非常に多彩な料理の中に入っています。
すき焼き、チャーハン、ハンバーグ等いっぱいありそうですね。
直接、お蕎麦の薬味で発病した例もあります。
食習慣の異なる国や素因の少ない犬が多い国においては、今もって、一般的な認知度は低いのかもしれませんが、日本に置いては、身近な食物が原因であるだけに飼い主さんの注意が必要なのではないでしょうか。

個人的には症状の重さと犬の大きさは関係なかろうと考えていますので、大型犬における重症例を調べようと考えたことがあります。
2日目にして1軒おいて隣の病院で行き当たってしまいました。
犬種はハスキーで体重は30キロは越えていたそうです。金曜日の夜に鍋物の残りとして給餌され、土曜日に元気食欲がないことに気がついたがそのままにしておいた。
日曜にさらに元気がなくなったのでこれはおかしいと思ったが診療を受けさせることができず、月曜に往診を依頼したが、獣医師が到着するまでに死亡したというものです。
ついうっかりとか、全く知らなかったと後から悔やんでもどうしようもありません。
そんな病気本当にあるのかと堂々と口にできたのは四半世紀前までです。
「犬にタマネギを与えていはいけないのは常識ですよ」と言えるようにしなくてはなりませんね。
少なくとも、自分の犬は飼い主さん自身が守らなくてはなりません。
知っておいて欲しい病気の1つです。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。


僕はレオです。
青い瞳と、白い長い
ひげが立派でしょ!
拡大画像
画像募集中!!(無料)
画像集

◆令和6年能登半島地震動物関連ニュース

◆獣医師広報板の主張

◆獣医師広報板管理人の独り言
利用上の注意事項&メニュー
2024年3月のBest
  1. 杉本彩氏を訴える名誉毀損裁判について(194)
  2. 譲渡犬をもらったら大変な状態だった(91)
  3. 大阪万博ペット同伴絶対反対(78)
  4. 保護動物譲渡前調査の個人情報保護ポリシーについて(78)

◆獣医師広報板よくある質問(FAQ)

◆獣医師広報板からのお願い
獣医師広報板をご利用、本当にありがとうございます。
獣医師広報板は個人サイトですが、その運営はボランティアスタッフが担い、運営資金はサポーターの応援に頼っています。
獣医師広報板は多額の累積赤字を計上しております。
サポーターは企業でも個人でも結構です。
ぜひ、獣医師広報板をサポーターとして応援ください。

◆PC版コンテンツ利用数ベスト7(2024年3月期)
  1. 猫のカロリー計算(5,574)
  2. 電子図書:犬と麻薬のはなし−麻薬探知犬の活躍−(5,248)
  3. 管理人の独り言(5,202)
  4. 犬のカロリー計算(4,076)
  5. 動物よくある相談(3,593)
  6. 広報板カフェ(1,812)
  7. 迷子動物、保護動物掲示板(1,787)
コンテンツ別アクセス数

◆電子図書
電子図書「"犬と麻薬のはなし−麻薬探知犬の活躍」は、2022年2月23日より第四版になっております。
新しいエピソードも追加され、データーも更新されています。
第一版、第二版、第三版を読まれた方も、是非第四版をお読みください。
犬と麻薬のはなし−麻薬探知犬の活躍−第四版2022/02/23公開

◆一般市民向けの動物に関するセミナー・イベント
★毎週土曜日午後1時〜4時
ペットロスホットライン
ペットロスホットラインは、今のお気持ちをお聴きする電話です。
★WEB講座
★〜4月20日:募集期間
★〜4月30日:オンライン
★4月20日:愛知県名古屋市,栃木県宇都宮市,4月21日:島根県松江市
★4月20日-21日:神奈川県横浜市
★4月20日-21日:新潟県上越市
★4月21日:埼玉県さいたま市
★4月21日:兵庫県尼崎市
★4月24日:インターネット
★4月24日:広島県広島市
★4月25日-5月7日:大阪府守口市
★4月27日:北海道旭川市,栃木県鹿沼市,4月28日:島根県出雲市
★4月27日:神奈川県横浜市
★4月27日-5月19日:愛知県名古屋市
★4月28日:東京都台東区
★4月28日:福岡県北九州市
★4月28日-29日:大阪府大阪市
★5月3日-4日:大阪府大阪市
★5月3日-5日:千葉県千葉市
★5月6日:北海道苫小牧市,栃木県矢板市
★5月10日-16日:オンライン
★5月11日:東京都大田区
★5月12日:栃木県日光市,鳥取県鳥取市,鳥取県湯梨浜町,鳥取県大山町
★5月12日,6月23日:鳥取県倉吉市
★5月18日:愛知県長久手市
★5月18日:オンライン
★5月19日:佐賀県佐賀市
★5月19日:栃木県那須塩原市
★5月25日:栃木県栃木市,5月26日:島根県出雲市
★6月2日:東京都豊島区
★6月9日:佐賀県武雄市
★6月15日:栃木県日光市
★7月13日-15日:愛知県名古屋市
★7月13日-9月23日:大阪府大阪市
★9月20日-22日:大阪府大阪市
★10月27日:兵庫県神戸市

セミナー・イベント情報はメールにて広報内容を送ってください。(掲載無料)

◆ペット動物獣医師&動物看護師向けの動物に関するセミナー・イベント
利用上の注意事項&メニュー

◆経済動物獣医師向けのセミナー・イベント

◆公衆衛生獣医師獣医師向けのセミナー・イベント

◆実験動物獣医師獣医師向けのセミナー・イベント

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。